日本MRSニュース Vol.9 No.4 November 1997


やあこんにちは

新材料と私

東京大学名誉教授、広島工業大学教授 森垣 和夫

 私が半導体の研究を始めたのは、1961年5月ソニー研究所の初代の所長、故鳩山道夫博士の招きによって、その創設に参加させて頂いてからである。所長の研究へのキャッチフレーズは、new phenomena & new materialsであった。1960年代の初頭といえば、ガン効果(ガンダイオード)の発見、半導体レーザーの発明と50年代からの研究が花を開き、更に新しい進展へと、その息吹きが感ぜられる時代であった。それが1966年にわが国で初めて半導体物理学国際会議が開かれることになって、その準備のための集会が物理学会の折に開かれるようになった頃、半導体研究も曲がり角になったと、ささやかれるようになった。それは1964年パリで開かれた上記の会議でフランスの大御所のAigrain教授の閉会式での挨拶(closing address)に影響されているように思われた。彼は、次のような趣旨のことをいっている。
 10年前の半導体研究は、非常にエキサイティングで専門化していなかった。例えて言うと初めて映画に登場した時のマリリンモンローのようであった。それが今日、半導体研究は、大変細かく専門化して、最近の映画に出てくる彼女のようであると。但し、彼は、これは半導体研究が面白くなくなったことを意味するのではない、とも付け加えている。その後の半導体研究が、量子ホール効果の発見を初めとする低次元系、超格子系を含む新材料へと、発展したことを考えれば、曲がり角を曲がり切った先に新しい世界が開けたとも言えよう。
 私自身は、ソニー研究所時代は主としてCdSをはじめとした?-?化合物の不純物、欠陥中心、それから東京大学物性研究所に移った1966年からは、n型シリコン、ゲルマニウムでの不純物伝導、特にスピンに依存した電気伝導に興味をもって研究を行っていた。n型シリコンのドナー電子が不規則系での金属非金属転移を引き起こす典型的な例であったことから、不規則系としてのアモルファスに研究の中心を移したのが1975年頃であった。それから、20年余アモルファス半導体に足を突っ込むことになる。しかし、材料としては、いつも先人のあとを追っていたが、アモルファスシリコン系の超格子膜の研究をやり出してから、アモルファスでは、2元合金の場合を考えると、連続的に組成が変えられることに気がついて、バンド端を正弦波的に変調する膜の作製を試みた。このように正弦波的に変調されたポテンシャルは、固体電子論で最初に出てくる周期的ポテンシャルの基本波のみを考えることに相当する。そのために、アモルファスシリコン(a-Si:H)に窒素を混ぜた合金系(a-Si1−xNx:H)で、組成xを膜の成長方向に正弦波的に変調し、バンド端がほぼ正弦波的な膜を作ることを始めた。その作製には、荻原千聡、太田洋、山口政晃の諸君があたり、荻原君は、光吸収スペクトルの測定から、確かに変調周期長を短くすると、吸収端が高エネルギーにずれ、量子効果をとりいれた理論的な予想に合う結果を得た。X線回折でもこの膜の組成変調を確認し、物性測定もルミネッセンス、光誘起吸収、ODMR, ESRを更に李瑛さん、近藤道雄君の協力も得て行った。われわれは、この膜をバンド端変調構造膜(略して変調構造膜)と呼んでいる。
 本年8月、ハンガリーの首都ブダペストで開かれた第17回アモルファス半導体国際会議では、荻原君が彼の山口大学工学部の研究室でのルミネッセンス周波数応答の測定の研究を中心に、この膜についての招待講演を行った。私の当初の目的であったブロッホ理論での周期的ポテンシャルの基本波の行列要素とそのポテンシャルの大きさとの関係を、この人工的正弦波ポテンシャルを使って調べることは、残念ながらまだ完成していない。また、このような新材料の応用が開けるかどうかも未知である。乱れた世界であるアモルファスは、電子にとっては、ジャングルジムの中で、すぐに捕まってしまう迷路のような空間である。それが、高速デバイスへの応用を妨げている一因になっているといえよう。
 変調構造膜の今後の発展に期待したい。



会場のOVTA
 

表-1 IUMRS-ICA-97 地域別参加者一覧
Australia 8
Austria 2
Belgium 3
Brazil 1
Bulgaria 1
Canada 1
China 41
Czech Republic 3
(Egypt) 0
France 5
Germany 8
Hong Kong 5
Hungary 3
India 19
Indonesia 1
Ireland 1
Israel 2
Italy 1
Japan 1003
Korea 61
Malaysia 2
Philippines 1
Portugal 2
Romania 1
Russia 5
Saudi Arabia 1
Singapore 4
Slovenia 1
South Africa 2
Spain 2
Sri Lanka 1
Sweden 2
Taiwan 31
Thailand 3
The Netherlands 3
U.K. 3
U.S.A. 39
(Ukraine) 0
Uzbekistan 1
Venazuela 2
Vietnam 3
Yugoslavia 2
計 1280


■国際会議報告

MRS国際連合第4回アジア国際会議(IUMRS-ICA-97)報告
 東京工業大学応用セラミックス研究所教授 吉村 昌弘)

