日本MRSニュース Vol.9 No.3 August 1997


やあこんにちは

高温超伝導研究の一層の発展に向けて
東京大学名誉教授・東京理科大学教授 笛木 和雄


 高温超伝導体が発見されたのは1986年であるからそろそろ11年になる。高温超伝導体が注目されるきっかけは、MRSでの発表であった。以来基礎から応用にいたる広い分野で研究開発が行われたことはいうまでもない。その結果多くの高温超伝導体が発見された。種類は分類の仕方にもよるが構造的に特徴あるもので数十から100位と言われており、臨界温度も30Kから始まって135Kに達している。また線材は1000m級で77KにおいてJc4万A/cm2のレベルに達している。発表された論文数は3万位ともいわれ、短期間にこのような多数の研究がなされたのは、過去になかったのではあるまいか。
 しかし研究も開発も曲がり角に来たように思う。一人一説とか百家争鳴とか言われ華やかな論議の行われた理論も、どれが正しいかまだ決着がついていない。いずれの理論もあたっていないのではと極論する人もいる。超伝導体発見後わずかなデータをもとに考え出された理論であるから無理もないと思う。また物性データも数多く出されたが、不一致が大きく、時には相反するものもあり、解釈の付かないものも結構多い。どうすれば議論に耐えるデータが出せるか考えるべき段階にきていると思う。
 化学は物質に関する学問である。多数の物質を合成し、分類し、共通点を探し、性質を調べ、纏めていくのが使命の学問である。高温超伝導体は組成変化させたものを含めれば数千種に及ぶであろう。そうすると化学あるいは物質的な視点は高温超伝導体研究の今後の進め方を決める上に役立つのではあるまいか。そんな気がするので少しこういったことについて私見を記してみたい。
 化学の成立に大きな貢献をした法則に定比例の法則がある。化合物を構成する元素の割合は一定であるという誰でも知っている法則である。しかし、固体例えば金属酸化物などではこの法則に合わないものが多数あることが明らかになった。定比からずれた化合物を不定比化合物というが、高温超伝導体はまさに不定比化合物なのである。不定比化合物では多くの物性が定比からのずれに支配される。高温超伝導体では超伝導特性を始め、常伝導相の輸送的性質、光学的性質などは酸素不定比性に支配されている。高温超伝導体は金属成分についても不定比であり、これがやはり超伝導特性に影響をあたえる。例えばBi系2212の臨界電流密度はストロンチウムの組成が5%変われば劇的に変化する。しかも高温超伝導体の金属成分の数は多い。このように高温超伝導体は大変複雑で、取り扱いのなかなか難しい物質群なのである。
 物理の立場から書かれた金属酸化物の成書には不定比のことが触れられていないから、物理の世界では不定比のことは念頭にはないような気がする。不定比についての認識をぜひ喚起したい。不定比化合物を正しく取り扱うには、組成の厳密な制御と分析が必要なことは言うまでもない。高温超伝導体は不定比酸素量の多いもの少ないものがあるが、平均して全酸素量の2〜3%程度であるから、不定比酸素量の100分の1まで定量するとすれば、定比の酸素は測定にかからない分析法が必要である。その方法の一つがヨードメトリーなのである。最近物理学者の間にヨードメトリーの必要性、有用性の認識が高まってきているのは喜ばしいことである。物性測定に単結晶が望ましいことはいうまでもないが、作製過程で偏析などで結晶内に組成の不均一を生じている可能性もあり注意がいる。酸素量制御には酸素アニールが行われるが、酸素圧、温度、時間などの条件を適切に選び、アニール後も組成分析と不定比酸素量の分析を行わなければならない。物理の方々にはいささか難しい注文であるが、論文には必ず分析値が載るようにならないと混沌の事態は抜け出せないと思う。応用面でも同じことがいえる。
 曲がり角にきた高温超伝導の研究のさらなる発展のために化学者の立場から研究のありかたをコメントさせて頂いた。


