日本MRSニュース Vol.15 No.3  August 2003


やあこんにちは

超伝導材料研究からの感想

東海大学工学部材料科学科教授 太刀川 恭治

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 私が1962年から超伝導材料研究に着手した経緯について一寸ふれさせていただきます。私は大学で最初磁性材料の研究を行い、続いて事情により超高温プラズマの計測の研究に携わっていましたが、1961年にMITで開かれた強磁場会議で超伝導マグネットが提案されて超伝導材料の研究開発に強い魅力を感じました。それは若い頃、物理、材料、電気などの境界領域の研究に興味を持っていたからです。当時、我が国では超伝導材料の研究開発はまだスタートしておりませんし、私も極低温領域の研究は未経験で、いわば未踏の世界でした。しかし低温物理と応用をつなぐ材料開発は鍵になると思いましたし、私が移った国立研究所は材料に関する総合的な研究所でしたので、材料分野の広いバックグラウンドをベースに超伝導材料研究を伸ばすことが出来ました。この点多くの方々に大変御世話になっております。

 はじめの頃は超伝導機器は物性研究やプラズマ研究に有用な装置と考えられていたのですが、その後リニアモーターカー、MRI、NMR、大型加速器、各種エレクトロニックスデバイスなど、当初予想もしなかった分野にまで応用が拡がりました。また材料も次々に改良されたため、10年単位で見ると格段の進歩がえられ、結局超伝導材料の研究も40年間やめられなくなってしまいました。その間超伝導材料の研究開発に携わる方々も大幅に増えましたし、例えば米国の応用超伝導会議(ASC)の発表論文数もこの30年間で一桁以上にふくらみました。

 さて材料の研究者は、独創性にとんだ常に新しい作品を考えていかなければならない点、芸術家にも似ています。しかし、材料研究では作品が工業化に結び付いて社会のお役に立っていかなければなりません。そのためには、材料もプロセスもシンプルなことが第一で、工業化への道を短縮します。高性能な材料を見出す事がまず必要ですが、作製プロセスが複雑ですとなかなか工業化の域に到達しません。材料には人間と同じように長所も短所もあり、短所を克服して長所を生かすのが材料研究者の仕事ですが、そこが一番苦労する点です。

 また材料の研究者は、常に結果を求められる点、スポーツ選手にも似ております。実験には勿論運動神経も必要になりますし、バックアップやサポートも必要で、チームワークで研究を進める場合が多くあります。各人の適性に合ったポジションを与えると効率よく研究を進める事が出来ます。しかし、適材適所を優先すると、オールマイティな能力をもった人材が育てられない点にも配慮する必要がありましょう。

 超伝導の話しに戻りますと、さきに金属系超伝導体が工業化の域に進み、また高温超伝導体の研究開発と機構解明も進み、いま超伝導研究はいわば第3期に入ろうとしております。ライデン大学のヘリウム液化100周年も近づきつつあります。その方向の一つとして、今世紀に入り我が国でMgB2が発見されましたように、新たな機能をもった超伝導体探索の気運が高まりつつあります。一方、パワー分野についてもエレクトロニックス分野についても応用技術の進展と確立が急がれます。これらにより超伝導研究の一層の活性化が期待されます。

 超伝導の研究は、基礎物性、材料開発及び応用技術の3本の柱からなっていると言えますが、それらの間の連携をより積極的に強める事が大切でしょう。例えばエレクトロニックス応用で、線材やバルク材における材料に関する情報を有効に活用する事もあげられましょう。また超伝導は冷却技術(低温工学)などの関連技術と、いわば二人三脚の形で助けあって進歩をとげて参りました。今後も暫くそのような関係が加速されるでしょう。

 終りに、若い人たちが超伝導の研究に入り易いのは、上述のような基礎、材料、応用などの各人の個性に合った分野の仕事で新しい世界の発展に寄与していける点にあると思います。今後も種々のバックグラウンドをもった若い研究者の方々の一層の御活躍を期待しております。私らも初心を忘れずにお役に立つよう努めたいと思っております。