IUMRS-ICA-97を開催して
 The 4th IUMRS International Conference in Asia(MRS国際連合第4回アジア国際会議)は1997年9月16日(火)〜18日(木)、実質的には15日(月)のレセプション/ミキサーからなので4日間、千葉市幕張地区のOVTA(海外職業訓練協力センター)で行われました。参加登録者は仮登録者も含めて45カ国、1300名強でしたが、実質参加者は総数1280名、内訳は表1のように国内1000人強、この内70人位は滞日中の外国人が含まれていると思われます。海外からはKorea 61人、China 41人、USA 39人、Taiwan 31人、India 19人など39ヶ国、277人でした。この中には当日登録者75人が含まれていますが、登録費も
納入してあって当日欠席した人、13人は含まれていません。発表も申込総数1313件で、実際に発表されたのが約1160件でした。この中には日本のビザが下りなくて参加できなかった人が少なくとも5〜6人ありました。当日も電話がかかってきて「あと5時間で予約した飛行機が出るのだ、外務省と大使館に電話して至急ビザを出してくれ」などというのがありました。両方に電話もしてみましたが申請書類が不備のためということでどうにもできませんでした。逆に、苦労して何度も何度も書類を送ってやっとビザはOKだったのに「風邪をひいたので行かれない」というのもありましたし、2〜3日前に「どうしてもビザが下りない」という連絡があったので諦めていたら、当日ヒョッコリやってきた人がいたりで「国際会議では何が起こるか開けてみるまでは分からない」というのを改めて実感しました。
 とにかく22シンポジウムに1300人弱の参加者が来て下さったことは、ひとえにシンポジウムチェアや組織委員の方々、およびそれを支えて下さったスタッフの方々のお陰であり、これらの方々に心から御礼申し上げる次第であります。人数や発表の件数ばかりでなく、各シンポジウムの内容も「レベルの高さおよび話題の豊富さにおいて充分聞き応えがあった」という声を多数の方々から聞いており嬉しく思っております。
 今回の会議では以下の点に特色を持たせました。
(1)内容の実質的充実、ポスターセッション重視
(2)このため軽食飲物付き3時間のポスターセッション
(3)アジアなどからの参加者、若い参加者の増大(登録費等援助者総数は213名)
(4)国際レベルの方々の招へいも実施
(5)Young Researcher Awardの実施(合計51人に副賞42万円)
これを可能にしたのは経費節減のため、登録業務、会場業務等を業者に任せずほとんど自分たちで行ったことです(ちなみに国際会議サービス等の業者を依頼すると登録1人当たり4,000円、論文1編当たり1,500円などで参加者一人当たり8,000〜10,000円の経費が余分にかかります)。
 ホワイエでのポスターセッション、ましてや飲食などOVTAにとっても全く初めてのことでしたが、大勢の参加者の熱心な討論が続く盛況を見て、会場を斡旋してくれた千葉コンベンションビューローの方も「良い雰囲気ですね、こういうやり方を初めて見ましたが、これから他の会議の人たちにも薦めてみます。勉強になりました」といっていました。このセッション実現のためには実のところ粘り強い交渉が必要でしたが、ポスターボードの手配、運搬、組立、配列などを含め会場係一切を担当して下さった山本寛教授、吉山信成助手はじめ日本大学の方々にも大変お世話になりました。心から御礼申し上げます。
 飲食付で昼夜各3時間のポスターセッションというのはMRSでも初めての試みでしたが、これだけ余裕があると(a)発表者も他のポスターを見ることができる、(b)自分の専門以外の発表も見られる、(c)日本人同士は日本語で、その他は英語で充分討論できる、という利点があります。これを充分活用すれば専門分野、地域、国籍、言語、年代などのギャップを越えて広くかつ深くMaterialsについて情報や意見の交換ができるというMRSの魅力を堪能することができるはずです。そのようにして3日間フルに会場にいますと最大500件以上のポスターを見ることができるのですが、さすがにそこまでやった人は何人いたのでしょうか?
 同一のポスター会場にいくつかのシンポジウムが入っていたので、「思いがけずに隣りに面白い発表がありました。」とか「今まで知らなかった人に会えて良かった」という声もかなり聞こえてきました。その他「ベトナムやスリランカ、フィリピンなどの研究者と初めて会いました」とか「共同研究や人事交流を是非やりたい相手が見つかりました」というものもあり、他に、「食費もかからずに3日間フルに勉強できた」と喜んでいた若い研究者もいたりしてポスターセッションはかなり好評だったと思っております。もちろん「場所が狭かった」、「ホワイエは暗かった」、「食物が無くなった」などという苦情もありましたが、規則上の制約や前例のなさを越えて協力して下さったOVTAの職員にも心から感謝いたします。
 口頭発表では若いひとたちもかなり達者な英語で発表していたのは頼もしい限りです。またOHPも工夫されていて見やすいものが多かったように思います。但し質問になると前方に陣取っている欧米からの招待講演者からの発言がどうしても主になってしまいがちです。国内の人々ももっと質疑に参加する努力が必要かと思います。英語が上手かどうかなどは実は研究者の能力や、ましてや人間としての価値に関係はないのですから「英語が下手だから……」などと卑下するばかりでなく、逆に「会話のプロではないのだから下手で当たり前だ!」ぐらいに思って質疑に参加する方がむしろ正当かもしれません。小生の知人で咽喉障害のため全く発声できないので、携帯用の翻訳機を用いて質疑する人がいます。我々もこの手を使ったり、OHPに書き込んで質問したりする方法など会話以外の質疑の方法を工夫すると良いかもしれません。これが特に我が国で行う国際会議で考慮すべきことでしょう。
 Young Researcher Awardは大変良かったと好評でした。実際に審査された先生方は大変苦労されたと思いますが、「同点なので出来れば2人、あるいは3人とも受賞にしてくれ」とか「国際的バランスも考えるとこの人も是非」とかの理由でシンポジウムによってはやや増量気味のところもあり、結果として受賞者52名に賞状と副賞42万円を贈呈致しました。受賞者のリストは表2の通りです。52名(1名はダブル受賞)の内訳は日本在住者が33人(65%)と多かったのですが、全参加者中の割合78%に比べれば少なく、ましてこの中に在日中の外国籍の人が(と思われる人も含めて)7人いることを考慮すると、まあ公平かつ正当な審査であった、あるいは良いバランスであったかと判断できると思います。受賞者の皆様おめでとうございます。今後のご発展を心からお祈り申し上げます。副賞はとにかく「国際会議で受賞した」ということが受賞者にとって大きな励みになれば主催者としては大きな喜びです。「思いがけずにこのような名誉に浴し、これからの研究に意欲がわいてきました」とか、「帰国してボスに話をしたらめったに誉めてくれないボスがとても喜んでくれて大いに面目を施した」などというメッセージが届くと我々も嬉しくなります。
 各シンポジウムのチェアの先生方には招待者への実質的なサポートからプログラム作成、名簿づくり、さらに会の運営、Awardの選定からプロシーディングまで本当に物心両面で大変御世話になりました。またそれを支えてくれた研究室のスタッフや学生さんの協力なしではこの会は成立しなかったのですから、これらの方々に心から御礼を申し上げたいと思います。我々のところでも皆良くやってくれました。特に秘書の吉岡さんの献身的努力には頭が下がります。本当にどうも有り難うございました。
 反面、ChairやAdvisorあるいは組織委員でありながらほとんど何もされなかった方も少なからずいらっしゃいました。また立場上協力すべき人でもできなかった人や、しなかった人もいたりしました。思いがけないほどの誠実さから思いがけないほどのでたらめさまで実に様々な人間模様が見られました。概ね、著名な先生方は忙しすぎて「ご自分の発表だけに出席するのがやっと」という状態が多かったのでこのような方にはずいぶんと高い会議についてしまいました。そのような不満を明らかにされた方も複数いらっしゃいました。心の中でそう思った方はかなり多勢だったと想像しております。「でもそれも仕方がないのか?」と思って納得して下さった方には感謝しなければなりません。
 海外からのChairや招待者でも登録費や旅費の補助を受けた人から全く何も受けなかった人までおりますので「不公平である、平等にすべきだ!」という不満も出てきました。この点に関しては以下のように考えております。「平等に扱うことが公平であるとは言えない」、「人間社会に不平等が存在している現実がある以上、数字上の平等の扱いはかえって不公平を助長する」と言うことです。例えばこの会議では22シンポジウムに全部で115人のChairがいましたが、それらの方々の貢献も責任も決して平等ではありませんでした。それに対して全員を一律に登録費免除とか半額とかにするのはかえって不公平に思います。登録費(一般事前4万円、通常5万円;学生事前1.5万円、通常2万円)も平均月収30万円の国の人と、7千円の国の人とでは全く重さが異なります。従って金銭的援助も見かけの平等さよりも必要度に応じた適正な配分が望ましいと思うのです。金銭的な面のみならず、能力や努力、あるいは時間的協力などの面でも「出してもらえる人からは出してもらい、必要な人に回す」ことが、特に国際的な協力では大切なことと思います。この会議でもこの方針を採用しました。その意味では結果的に好意的な人を徹底的に酷使したことになります。そのような人たちには申し訳ないという気持ちでいっぱいです。他にやりようも見あたらなかったので「不公平や不均等を半ば承知の上でつっ走った」のが実状ですが、とても皆様を公平に扱うなどと理想的なことでは会は開催にたどり着かなかったと思います。22のシンポジウム、115人のchair, 1300人の参加者に少しでも多くの満足を得てもらうために最大限の配慮を心がけたつもりです。また結果としての適正さにもずいぶんと気を使ったつもりです。もちろん神ならぬ身の判断ですから100%の適正さなど全く考えられません。せめて80%くらい正しければ良しとして認めてもらいたいものです。その意味で皆様方の忌憚のない御意見や御判断を仰ぎたいと思っております。
 会期中あるいは後にもかなりの参加者から「この会議は面白かった」、「運営もスムーズだった」、「大成功だと思う」などという声を特に外国の参加者から聞きました。但し、小生個人としては「これでやっと責任を果たしたことになる、やれやれ」、「皆様のおかげで(小過はあったが)大過なく会が開けた、ありがたいことだ」というのが実感です。人手も時間も予算も限られていた中でとにかく無事に会を終えることが出来たのは、ひとえに協力して下さった皆様のおかげです。本当にどうも有り難うございました。これを一つのステップにMaterials Researchが人類社会の発展へつながることを期待して筆を措くことに致します。