■日本MRS学術シンポジウム報告

マテリアルズ・フロンティア・シンポジウム シリーズ(I)
??有機・無機材料の接点を探る??
オルガナイザー:溝口 健作(静岡大学)・三友  護(無機材質研究所)・和田  仁(金属材料技術研究所)


(1) 有機・無機ハイブリッド超薄膜の合成
国武 豊喜・君塚 信夫(九州大学工学部)

 Bilayer membranes are highly stable in water and provide well-defined morphologies.We used aqueous bilayers as templates in the sol-gel prosess.When aqueous dispersions of bilayer membranes and alkoxysilanes were cast on solid substrates,self-supporting hybrid films were obtained.SEM micrographs of the polysiloxane multilayers showed morphological variations characteristic of the bilayer component such as vesicle,lamella,tube,rod,disk and helix.
 The intercalation of organic polymers between sheets of layered ceramics provides an access to novel polymer-ceramic nano-composites.We created multilayers of alternating montmorillonite sheets and polycations.Regular alternate layers(thickness,11A and 22A,respectively)were formed from a 0.03wt% montmorillonite solution,but the adsorption was not saturated at higher concentrations.
 It was also possible to prepare alternate layers of Mo8O264−and a polycation with minimal thickness of the inorganic layer of 10A,corresponding to a single octamolybdate layer.However,the inorganic layer became thicker due to condensation of the cluster,as the adsorption time was extended.
 Recently,we developed the surface sol-gel process,which is composed of chemisorption of alkoxides on hydroxylated surfaces,rinsing step and hydrolysis of the chemisorbed species.This process produced a large variety of metal alkoxide films with controlled thickness in stepwise manners.It was further applied to alternate adsorption of Ti(OBu)4 and poly(acrylic acid)to give a uniform multilayer of controlled thickness.

(2) バイオアクティブ有機無機複合材料
田中 順三(科学技術庁無機材質研究所)

 生体の硬組織は、有機物と無機物からできているナノコンポジットである。例えば、貝殻は炭酸カルシウムとコンキオリンからできており、昆虫の硬組織はキチンの中に炭酸カルシウムを含んでいる。同様に、蚕の作る絹の中にも炭酸カルシウムが含まれている。さらに、人の骨はリン酸カルシウムとコラーゲンの複合体であり、歯も有機無機複合体からできている。これらの複合体が生体内で形成される際には細胞が関与している。そのような生体内の有機無機複合化機構の中から工学に利用できるメカニズムを抽出することにより新しい有機無機の複合化技術が開発されると期待される。
 一方、生体高分子はさまざまなバイオアクティブな特徴を示す。したがって、生体高分子とリン酸カルシウムからできた硬組織材料は各種の医学応用につながると予想される。例えば、コラーゲンとリン酸カルシウムの複合体は、免疫性を低下することにより生体組織との適合性が上がり骨-靭帯の接合材料、またコンドロイチン硫酸とリン酸カルシウムの複合体は軟骨関連部位への応用、同じくヒアルロンサンとの複合体は滑膜、気管支としての応用が考えられる。
 現在までに、電子顕微鏡の観察からコラーゲン/アパタイト複合体では有機無機の自己組織化的な結晶配向(30nm〜10μm領域)が起きること、そしてその結果、緻密で半透明な成型体(理論密度の90%以上、水を含めると空孔率は0%に近い)が得られること、また振動スペクトルの解析から、ポリ乳酸共重合体/リン酸三カルシウム複合体では有機高分子と無機結晶が化学的に相互作用していることなどが明らかになった。後者のポリ乳酸共重合体/リン酸三カルシウム複合体は、犬の顎骨を用いた骨誘導再生法により、10mmの骨欠損を12週で組織再建(90%)し、材料自身は生体内で溶解消失することから、従来の材料にはない優れた生体機能を持つことが明らかになった。
 有機単分子膜(LB膜)上に無機結晶を育成した実験から得られた有機-無機間の相互作用と配向制御についてもふれる。