トピックス

超強力バルク超伝導磁石の開発


芝浦工業大学工学部材料工学科教授 村上 雅人

 1. はじめに

 超伝導状態では電気抵抗がゼロである。よって、電磁誘導を利用して電流を誘導すれば、電流はそのまま流れ続ける。これがバルク超伝導体が磁石として機能する原理である。この方法で超伝導磁石をつくるという試みは、過去にNb3Snでも行われているが、クエンチのために実現には至っていない。
 高温では、比熱が大きいためクエンチの問題が軽減される。よってバルク超伝導磁石が可能となったのである。現在、高温でも臨界電流が大きいのはREBa2Cu3O7系(RE:希土類元素)だけであり、バルク磁石もこの系を基本としている。磁石としての機能は、臨界電流が大きいほど高くなる。
 ところで、REBa2Cu3O7系では超伝導化するために酸素富化処理が必要となる。この際、正方晶から斜方晶への相変態が生じるが、この変化にともない、c軸が長くなる。その応力緩和機構がなくc軸に垂直な方向にクラックが形成される。これらミクロクラックが均一かつ微細に分散していれば機械特性という観点では、その向上につながるが、実際には不均一に分布し、マクロクラックも生成してしまう。
 このようなバルク体を液体窒素などで直接冷却すると、クラックが進展し、場合によっては破壊してしまう。目に見えるクラック進展がない場合でも、冷却や励磁を繰り返すと、次第に捕捉磁場が低下していく現象が観察される。これは、冷却や昇温時に熱応力が発生することに一因がある。バルク超伝導体の熱伝導率は低いため、冷昇温時の表面と内部には大きな温度差が発生し、大型のバルク超伝導体では、それにともなう熱衝撃は100MPaを超えてしまう。この値は、バルク体の引張強度よりも大きい。
 また、捕捉磁場が大きいほど、つまり超電導特性にすぐれたバルク磁石ほど、励磁の際に発生する電磁力が大きくなる。特に、磁場中冷却を行う際には、大きな外部磁場が存在する条件下で、誘導電流が発生するため、バルク体に大きな電磁力が働き、その結果、図1のようにバルク体が破壊されるのである。
 これでは、使いものにならない。バルク磁石の超伝導特性から換算すると、その磁石性能のポテンシャルは非常に高いが、低い機械特性のために、その性能を十分生かすことができないのである。よって、機械特性の向上が実現されない限り、バルク超伝導体の本格的な応用は難しいということが判明したのである。

 2. バルク超伝導磁石の機械特性向上

 まず、超伝導体そのものの機械特性向上には銀添加が有効であることが分かった。しかし、これだけでは不十分であるため、金属製のリングでバルク体の周りを囲い、熱膨張係数の差を利用して、圧縮力がバルク体に加わるような処理を施す技術が開発された。しかし、この方法は円柱状の試料には有効であるが、四角形や六角形ものには適用できない。
 ここで、画期的な技術が誕生した。樹脂含浸技術である。セラミックス材料では、表面欠陥の存在が、その機械特性の劣化につながることが知られている。さらに、溶融バルク体には残留ガスや酸素の発生で空孔が形成される。この空孔の存在もバルク体の機械特性低下につながっている。
 樹脂含浸技術は、低温超伝導コイルにおいて電磁力による素線の動きによるクエンチを防ぐために開発された技術である。しかし、コイルではないバルク体に、どの程度の効果があるかは疑問であった。ところが、エポキシ樹脂を100℃前後に加熱して溶かした中にバルク体を浸し、外気を真空引きすると、図2に示すように、表面クラックを通じて樹脂がバルク体内に浸透することが分かったのである。しかも、クラックにつながっている空孔にも樹脂が浸透し、このおかげで機械特性が飛躍的に向上することが明らかになった1)。
 さらに、樹脂が表面を覆うことで耐食性が飛躍的に向上したのである。完全にバルク体と外気の接触が遮断されるため、腐食性雰囲気においても、まったく問題がなくなった。また、樹脂の熱伝導率が低いため、バルク体を急激な熱変化にさらしても、バルク体に働く熱応力が大幅に緩和されることも分かった。
 しかし、樹脂含浸技術でも解決できない新たな問題が生じた。それは熱伝導率が低いために、バルク体内で一度熱が発生すると温度が上昇してしまうという問題である。このため、磁場変化で磁束が運動して発熱すると、バルク磁石の温度が上昇し、常伝導となってしまうのである。当然、大型になればなるほど、この問題は深刻である。