表-2 IUMRS-ICA-97 Young Researcher Award 受賞者一覧
[A]    A5.1            P. Leclere (Belgium)
                      
[B]    B3.4            Masatoshi Kobayashi (Japan)
      B4.0            Robert Moerkerke (Belgium)
                      
[C]    C-28            Toko Arai (Japan)
      C-30, 31        Sang Yong Nam (Korea)
                      
[D]    D2.1            Jia-Min Lin (Taiwan)
      D2.5            Ken Kojio (Japan)
                      
[E]    E4.4            Hiroshi Hasebe (Japan)
      E7.3            Eiichi Akiyama (Japan)
      E7.5            Hirokazu Yamane (Japan)
                      
[F]    F1.9            Michael Wong (USA)
      F5.4            G. Q. (Max) Lu (Australia)
                      
[G]    G3.4            Haruichi Kanaya (Japan)
      G3.10           V. Petrykin (Japan)
                      
[H]    H1.4            Ken-ichi Goto (Japan)
      H4.4            Shao-Liang Cheng (Taiwan)
      H4.8            Takaaki Aoki (Japan)
                      
[I]    I2.4            Takako Nakamura (Japan)
      I6.13           Denis Arcon (Slovenia)
                      
[J]    J2.20           Morihiko Matsumoto (Japan)
      J2.21           Fan Wei (China)
      J3.8            Nobuhiro Matsushita (Japan)
      J5.5            Yoshitaka Kitamoto (Japan)
      J9.6            Yadoji Purushotham (India)
      J11.4           Xiu-Feng Han (Chine)
                      
[K]    K2.3            Masato Yoshiya (Japan)
      K6.5            Koji Watari (Japan)
                      
[L]    L2.7            Kazuyuki Kumeda (Japan)
      L4.2            Koji Watari (Japan)
      L5.3            Atsushi Takata (Japan)
                      
[M]    M3.2            Wojciech Suchanek (Japan)
      M4.6, 5.11      Alexei Vertegel (Russia)
      M6.4            Hiroyuki Morioka (Japan)
                      