(3) プリカーサー法によるセラミックスの合成
岡村 清人(大阪府立大学工学部)

 The development of processing ceramics from polymer precursors has attracted a great attention in recent years.In particular,polymers containing silicon are being actively studied as precursors for ceramics.SiC ceramics obtained from the polymers have the advantage of high-temperature stability in an oxidizing atmosphere.Covalent SiC is not easily sintered and so is difficult to obtain in either fiber or film from traditional inorganic processes such as powder sintering process.The polymer precursor method is available to produce high-performance ceramics with several kinds of shapes.And then various types of SiC-based-ceramic fibers such as Nicalon and Tyrannos,coatings,and moldings from precursor polymers are now prodused and commercialized on an industrial scale. The properties of ceramics are correlated with the structure of the polymer precursors and the microstructure formed in the ceramization process from polymers. The chemical structure of polymer precursors is not easily identified,and ordinarily consists of ring and chain or branched-ring groups.To use as ceramic precursors,the conditions of the polymer are shown as follows: (1)ease of manufacture in a melt,(2)solubility in organic solvent,(3)ceramic yield beyond 50%,recently 90%,(4)ceramics with amorphous or microcrystalline state.
 Various routes from polymer precursors to SiC ceramics have actively been studied.The use of polysilane precursors is popular to synthesize SiC ceramics with amorphous structure.This lecture concerns polysilane family polymers,their ceramization process to SiC ceramics,and the properties of ceramics.

(4) 炭素系高機能材料−有機と無機の橋渡し
古賀 義紀(物質工学工業技術研究所)

 During the last years rapid progress has been achieved in technologies for the synthesis of diamond,diamond-like carbon and other materials,and the unique properties of these materials are being investigated.In particular,intensive attempts to fabricate electronic devices using diamond and SiC are in progress internationally.These devices display ultra-high performance even in harsh environments,which cannot be attained with conventional semiconducting materials such as Si and GaAs.
 Furthermore,new carbon srtucture including fullerenes,carbon nanotubes, carbynes and many others have been discovered, and the existence of new compounds such as β-C3N4 has been predicted.Synthesie and characterization of these materials are currently in progress.
 Highly functional carbon and related materials(HFCRM)have a number of excellent characteristics,including tremendous hardness,optical transparency over a wide wavelength range,tolerance to high temperature,radiation and chemical agents,high thermal conductivity,electrical insulation,and unique surface and interface characteristics.
 The creation of HFCRM will be achieved through interatomic bonding control, structural and orientation control of substances and heteroatomic substitution(hybridization of structural atoms by heterogenesis),so the objective will be to discover HFCRM featuring functions far surpassing those of conventional types of substances and materials.
 We report the new synthesis of carbon nitride,carbon nanotubes and other carbon materials.

(5) 有機・無機ハイブリッドによる複合材料のインテリジェント化
吉田  均(物質工学工業技術研究所)

 環境条件に知的に応答し、所要の機能を発現するような材料、即ち環境応答性材料は、これまでの新素材の概念を超えた高機能・高付加価値材料として各方面で活発な研究がなされている。そのような中で、筆者らは、TiNi形状記憶合金がマルテンサイト(低温時)とオーステナイト(高温時)において弾性率に大きな差があることに着目し、これらの合金をエフェクターとし、樹脂やFRPを母材とした「環境応答性複合材料」を創製して、その成果を発表してきた。これらの成果は、元来非可逆性である形状記憶合金を用いて可逆的応答性を有する複合材料に関する理論を開発し、実験的に証明した点にあり、これにより、外部環境の変化に繰返し追従する実用的な材料が実現したことである。ここではこれら成果を踏まえ、実用的応用の観点から重要な要素となる温度変化に伴う可逆的形状応答と、その時発生する力について理論的及び実験的検討を行い、かなり満足すべき結果を得た。