 3. 超伝導の低温不安定性

 超伝導を強い磁石として使おうとすると、宿命として必ず低温不安定性という問題が顔を出す。高温超伝導の場合、クエンチに対する耐性は大きいが、その熱伝導率の低さに起因した不安定性が問題となってくる。バルク磁石を励磁する際、量子化磁束が超伝導体内部を動く。これは、励磁するためには、磁場を変化させる必要があるからである。そして、この磁束の運動にともなって必ず発熱が生じる。この熱が外部の冷媒によって、すぐに取り去られれば問題がないが、発熱が続くと、局所的に温度が上昇してしまう。すると、その部分の超伝導特性が低下し、磁場がこの超伝導の弱い部分になだれのように突入する。英語でもflux avalanche、つまり磁束なだれと呼んでいる2)。
 強い磁場下では、この磁束なだれ現象が生ずると、深刻な問題を引き起こす。それは、超伝導が破れるだけでなく、局所的かつ急激な磁場変化による大きな電磁力で、超伝導磁石自体が破壊してしまうという致命的な問題である。
 この熱的安定性の問題は、ある工夫をすれば解決できるだろうと個人的には確信していた。それは、バルク体に孔を空けて、金属を導入するという手法である。低温超伝導体では、熱的安定性を高めるために、熱伝導率の高い銅やアルミニウムの中に超伝導体を埋めるという手法を使っている。バルク磁石は、この逆で、バルク磁石の中に熱伝導率の高い金属を埋めればよいのである。孔は機械加工で簡単に開けることができ、しかも母体にダメージを与えない。
 ここで、登場したのが樹脂含浸法である。実は、樹脂のかわりに低融点合金のウッドメタル(Bi-Pb-Sn-Cd合金;融点70℃)を使っても含浸がうまくできるのである。そこで、人工孔を設けたバルク体にウッドメタルを含浸すると、図2のように人工孔を埋めるだけでなく、その孔とつながっているクラックを通じて内部の空孔などの欠陥をも埋めてくれることが分かったのである。これにより、内部の機械特性が飛躍的に向上することになった。さらに、熱伝導率を高めるために、孔にあらかじめ熱伝導率の高いアルミニウム棒を差込んでからウッドメタルで含浸するという手法を採用した。この手法により、バルク体の熱的不安定性も見事に解決し、実用化に十分耐えうるバルク超伝導磁石が誕生したのである。
 図3は、このような処理を施したバルクY-Ba-Cu-O磁石の捕捉磁場である。直径たった2.6cmの大きさで、なんと29Kで17T以上の磁場を捕捉している。しかも、この図から分かるように磁場捕捉能はいまだ飽和していない。単純な試算でも30Tは優に超える。残念なことに、これだけ強い磁場を直流で発生できる施設は世界にも数えるほどしかないが近く挑戦する予定である。
 今回の17Tの捕捉磁場実験は、つくばにある物質・材料研究機構の強磁場センターの超伝導マグネットをお借りした。バルク超伝導磁石の能力は、それだけ計り知れないということを示している。
 今回の成果は、新しい学問分野の構築につながる可能性がある。バルク超伝導磁石を冷凍機の先に着けて励磁すれば、超伝導マグネットの狭いボアの中に限られていた超強磁場を自由空間に取り出せることになる。今回の磁石でも、すでに17Tという磁場を発生できることが分かっている。このような強い磁場を自由に持ち運べるという事実は、いままで磁場の影響を見ることのできなかった数多くの現象の実験が可能となる。磁場のエネルギーは、その大きさの2乗に比例するため、過去に磁場の効果が小さいと言われている現象においても顕著な効果が現れる可能性が多いにある。新しい磁場科学の創製という観点からも期待したい分野である。

 

文  献

1) M. Tomita and M. Murakami: Improvement of mechanical properties of bulk superconductors with resin impregnation, Supercond. Scie.&Technol., 13 (2000) pp.722 -724.
2) L. Gao et al.: Thermal instability, magnetic shielding and trapping in single grain YBa2Cu3O7 bulk materials, Appl. Phys. Lett., 64 (1994) pp.520 -522.
3) M. Tomita and M. Murakami: High temperature superconductor bulk magnets that can trap magnetic fields of over 17 tesla at 29K, Nature, 421, No.6922 (2003) pp.517 -520.