[N]    N6.5            Craig A. J. Fisher (Japan)
      N6.7            G. E. Nikiforova (Russia)
      N8.12           A. M. Mebed (Japan)
                      
[O]    O2.2            Yutaka Wakayama (Japan)
      O2.7            Masato Ohnuma (Japan)
      O3.4            E. H. Buchler (Japan)
      O3.14           Bo Bian (Japan)
      O3.19           Hisato Koshiba (Japan)
                      
[P]    P1.21           Masahiro Suzuki (Japan)
      P1.28           Masayoshi Kamijo (Japan)
                      
[Q]    Q3.4            Kazuo Ikuta (Japan)
      Q3.9            Katsuhide Kawamata (Japan)
      Q5.14           Hei Wong (Hong Kong)
                      
[R]    R6.1            Masatsune Kato (Japan)
                      
[S]    S2.2            Y. F. Han (China)
                      
[T]    T1.8            Jingwen Xue (Japan)
      T2.35           Murt Redington (Ireland)
                      
[U]    U1.5            Y. C. Peng (Taiwan)
      U3.6            Takashi Tokuda (Japan)

注)Koji Watari氏は[K],[L]でダブル受賞



シンポジウムA 高分子表面??構造、性質、機能
 神戸大学教授 中前勝彦

 本シンポジウムでは、接着、複合材料、生体材料などにおける高分子表面および界面の問題に関する研究発表が行われた。M.E.R.Shanahan(フランス)、三木哲郎(日本)、B.Ranby(スウェーデン)、B.D.Ratner(アメリカ)、高原 淳(日本)の5人の先生方による招待講演の他に、22件の口頭発表および12件のポスター発表が行われた。その内容は多岐に渡り、プラズマ放電処理、グラフト重合などによる高分子表面改質、接着界面や残留応力に関する解析、生体分子との相互作用、最新のテクニックを駆使した表面分析などであった。とくに、新しい表面分析手段である走査プローブ顕微鏡を利用した研究発表が目立った。例えば、本シンポジウムの若手研究者奨励賞を受賞したP.Leclere(ベルギー)は、相分離構造をもつブロックコポリマー表面のモルフォロジー観察にその手法を応用した。
 一日半にわたるシンポジウムの会期中、およそ30〜40名の参加者が、常時、議論に参加した。出席者の国籍はバラエティーに富み、アジア諸国はもちろんのこと、ヨーロッパ、北米からの参加者も多数あった。極めて広範な問題をターゲットにしたシンポジウムであったため、一日半の限られた時間内でいずれの問題についても深く討論することは、当然、不可能であった。しかし、刺激に富む問題提起の場を提供することができたものと思う。本研究分野を担う世界各国の研究者のそれぞれが何かの新しいヒントを得てこの会を終えたことと期待している。
 

シンポジウムB インテリジェントゲル部門
 北海道大学大学院理学研究科教授 長田義仁

シンポジウムB発表会場

 シンポジウムB「インテリジェントゲル部門」は、9月16日(火)〜17日(水)の2日間の日程で開催された。招待講演6件を含む32件の講演が行われた。
 1日目はSession Chairである北海道大学長田義仁教授の開会の挨拶があり、講演は9時30分から予定通り始められた。
 講演はセッションB1:Fundamental Behaviors of Gels、セッションB2:Structure and Properties of Gels、セッションB3:Functional and Smart Gels、セッションB4:Stimuli- Responsive Gelsとしてそれぞれ7件、5件、10件、10件の講演が2日間にわたり行われた。そのうち、招待講演として香港中文大学Chi Wu教授が「A Fast Shrinking Gel and Its Potential Medical Applications」と題して講演された。疎水性モノマーを架橋剤として使用することでゲルの収縮を速くし血管の修復に応用が期待されるという興味深い内容であった。また、ひときわ注目を集めた講演は東京理科大学の長崎幸夫教授の「A New Hydro Gel,Poly(Silamine),with Rubber Elasticity Transition」であった。膨潤した状態で弾性的に強く、新しい分野に期待される刺激応答性のゲルの話であった。この講演はひときわ議論が白熱した。また、その他のどの講演も白熱した質疑応答がなされ終了予定時間を1時間ほど延長した。講演者の中には若い学生の姿も見られ英語での講演を首尾よくこなし、また質疑応答においても外国人からの質問に苦戦しながら応えているのが大変印象的であり将来が期待されるように思った。
 2日目は、午前9時15分からセッションB4の10件の講演が行われた。2日目も朝早くから多数の参加者があり、さかんな議論が行われた。
 会議開催中の2日間は、台風19号の影響で悪天候にみまわれたがそれにもかかわらず60余名の参加者があり日本をはじめ外国からは、チェコスロバキア、香港、ベルギー、アメリカ、オーストラリアからの参加があった。2日間を通じて行われた全講演は17日の午後12時30分に終了し、最後に北海道大学長田義仁教授が総評を述べ、幕を閉じた。
 