■ 研究所紹介

三洋電機 筑波研究所

三洋電機 筑波研究所所長 前川  稠

 当研究所は、基礎・基盤研究に重点を置いた独創的な研究を行う拠点として、1985年10月に筑波研究学園都市に設立された(写真1)。現在、三洋電機の研究開発本部に属する5つの研究所の中で最も基礎的な技術開発に挑戦し、将来の事業につながる成果の創出を目指している。

            ┌ 筑波研究所
            ├ ニューマテリアル研究所
三洋電機 研究開発本部─┼ メカトロニクス研究所
            ├ ハイパーメディア研究所
            └ マイクロエレクトロニクス研究所

 設立当初の研究分野は、?分子エレクトロニクス(生体情報処理、バイオ素子)、?半導体微細加工(X線リソグラフィー、イオンビーム応用)、?新素材(超格子、酸化物超電導材料)、?知能システム(知能ロボット、画像認識)でスタートした。その中で、目標を達成したテーマは事業化につなげるため、技術成果を応用、開発を担当する他研究所へ移管し、現在は、超電導エレクトロニクス、バイオエレクトロニクス、画像情報処理の3分野を中心に取<り組んでいる。
 筑波研究学園都市にあるという立地条件を活かして、国立研究所、大学など各研究機関との共同研究を積極的に行うと共に、海外からも優秀な外国人研究者を受入れ、国際的な研究交流も活発に行っている。

研究分野

 超電導の研究は、酸化物高温超電導体の発見をきっかけに開始し、高温超電導体のエレクトロニクス応用を目指して、まず材料・物性研究から始まった。その後、薄膜作製技術、デバイス化技術などの基盤研究に取り組んできた(写真2)。それとともに、1988年には、通産省のプロジェクト「超電導素子化技術」に参加し、低エネルギー型超電導ベース三端子素子の研究を進めてきた。この素子は、エミッターからトンネル接合を通して注入された低エネルギー準粒子が、超電導ベース中を低散乱で走行し、半導体コレクターに到達することによりトランジスター動作を行うものである。超電導ベース三端子素子として、ベース材料にBa1-xKBixO3超電導材料を、半導体コレクター層にNbをドープしたSrTiO3半導体材料を用いたものを試作し、酸化物高温超電導体を用いた、このタイプのトランジスタとしては初めて、その動作検証に成功した。また最近、コレクター材料として遷移金属を含む酸化物材料を研究していく過程で、SrTiO3にLaを適当量ドープした単結晶(写真3)が、高いキャリア濃度を持つ酸化物半導体であるとともに、第二種超電導体であることをつきとめている。
 現在、超電導ベース三端子素子の研究は、プロトタイプ素子に向け、良好な超電導体/半導体接合を形成する表面・界面制御技術と、超電導体/半導体接合のバリア構造を説明する、新しいデバイス物理シミュレーション技術、さらに、走査型プローブ顕微鏡を使ったBEEM(Ballistic Electron Emission Microscopy)による超電導体/半導体接合界面評価技術を用いて、素子特性向上に向けた研究を行っている。