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1 励磁中にふたつに割れてしまったバルクY-Ba-Cu-O高温超電導体

 

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2 中心に直径1mmの人工孔を設けたバルク体を、溶融したBi-Sn-Pb-Cd合金の中に浸し、外気を脱気した後の、バルク体の人工孔に沿った断面写真。合金が人工孔に通じたクラックに沿ってバルク体内部に浸透し、クラックにつながったボイドを埋めている様子が分かる。

 


3 中心にアルミ棒を入れて合金含浸し、表面をエポキシ樹脂で含浸したバルクY-Ba-Cu-O磁石(直径2.6cm、高さ1.5cm)の78K48K,29Kにおける捕捉磁場の分布。

 

連絡先:芝浦工業大学工学部材料工学科超伝導材料研究室
       村上雅人
      Tel&Fax: 03(5476)2418
      E-mail: masatomu@sic.shibaura-it.ac.jp

 


■研究所紹介

超伝導材料研究センター

物質・材料研究機構超伝導材料研究センター長 室町 英 治

1. はじめに

 物質・材料研究機構の前身である金属材料技術研究所と無機材質研究所は、それぞれ、超伝導材料に関する研究を行って来た。両研究所が機構という形で統合されたことに伴って、超伝導への取り組みをさらに発展させ、両研究所に分散して行ってきた超伝導材料研究を集中的に実施することを目的として、平成13年10月に新規の研究組織である超伝導材料研究センターが発足した。センターの第1期は機構の中期計画の期間とされており、平成17年度を一つの区切りとしている。
 超伝導は21世紀のキーテクノロジーであり、センターでは、
 @ 新超伝導物質・材料の発掘、評価に関する研究、
 A 酸化物系並びに先進金属系超伝導体の線材化に関する研究、
 B 高品質超伝導体薄膜・単結晶の作成と情報・通信への応用基盤に関する研究、
 C SQUID等の超伝導デバイスの開発と応用、
を課題として設定し、基礎・基盤研究と応用・開発を指向した研究を有機的に連携させつつ、総合的に推進している。
 図1に示すように、センターには、新物質探索、酸化物線材、金属線材、薄膜・単結晶、SQUIDの五つの研究グループが設置され、機構研究職員23名とポストドク等がここで集中して研究を行っている。また、センター本体に加えてそれと連携して研究を行うサテライト組織を設置し幅広い分野を含む超伝導研究を総合的に実施しており、サテライトまで含めると、50名規模の機構研究職員が関係している。以下、センターに属する5研究グループとサテライトにおける研究の概要を述べる。

2. 研究グループの概要

 新物質探索グループでは、通常の研究機関では実施が困難な超高圧、超高酸素圧、超高温等の極限環境を利用することで新たな超伝導体シーズ発掘を目指している。さらに、最近、機構の物質研究所のグループと共同で、ソフト化学的手法を使うことで、水和コバルト酸化物超伝導体を初めて発見するなど、銅系高温超伝導体に限らず、広範な系についての探索研究を進めている。

 酸化物線材グループでは、ビスマス系酸化物線材について、主に組織制御の観点から特性向上の研究を進めている。具体的には、高配向化、超伝導コア密度の向上、不純物の低減、などを達成し、これによって線材の高Jc化を目指している。一方、各種マグネットへの応用を目指して、長尺線材の試作ならびにそのコイル化の研究を、日立製作所、日立電線等と共同で取り組んでいる。更に、MgB2新超伝導体については、いち早く線材化の研究を進め、Mgの代わりにMgH2原料粉末を使うことによる、高Jc化の達成、MgB2粉とステンレス管を用いることによる、熱処理無しでの10m級線材の作製、及びソレノイドコイルの試作と磁界発生等、高性能かつ低コストの線材化法の開発を進めると共に、応用への展開を図っている。図2にMgB2線材を用いたソレノイドコイルを示す。

 金属線材グループでは、1GHz級高磁場NMRマグネットや新型高感度NMRマグネット、各種電力機器などへの応用を目指した、実用レベルの金属超伝導線材の開発研究を推進している。特に、複合線材を通電加熱して液体Ga中に急冷するユニークな装置を駆使して、急加熱急冷変態法Nb3Al超伝導線材の実用化を進めている。急熱急冷条件の最適化により300mを超える長さの線材が製造できるようになったのは、最近の注目すべき成果である。実際、ジェリーロール多芯複合線について、300m長にわたって、臨界電流密度Jc(21T、4.2K)のばらつきを標準偏差5%以内に抑えることに成功している。さらに、Cuクラッド法により安定化材を複合し、これを巻いてコイルを試作したところ、短尺試料の臨界電流Icに匹敵する電流値までコイルに電流を流すことができ、14Tバイアス磁場中で3.2Tの追加磁場発生に成功している。