シンポジウムC 環境及び生体用高分子膜
 明治大学工学部工業化学科 仲川 勤

 本シンポジウムは有機高分子材料のうち、特に高分子膜、それも地球環境の保全に役立つ分野における高分子膜と、なんらかの形で生体に役立つ分野における高分子膜をとりあげている。この分野は、既に多くの国内及び国際学会が我が国でも開催されているため多くの参加人員が望めなかったが、それでも口頭発表21件、ポスター14件の応募を得ることができた。外国からは韓国5、中国3、アメリカ2、台湾1、オーストラリア1であったが、直前にオーストラリアの応募はキャンセルされた。また、事前の参加申込み者で当日欠席されたのは登録免除手続き済みの中国1のみであった。この点では参加者の協力は得られたと思われる。本シンポジウムでは、A4の2枚のExtended Abstractを、別に作成し、当日参加者に会場で配布した。50部作成したが、残部がわずかに1であり、約50名が参加されたことになり、また会場もいっぱいであった。
 シンポジウムは2日目の午後から、生体関連高分子膜の口頭発表からスタートし招待講演2件を含む7件の発表を行った。討論は案じていたよりきわめて活発であり、前述のキャンセルの講演時間で時間超過を最小限に抑えることができた。夜のポスターは1件のキャンセルもなく、和気あいあいのうちに、討論が進められていたようである。Young Researcher Awardは韓国の漢陽大学の博士課程の男子学生と、明治大学修士課程の女子学生が高得点を得て選ばれ、最終日の翌日、シンポジウム会場で表彰を行った。最終日は午前、午後をフルに使い、地球環境の保全に役立つ高分子膜に関する発表を行った。アメリカからの参加者1名には、特にGreenhouse effectの低減に役立つ高分子膜について特に45分のPlenary Lectureを依頼した。すべての発表に討論は活発であり、最終の発表が終ったときは、他の全ての会場の発表は終っており、外は夕闇に包まれていた。
 

シンポジウムD 高分子複合材料に関するシンポジウム
 九州大学大学院工学研究科教授 高原 淳

 高分子複合材料のシンポジウムは1、2日目に開催された。
 1日目の午前中はセッションD1が行われた。セッションD1-1「破壊と疲労」では3件の一般講演と2件の招待講演が行われた。東京大学大学院の金原教授はグラファイト/エポキシ積層材の強靱化機構について、台湾の国立成功大学の呉教授は積層炭素繊維複合変性エポキシ樹脂の破壊機構に関する招待講演を行った。セッションD1-2「加工」では1件の一般講演と1件の招待講演が行われた。韓国科学技術庁のJun博士は韓国政府の条約締結のために会議には出席できず、高性能RTM技術に関する講演を釜山大学のHa教授が代読した。
 午後にはセッションD2(ポスター発表)とセッションD3が行われた。セッションD2では11件のポスターが発表された。ポスターの内容は複合材料全般に渡っていた。セッションD3-1では「界面」に関連した2件の招待講演と、1件の一般講演が行われた。シドニー大学のMai教授は積層複合材における界面の残留特性に及ぼす影響について、香港科技大学のKim博士は炭素繊維強化複合材料の衝撃特性の超音波顕微鏡などを駆使した定量的評価法について招待講演を行った。セョションD3-2「新しい解析法」では2件の招待講演と2件の一般講演が行われた。ベルギーのUniversite de Mons-HainautのLeclere博士は走査フォース顕微鏡による導電性複合材料の微細構造解析と導電特性に関する興味深い研究成果を、神戸大学の中前教授は複合材料中の残留応力のX線解析法に基づく評価について講演した。セッションD3-3「表面修飾」では一般講演が4件行われた。
 2日目のセッションD4では「ナノ複合材料とポリマーブレンド」に関する3件の招待講演と4件の一般講演が行われた。京都大学大学院の中條教授は水素結合を利用した有機-無機ハイブリッドと多孔質材料の調製、釜山大学のHa教授はポリイミド/シリカのナノ複合材料の構造と物性、台湾の国立清華大学のMa教授はポリマーブレンド中での水素結合と凝集構造の関係について講演を行った。2日目の午後にはセッションDのポスターセッションが行われ9件のポスター発表が行われた。いずれのセッションも会場は満席で熱のこもった議論が最後まで行われた。
 このシンポジウムの研究発表の一部はComposites Science and TechnologyおよびComposites Interfacesの特集号として出版される予定である。

シンポジウムF 多孔体材料の可能性について
 長岡技術科学大学教授 石★幸三

 新素材開発の気運が高まる中でさまざまな機能を持つ材料が生まれつつあるが多孔体材料もその一つである。気孔も持つ多孔体には閉気孔と開気孔なるものがある。閉気孔性の多孔体は低比重構造部材や断熱、吸音材として用いられ、開気孔性のものはフィルター、接着剤、バイオリアクターの担体、触媒、ガスセンサーなどに用いられている。セッションFにおいてもこのようなさまざまな多孔体の需要分野に対応するべく熱いディスカッションが繰り広げられた。構造材料としての多孔体の強度向上についてやガスセンサーなどの機能材料としての応用分野での有意義な討論が印象的であった。セッションFの発表会場は別館での開催であったにもかかわらず会場には常に熱い討論が絶えなかった。このような真剣なディスカッションの中から機能性材料としての多孔体の可能性が広がっていくものと信じてやまない。各研究者の方々の発表内容は鋭い視点から材料をとらえ、著者が思いもしない観点から多孔体材料をとらえ日々、研究なさっている姿勢には感服する次第である。特にこのMRSのシンポジウムは各研究者の方々のバックグラウンドが非常に広い学会であると思われる。当然セッションFの多孔体材料についてもさまざまな角度からの研究報告がなされていることにもうなずける。非常に優秀な頭脳が各分野、世界中から集まった価値ある学会であったといえるのではないだろうか。会場設営についてはセッション会場の表示が非常にわかりにくいところがあったように思える。もっとはっきり大きく掲示していただければ別館のほうで迷う参加者もいなかったのではないかと思う。また本部、受け付けが2階に設置されていたが可能であったならば1階正面入り口付近に設置していれば参加者にとってわかりやすくかつスペース的にもゆったりとれたような気がする。
 