 さらに、1995年には、通産省のプロジェクト「ジョセフソン素子ハイブリッド化システム技術」にも参加し、次世代エレクトロニクスの重要技術である、超電導配線技術の構築に向け、高品質な配線用タリウム系超電導薄膜の作製および、超高周波信号の伝送評価技術などの基礎研究を進めるとともに、超電導ミリ波検出素子の試作開発を行っている。
 最近のトピックスとして、タリウム系超電導薄膜の高品質化を進めた結果、その結晶構造に起因する固有ジョセフソン効果を確認したことがあげられる。得られた特性から、この固有ジョセフソン効果をスイッチングデバイスに適用すると、理論的に0.05psecという高速なスイッチング動作が可能になるという結果が得られた。
 現在、タリウム系超電導薄膜を使い、超電導ミリ波デバイスの作製、回路設計などを行い、ミリ波信号検出器やリモートセンシングへの展開を目指している。また、超電導配線を使った数ギガビット/秒のデジタル信号伝送の実現に向けた研究も進めている。
 バイオエレクトロニクス分野では、生体情報処理と廃棄物のバイオ処理の研究を行っている。生体情報処理は、将来の高度情報化社会に対応する方向として、「生体の情報処理のメカニズムを解明し、それを次世代エレクトロニクスに応用する」ことを目的に、生体情報処理に関するユニークな研究を行っている。具体的には、簡単な神経系を持ったナメクジにおける、生物の学習と記憶のメカニズムを、脳を直接調べることにより解明し、その情報処理を探る「生体情報処理」である。
 ナメクジの匂い中枢は振動的な電気活動を行っており(写真4)、匂いの認識や学習によって振動の周期が変化することを見出した。これは、振動的な活動が脳の情報処理において重要な役割を担っていることを示しており、生物の柔軟な情報処理を工学的に応用するための可能性を示した。現在、生体の脳機能を模倣した非線形ネットワークという情報処理技術を提案し、計算機モデルを構築している。
 一方で、脂質タンパク質のような生体分子や合成高分子を用いて、化学センサーや匂いセンサーを実現する研究も行っている。現在、人間に匹敵するような高感度・高選択性を有する匂いセンサーを実現するために、生物の嗅覚にある匂いレセプターと呼ばれるタンパク質を高感度匂いセンサーに用いる研究を進めている。
 また、最近では微生物の工学的応用も盛んに研究が行われているが、当研究所でも“クリーンな地球環境”の視点から、生ゴミなどの廃棄物のバイオ処理に関する研究に取り組んでいる。
 画像情報処理分野では、マルチメディアに不可欠な画像情報処理技術の研究を行っている。特に、移動体動画通信に応用される高度画像圧縮技術や、次世代の表示方法として期待されている三次元立体表示に関する研究において、対象物を多角的にカメラ撮影した数十枚の画像から、物体表面の色彩・陰影・模様情報と三次元形状を獲得して三次元画像を自動生成する、全く新しい三次元画像入力技術を最近開発した。