 薄膜・単結晶グループは、高温超伝導体薄膜・単結晶の高品質化とそれらを用いたデバイス基盤研究を推進している。最近、微細加工した固有ジョセフソン素子を用いて、磁束線フロー抵抗における周期的振動現象を初めて発見すると共に、この現象を用いることで、これまで異方性の強い超伝導体では実験的に解明できなかった、ジョセフソン磁束線磁気相図の解明に成功した。また、本素子を利用することで、臨界電流密度測定により傾斜磁場中の磁気相図を解明できることを見出した。一方で、静電浮遊溶融凝固法による、磁束線ピンニングの非常に少ない球状金属系純良単結晶の育成など、単結晶の高品質化への取り組みや、高温超伝導体のナノサイズ層状性を利用した超伝導新機能デバイスに関する基盤研究などを推進している。

 SQUIDグループでは、液体窒素温度で動作する高温超伝導SQUID(超伝導量子干渉素子)の応用研究を行っている。SQUIDはこれまでにない超高感度な磁気センサーであり、応用ターゲットとしては、心臓診断などの生体磁気計測、バイオ関連の磁気ビーズを用いた抗原抗体反応免疫診断、金属疲労やクラック検査などの非破壊検査、食品などへの異物混入検査、地質調査など広範囲な分野が検討対象である。実用化に要求される計測装置としてのシンプルさ、低コスト化を念頭に、磁気シールドなしで微小磁界を計測する技術、簡便な冷却技術、パソコンによる簡易操作とデータ処理など、総合的に高温超伝導SQUIDの実用化を捕らえた検討を、大学や民間企業とも連携して進めている。最近の話題として、液体窒素動作による高温超伝導SQUIDを用いた走査型磁気顕微鏡の開発に成功した。この磁気顕微鏡では、高透磁率の針をSQUIDと試料の間に配置することにより、図3に示すように、高空間磁気分解能を得ることができる。試料の前処理を全く施さず、室温大気中で簡便に磁気イメージ観察ができるため、磁気的性質を持つ材料の観察や、各種非破壊検査などへの展開を期待している。

3. サテライト組織における研究

 研究グループに加えて、五つのサテライト組織を設置して多面的な研究を行っている。サテライトメンバーは組織上は機構の他の研究ユニットに属しているが、超伝導が広範な研究分野に関連することから、グループとサテライトの連携は研究推進にとって極めて重要である。
 構造評価サテライトは超伝導体等の局所及び平均構造の解明や、構造データの精密化等を主要な任務としている。理論サテライトでは、強相関電子系における超伝導発現機構及び反強磁性と超伝導競合に関する理論的研究、高温超伝導磁束系のダイナミックス特性の理論的解明、柱状ピン止めによる高温超伝導磁束系特性の改善に関する理論的研究等を行っている。物性評価サテライトでは、超低温、強磁場、さらに超高圧という複合した極限環境を利用し、f電子系超伝導化合物や有機超伝導体等について新規物性の探索、電子状態の解明等を行っている。強磁場マグネットサテライトでは、ライフサイエンスや環境等への応用を目的とした超強磁場マグネットの研究開発を実施している。特に、タンパク質構造解析をターゲットとする高分解能NMRマグネットの開発に力を傾注している。ナノ特性サテライトでは、高温超伝導体の高品質薄膜・単結晶について、物理特性の評価を行い、新機能特性を見出すことにより新超伝導デバイス開発への展開を図っている。

4. おわりに

 21世紀初頭の科学・技術において、超伝導が大きな役割を果たすことは疑いがない。超伝導材料研究センターでは、超伝導材料に関して、基礎・基盤研究、材料化研究、応用研究を集中的、総合的に実施することで、超伝導研究における日本の中心を目指し、基礎・基盤技術分野における先導的役割を果たしていく所存である。

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図1 超伝導材料研究センターの研究組織

 

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図2 MgB2超伝導線材を用いた小型マグネット。

 

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図3 SQUID顕微鏡とそれによる磁気像

 

連絡先:独立行政法人物質・材料研究機構超伝導材料研究センター
       室町英治  〒305 -0044 茨城県つくば市並木1 -1
Tel&Fax: 029(860)4674  E-mail: muromachi.eiji@nims.go.jp

報告・ご案内

第8回IUMRS先進材料国際会議:IUMRS-ICAM 2003
主催:日本MRS, International Union of Materials Research Societies
日時:2003年10月8日(水)〜13日(月)
場所:パシフィコ横浜(横浜みなとみらい)
内容:39シンポジウム、プレナリーセッション、材料教育フォーラム、展示会等多数の講演と企画が予定されています。
詳細:IUMRS-ICAM2003事務局、http://www.mrs-j.org/ICAM2003