シンポジウムG 21世紀の高温超伝導体
 東京工業大学応用セラミックス研究所教授 山内尚雄

 平成9年9月17日(水)千葉県幕張において、IUMRS-ICA、Symposium Gが開催された。高温超伝導体の基礎から応用に関する研究成果を中心に、口頭発表19件、ポスター発表18件が公表された。これらの発表に対して活発な質疑、応答が行われた。
 RE-123の臨界電流密度のピーク効果についての研究が発表された。超電導工学研究所のShiohara博士より、相分離による非化学量論組成の部分が低Tc相として分散されているため、ピン止め中心として働いているのではないかとの報告があった。また、東京工業大学のSuematsu博士より、酸素欠損によるピン止め中心の可能性が報告された。また、超電導工学研究所のMuralidhar博士より、Gdドーピングがさらに高いピーク効果を引き起こす例が報告された。また東京工業大学のPetrykin氏は、La-123で酸素量が多い試料にも正方晶が存在することを報告した。これらの微構造変化によりRE-123にピーク効果が観察されるのではないかとの討論が行われた。National Tsing Hua大学のWu教授から、Pr-247の合成と磁性についての発表が行われた。 Bi系超伝導体のワイヤーへの応用についての研究も発表された。Argonne国立研究所のBalachandran博士から、アメリカでのワイヤーの開発状況が、金属材料技術研究所のKitaguchi博士から、マグネットへの応用が、金属材料技術研究所のMaeda博士から、V添加の効果が報告された。
 Young Researcher Awardは、シンポジウムチェアの採点の結果、山口大学のKanaya博士、ならびに東京工業大学のPetrykin氏に送られることが決定した。夜のポスターセッションの席上表彰式が行われ、賞状ならびに副賞が両人に授与された。
 

シンポジウムH イオン・レーザービームによる材料創製と改質
 京都大学工学部教授 山田 公

 本シンポジウムでは、21世紀に向けてのイオン注入プロセスの新展開について、あるいは次世代半導体デバイスの開発や新材料の創製に要求される新しいプロセスについての研究成果が発表された。また、種々のイオンビーム及びレーザービームを用いた材料創製、加工、表面改質の最新の研究成果が発表された。発表は、16日から18日の3日間、行われた。発表論文は、109件であった。国別には、日本63件、米国8件、カナダ2件、フランス1件、ドイツ1件、イタリア2件、チェコ1件、ロシア2件、中国24件、韓国1件、シンガポール2件、インド2件であった。その中で、招待講演は、日本12件、米国6件、フランス1件、ドイツ1件、イタリア1件、チェコ1件、中国1件、シンガポール1件の合計24件であった。また、ポスター発表は40件で、Late News3件と併せて、17日の夜に発表された。なお、出席者は約120名であった。
 16日の発表では、開会の挨拶も兼ねて、I. Yamada(Japan)がイオンビームプロセスの現状と将来展望について基調講演を行った。引き続いて、本シンポジウムのトピックスである「Advanced Ion Implantation Processes for ULSI」のセッションで、N.W.Cheung(USA)が次世代半導体への応用としてプラズマ・イマーション・イオン注入の最近の成果について招待講演を行った。本セッションでは、国内外の半導体メーカー各社(順不同:松下電器、三菱電機、富士通、日立、東芝、日本電気、日新電機、住友イートンノバ、アプライドマテリアルス、バリアン)が、それぞれの立場から21世紀に向けたULSI用イオン注入の展開について発表し、活発な議論が行われた。
 17日の発表では、イオン・プラズマプロセスの応用として、L.E.Rehn(USA)がポリマー中におけるナノ・サイズの金属粒子の拡散の問題について、またR.C.Birtcher(USA)がイオン照射によって誘起される金属粒界の変動について、それぞれ招待講演を行った。さらに、J.Musil(Czech)が薄膜形成におけるマグネトロン・スパッタリングの現状と展望について招待講演を行った。その他、金属や有機物表面の改質や高機能化など、興味深い研究成果について発表が行われた。午後からは、レーザープロセスについての発表が行われた。E.Fogarassy(France)がレーザーとイオン注入とを併用して作製し
たSiの2元および3元化合物の成長過程や特性評価について招待講演を行った。また、Y.F.Lu(Singapore)がレーザークリーニングの基礎と応用について招待講演を行った。
 18日の発表では、本シンポジウムのもう一つのトピックスとして取り上げられた「Non-Equilibrium-Processes」のセッションが話題を集めた。超高密度、超高エネルギープロセスは従来の熱的、化学的平衡プロセスでは得られない特異な照射効果があり、H.A.Davis(USA)、K.Yatsui(Japan)等、国内外の大学、国研の研究者があり、それぞれの立場からNon-Equilibrium Processesについて招待講演を行った。午後の材料改質や薄膜形成のセッションでは、F.Priolo(Italy)、S.Mantl(Germany)がイオン注入による発光デバイスの製作やSiを基礎とした材料創製について招待講演を行った。いずれのセッションでも、講演発表後、活発な質疑応答が行われた。
 35歳以下の若手研究者に与えられるYoung Researcher Awardsの受賞者には以下の3人が選ばれ、18日の最終日に会場内で表彰が行われた。Shao-Liang Cheng(National Tsing Hua University,Taiwan)、Ken-ichi Goto(Fujitsu Laboratories Ltd.,Japan)、Takaaki Aoki(Kyoto University,Japan)
 なお、本シンポジウムの論文を収録したプロシーディングスはElsevier Science S.A.から平成10年6月に発刊される予定である。また、Materials Chemistry and Physicsにも掲載される予定である。
 

シンポジウムJ フェライト
 東京工業大学教授 阿部正紀

 当シンポジウムは“International Symposuim on Ferrites in Asia '97(ISFA'97)”と題し、独自のCall For Papersをアジア圏外の国々をも含め広く配布して宣伝に努めた。その結果、次表に示すように、最遠隔のイスラエルを含めアジア圏の7ケ国から144件、アジア外の4ケ国から9件、合計153件の論文発表が行われた(キャンセルは20件であった)。

発表件数
アジア地域
日本            104
インド           17
韓国             12
中国              5
イスラエル        3
台湾              2
シンガポール      1
計              144
アジア外地域
アメリカ          6
オーストラリア    1
ブルガリア        1
ドイツ            1
計                9