今後の研究方向

 当研究所は21世紀に向け、独創的な研究を行う拠点としての役割を果たすために、特にクリーンエネルギーとマルチメディア分野に重点を置き、重要な基盤技術の育成に向け取り組んでいく。
 具体的には、クリーンエネルギー分野では、バイオ技術を利用した環境・リサイクル技術分野、そして、超電導材料やハードエレクトロニクス材料など、シリコンに替わる新しいエレクトロニクス材料による省エネルギー・高効率デバイス技術の研究を行う。
 マルチメディア分野では、超電導素子を基礎にした超高速デジタル信号処理技術分野、新機能デバイス分野、生体情報処理やバイオセンシングを利用した、人にやさしいマン・マシンインターフェイスに関して推進していく。さらに、高性能符号化技術、三次元画像処理など画像情報処理技術に重点を置いて研究を進めていく。

連絡先:
〒305 茨城県つくば市高野台2-1
    三洋電機?筑波研究所企画課
    Tel (0298)37-2809/Fax (0298)37-2830


IUMRS(International Union of Materials Research Societies)General Assembly 報告
IUMRS 前会長 堂 山 昌 男

 世界の10の国、地域にわたって、10のMRSがある。各MRSになる条件は一定数以上の材料研究者がいること、隣接のMRSの承認がえられること、世界のMRSを統括しているIUMRSのGeneral Assembly で設立が認められることである。IUMRSが主催するICAM(International Conference on Advanced Materials: 第1回日本1988年、第2回欧州1991年、第3回日本1993年、第4回メキシコ1995年、第5回欧州1997年)が西暦奇数年に、ICEM(International Conference on Electronic Materials:第1回日本1988年、第2回米国1990年、第3回欧州1992年、第4回台湾1994年、第5回米国1996年)が西暦偶数年に開催されるのを機会にIUMRSでは1年に1回総会General Assemblyが開催される。
 今年1997年はICAM'97がフランスとドイツの国境近くのAlsace Lorraine地方のStrasbourgで6月16日から21日までヨーロッパMRSがホストとなって行われたのを機会にIUMRS General Assemblyが開催された。General Assemblyに先だってExecutive Committee(正式メンバーは会長、副会長、書記、会計、総書記、前会長)が6月16、17日両日に亙って開催され打ち合わせが行われた。
 以下のことが今回の総会で決まった。
 (1) エジプトにMRSを作りたいという意向がある。また、南米ブラジル、アルゼンチン、チリーにMRSを作りたいという話しがあるが、General SecretaryのR.P.H.Changが近々ブラジルを訪問するので、様子を見てくることになった。南米が一つに集まり、MRSを作ることが望ましいとの要望が出された。
 (2) MRS Bulletinのリプリントを希望のあるMRSで印刷し、そのメンバーに配布しようという動きがすすんでいる。アメリカMRSとしては個別に契約したい。この動きで一番すすんでいるのは中国であり、すでにテスト印刷まで終えている。これに対し、ヨーロッパMRSは現在アメリカMRSから直接購入しているが、中国から輸入できないかという話しも出た。
 (3) ICEM'98は1998年8月24日から27日まで韓国済洲島新羅ホテルで行うこととなった。ICA'98(International Conference in Asia)はインドのBangaloreで10月13日から17日まで行うことが提案された。ICAM'99、ICA'99は北京で6月行うことが提案されたが、ヨーロッパMRSと日程を調整してほしい旨発言があった。今後ICAM、ICEMには5,000米ドルずつ学生、若い研究者の賞として支出することになった。吉村日本MRS代表よりICAへの補助もという提案が出され、ICAの提案者、李恒徳から過去に2回要請があって、不採択になった経過があるので、投票となり、今回限り2,500米ドルの支援が採択された。今後はその都度ということである。
 (4) 第2副会長の投票が行われ、前ヨーロッパMRS会長Glasow氏が当選した。第2副会長は自動的には第1副会長にはならないことが決まった。
Treasurerとして日本MRS会長・山本良一教授が中国MRSからnominateされ、1998年〜1999年のTreasurerになった。
 (5) 各MRSはホームページを整備し、早い機会にIUMRSホームページとドッキングするよう要望された。


お 知 ら せ

シンポジウム等開催予定


編集後記

 盛夏の頃、今年度の研究や教育活動もメインステージに入ろうとするところかと存じます。本号の担当を仰せつかりましてから半年、不慣れ且つ至らない点が多かったのですが、笛木先生をはじめとする執筆者の皆様と編集委員長をはじめとするメンバーの方々のご助力により、本号をお送りすることができます。
 日本の昨今の経済状況を反映して、科学技術研究開発にも応用イメージや実用化へのシナリオといった社会・産業面での位置づけが求められることが多くなっています。物質・材料科学は、科学技術の中でも最も基礎的、基盤的領域をカバーするものの一つですが、このような社会的要請に対応する上で、異なる物質の分野間や、物質・材料分野と種々の応用分野間の連携を深めることにより、基礎から最終的な展開までを包含する総合的な研究開発を実施すること、あるいはそのような計画を策定するための環境を整えることが大切かと存じます。編集に携わらせていただき、日本MRSおよび学術シンポジウムが、まさにこのような異種分野の研究者、技術者、政策担当者の交流の場として機能していると感じました。これをMRSニュースを通じて多くの読者の皆様にお伝えできればと存じます。 (寺田記)


平成9年度 日本MRSニュース編集委員会

委員長:山本 寛(日大理工)
委 員:大山昌憲(東京高専)、岸本直樹(金材研)、舘泉雄治(東京高専)、
    寺田教男(電総研)、林 孝好(NTT境界領域研)、藤田安彦(都立科技大)
事務局:縣 義孝(千代田エイジェンシー)、清水正秀(東京CTB)

 当誌へのどのような意見も歓迎いたします。連絡先は山本委員長までお願い致します。

Tel0474(69)5457、Fax0474(67)9683、
E-mail hyama@ecs.cst.nihon-u.ac.jp