IUMRSメンバーの会合
◇2nd International Conference on Materials for Advanced Technologies (ICMAT 2003) & IUMRS-International Conference in Asia (ICA) 2003, 7 -12 December, 2003, Singapore, http://www.mrs-j.org/ICAM2003
◇First International Conference of the African Materials Research Society (MRS-Africa) December 8 -11, 2003 -Johannesburg, South Africa
◇9th International Conference on Electronic Materials (IUMRS-ICEM 2004) April 12 -16, 2004, San Francisco, California, USA
◇9th International Conference on Advanced Materials (IUMRS-ICAM 2005) July 3 -8, 2005, Singapore

出版案内
Transactions of the Materials Research Society of Japan, vol.28, No.1, March, 2003が刊行されました。本号は、2002年12月20〜21日に開催された第14回日本RS学術シンポジウムのうち、「有機薄膜の作製と評価―分子配列・配向制御の観点から―」16報、「燃料電池材料」4報、「ドメイン構造に由来する物性発現と新機能材料」29報、が登載されています。
問い合わせ先:日本MRS事務局、shimizu@sntt.or.jp


To the Overseas Members of MRS-J

From the Research on Superconducting Materials……p.1
Prof. Dr. Kyoji TACHIKAWA, Faculty of Engineering, Tokai University
 The commercialization of metallic superconductors has realized MAGLEV trains, large helical fusion devices, 920MHz NMR systems, SFQ digital devices etc. Bi-based oxide superconductors are being applied for electric power systems, and the fabrication of long length Y-based oxide coated conductors is in progress. Now the research on superconductors seems to enter into the 3rd phase. The exploration of new superconductors with improved performance has gained more interests resulting the discovery of MgB2. An intimate linkage among solid state physics, material development and application technologies will play a key role in the future progress of superconductivity.

Development of a High Power Bulk Superconducting Magnet……p.2
Prof. Dr. Masato MURAKAMI, Department of Materials Science and Engineering, Shibaura Institute of Technology
 Large grain Y-Ba-Cu-O superconductors have significant potential in trapping high fields, and thus can function as a strong magnet. Poor mechanical properties however limited their field trapping ability. We first found that resin impregnation was effective in improving the mechanical properties, which greatly enhanced the trapped field values. With the aim of improving the cryo-stability, we drilled a hole into the bulk Y-Ba-Cu-O and employed the impregnation of Bi-Pb-Sn-Cd alloy with a low melting point of 70℃. As a result a Y-Ba-Cu -O disk 2.6cm in diameter and 1cm in thickness could trap a field of>17T at 29K.

Research Activities of Superconducting Materials Center……p.4
Dr. Eiji TAKAYAMA-MUROMACHI, Superconducting Materials Center, National Institute for Materials Science
 Superconducting Materials Center (SMC) was established on October 15, 2001 as a research center of National Institute for Materials Science (NIMS) in order to conduct intensive superconducting materials research. Superconductivity is, no doubt, one of the key technologies of 21st century. The Center covers a wide area of superconducting materials from basic field to applied field and we expect that the Center plays an important role as a leading organization of superconductivity research in Japan. The Center consists of five research groups where 23 regular staffs, about 10 postdoctoral fellows and several technical assistants are involved in the superconductivity research.

IUMRS-ICAM2003……p.6
 The 8th IUMRS-International Conference on Advanced Materials IUMRS-ICAM 2003 will be held October 8 -13, 2003, at the Pacifico Yokohama, in Yokohama. The meeting and exposition is large materials research event to be taken place in Japan. It will feature many scientific papers presented concurrently in 39 topical symposia and 2 forum programs.
 The exposition, held in conjunction with the meeting, will host nearly 30 international and domestic companies in the materials industry.


編集後記

 執筆者はじめ皆様の御助力により、本号をお送りすることができます。巻頭言で太刀川先生が、材料研究にとって迅速な目標達成に向けた適材適所による効率化と、人材育成のための総合力の涵養の両方が重要であると指摘されておられます。MRS -Jの分野・機関の壁を越えた交流は後者のための重要な環境となっていると思います。特に若い研究者・学生が気軽に参加できる場を一層充実させていく必要性を感じました。(寺田記)