 今回のシンポジウムの目玉として開かれた“Present and Future of Magnetics Industries/Research in Asia”と題する特別セッションでは、インド、オーストラリア、韓国、日本からの招待講演者により、各国における磁性材料関連の研究開発と工業の現状と将来展望が紹介され、活発な議論がなされた。この特別セッションのみならず、他のセッションでも“環境対応フェライト技術”が特に海外からの参加者の注目を集めた。技術革新、経済的効率よりも、差し迫っている有害物質規制に対応するとともに、環境保全という大義を達成していくかが、すでに各国企業の今日的課題になっていることを痛感させられた。
 そのほか今回のシンポジウムで話題をよんだトピックスには次のようなものがある。
 ・フェライト薄膜媒体を用いたコンタクト磁気記録(ヘッド媒体間のフライング高を極限のゼロにした究極の記録方式)
 ・フェライトを用いた太陽光/化学エネルギー変換
 ・フェライトコート微小球の生物・医学的応用
 ・フェライト石器の分析による古代文明の考古学的研究
 ・EXAFSによるフェライト中のイオン分布の解析
 本シンポジウムのオーラル会場には、収容定員900余名というとてつもなく大きなホールが割り当てられた。出席者は100〜150名と予測されていたので、いかなるものかと懸念された。しかしふたを開けたみると、常時100名程度の出席者がゆったりと分散して座り、パラレルセッションがないこともあって落ち着いた雰囲気のうちにエンジョイしているようであった。また軽食つき、3時間のポターセッションも、磁性関係の学会では異例のこととして懸念したが、これもゆったりとしていた(時間的に)ために、むしろ好評であった。
 

シンポジウムK セラミックス材料の界面
 神奈川工科大学工学部教授 伊熊泰郎

 シンポジウムKではInterfaces of Ceramic Materials:Impact on Processing and Propertiesという題目で17日、18日の2日間セラミックス材料の界面に関する研究発表を行った。発表件数は口頭発表が32件、ポスター発表が26件あり、発表者の国は日本、韓国、中国(香港を含む)、スリランカのアジアの国々とアメリカ、オーストラリア、ロシア、ドイツ、ユーゴスラビア、ポルトガル、オーストリアと11カ国に及んだ。Invited speakerには界面の基礎的な構造関係でCarpenter氏、Bando氏、2相界面関係でKim氏、ZrO2関係でDrennan氏、焼結でJohnson氏、粒成長でBaik氏、電極関係でNiwa氏に各部門の代表的な講演をしてもらい、その後、関連ある発表及びポスター発表が続いた。
 界面はセラミックス材料のプロセシングだけでなく、その特性にも強く影響を与える。しかも、セラミックスには電気的特性、磁気的特性、機械的特性、光学的特性などいろいろな特性を生かすものがあるから、本シンポジウムで扱われた材料はアルミナ、ジルコニア、チタン酸バリウムなどの酸化物から、窒化ケイ素、サイアロンなど多種多様に及んだ。これらを電子顕微鏡による観察の立場、固体燃料電池、電極材料などを利用する立場、あるいは焼結、粒成長、拡散、超塑性などの現象からの立場で発表があった。口頭発表では活発な討論が繰り返され、時間がオーバーすることも度々であった。ポスターセッションはほぼ9発表ずつ3回に分けて行われた。このため参加者にとっては2日間ほとんど休みがないという状況になったが、ポスター発表を全てゆっくりとみることが出来たし、また充分に討論がなされている光景が見られた。
 シンポジウムKでも若い研究者の発表もあり、口頭発表で4件、ポスターで4件の発表がYoung Researcher Awardに応募された。北海道大学の島田先生、Northwestern Univ.のJohnson先生、ANSTOのNowotny博士の3人でこれらの発表を丁寧に審査して頂き、口頭発表では発表内容もさることながら英語を話さない国で英語を勉強したにもかかわらず上手に発表していたという評価を受けて、京都大学のYoshiyaさん、ポスターでは発表の内容のみならず理解度の点から名古屋工業技術研究所のWatariさんがそれぞれ選ばれた。以上の2人だけでなく他の人たちも優秀な発表であったと聞いている。みなさんの今後の発展を期待します。
 このシンポジウムの発表者、座長、オーガナイザーの方々に感謝します。この他にも陰でサポートして下さった方々の協力なしではこのシンポジウムは成立しなかった。経済的サポートをしていたたいた数々の会社の方々、事務処理を手伝って頂いた島田、山本両博士及び研究室の皆さんに感謝します。
 
 

シンポジウムL 新材料と加工からみるMRS
 長岡技術科学大学教授 石★幸三

 セッションLの内容としては硬脆性材料であるセラミックス等の加工工程に必要不可欠な砥石の開発と評価についての熱い討議がなされたり、さらにはパルス通電加圧焼結(PECS)法を応用した材料作製についての興味深いディスカッションが繰り広げられた。砥石による研削加工がシンポジウムLのテーマになっている背景として、多くの産業分野において硬ぜい性材料であるガラス、ファインセラミックスなどの高能率高精度研削加工が望まれている。現在は加工コストが金属材料より高くなってしまうため商業的利用の妨げになっている。そこで硬ぜい性材料であるセラミックス等の加工コストを低減すべく高能率加工ができ、高精度な加工ができる砥石の開発が材料開発の舞台に待たれている。セッションLに参加なされた方々は材料開発のスペシャリストの方から加工のスペシャリストまでと幅広い研究者の皆様であった。砥石の開発にあたってはPECS法を用いたものを数多く報告され、加工分野だけでなく材料開発と加工技術がうまく融合されたセッションであったと感じる。セッションチェアマンとして特に印象に残った事柄はPECS法が新しい焼結方法であるため焼結過程において不明な点が多々あり、それらの原因の究明について各研究者の方々が真剣に取り組み、解明しようとなさっている様子が非常に印象的であった。セッションLはメイン会場から一棟となりの会場での開催であったため、参加者の来場に不便な部分があると危惧したがセッションの中でのディスカッションを見る限り取り越し苦労であったと思われる。会場設営について、セッションLだけではないが案内表示の不備がみられ、来場者にとっては多少戸惑いがあったのではないかと感じた。セッションの中で繰り広げられた熱いディスカッションを見る限り今回千葉・幕張で開催されたMRSシンポジウムは大成功であったと思われる。
 

シンポジウムM 高機能無機材料のためのソフト溶液プロセス
 熊本大学工学部教授 松本泰道

 シンポジウムM、「高機能無機材料作製のためのソフト溶液プロセス」、は会議の後半2日間にわたってオーラルとポスター発表にて行われた。発表件数は約80件で、これらは電気化学プロセス、ゾル-ゲルプロセス、水熱プロセス、薄膜製作、微粒子作製に分けられた。この分野は、低環境負荷と低エネルギー負荷を目指した溶液プロセスという意味で、世界中で見直されている注目分野といえる。この分野をこのIUMRSで取り上げた意義は大きい。招待講演者は7名で、いずれもこの分野で優れた研究を行っている研究者である。その中で、Swizerは、電気化学プロセスの振動現象を利用して容易に銅/酸化銅のナノ層状構造材料を作製したことを報告した。さらにこの新材料が電子のトンネル移動現象を示すことを見出した。彼の研究は、無機材料作製に電気化学プロセスがいかに多くの可能性があるかを示している。八尾は、室温の溶液からペロブスカイト酸化物の直接結晶化に成功した。この驚くべき結果は、出発物質としてあらかじめ高温で合成したペロブスカイト酸化物をフッ酸に溶かすことによって得られており、溶液中に既にペロブスカイト類似の複合イオンが形成していることを暗示しており、溶液プロセスのおそるべき可能性を示している。
 一般発表の中にも、多くの優れた研究が発表されたが、その中で以下の3件がYoung Researcher Awardsとして選ばれた。SuchanekはTi板を電極として電解液を交互に換えながらBaTiO3とSrTiO3からなる層状膜作製に成功した。Vertegelはイオン交換樹脂を用いることにより溶液からの微粒子の直接合成に成功した。守岡は亜鉛の層状水酸化物の層間にイオン交換反応によって有機化合物を入れ換えることに成功した。
 このシンポジウムのProceedingsはJournal of Materials Researchの特集号に掲載されることになっている。このため55件の論文が提出されているが、特集号の制限されたページ数のため、約30件程度しか掲載できず、厳しい審査となっていることを付け加えておきたい。
 

シンポジウムO ナノ材料
 東北大学金属材料研究所教授 井上明久

 シンポジウム:O「ナノ材料」は9月17日15:00〜18:00と9月18日9:00〜18:00の2日間にわたって行われた。発表件数は招待講演10件、一般の口頭発表21件、ポスター発表16件であった。参加総数は約50名と必ずしも多くはなかったが、講演者の国籍は多岐にわたり、スウェーデン、イギリス、ドイツ、フランス、ロシア、インド、中国、韓国、米国、日本の10ヵ国にも及び、IUMRSの名の通り国際会議の面目を保っていたと思っている。このシンポジウムの内容は、金属、半導体、セラミックスの組織のナノメー
トルスケールへの微細化により社会に役立つ高機能材料を開発するための材料科学的知見に関する学術講演と意見交換を図ることを目的としている。招待講演者と講演内容を簡単に紹介すると、(1)スウェーデン、ストックホルム工科大学のRao教授は、スウェーデンでのナノ材料研究の現状を簡単に紹介した後、Nd-Fe-Al系バルクアモルファス合金の30Tの強磁場中での磁気的性質について、4Kでの低温、強磁場中でバルクアモルファス合金のナノスケールでの構造ゆらぎに起因する異常現象を見出した結果を報告した。(2)フランス、グルノーブル研究所のYavari博士はAl-Ni-YおよびFe-Zr-B系合金を例として、アモルファス相からのナノ結晶組織の生成機構と安定性を溶質元素の再分配、界面濃化現象と熱力学の観点から検討した結果を示した。(3)米国、カーネギーメロン大学Laughlin教授はナノ粒径のCo単結晶粒子をカーボン膜で被覆したナノ複合体が高いキュリー温度をもつユニークな磁気的性質を示し、高温用記録媒体として期待できることを示した。(4)東北大学金属材料研究所の井上教授は特別な条件を満たすバルクアモルファス合金を部分結晶化することにより、ナノ結晶組織が生成し、アモルファス単相バルク材に比べて約20%高い引張強度を示し、残存アモルファス相を含む高強度バルク合金として発展できる可能性を示した。(5)イギリス、ケンブリッジ大学のGreer博士はAl基アモルファス合金の部分ナノ結晶化で得られるfcc-Al+アモルファス複相合金が高硬度、高ヤング率、高耐摩耗性などの優れた機械的性質を示し、ナノ結晶化が高強度化に有効であることを報告した。(6)大阪大学産業科学研究所の弘津教授は高分解能透過電顕イメージプレーティング法を用いてPd75Si25アモルファス合金の構造を解析し、アモルファス相中には六方晶Pd2Si相構造に類似した中距離秩序構造が発達していることを示した。(7)金属材料技術研究所の宝野博士は3次元原子プロープ電界イオン顕微鏡を用いることにより、急速凝固したAl-V-Fe合金中のナノ粒径fcc-Alとアモルファス相の混在組織中の元素分布の詳細な解析結果を示すと共に、その生成過程を提唱した。(8)インド、科学技術大学のRenganathan教授は非固溶系の合金で、原子半径差によって第2相の析出形態や析出挙動が異なることを系統的に明らかにした結果を報告した。(9)大阪大学工学部の永井教授は、メカニカルアロイング法を用いることによりFeSi2合金においてナノ結晶組織を生成することが出来、それらが優れた熱電素子特性を示すことを報告した。(10)住友特殊金属の上原博士はFe-Nd-B-Co-Gaアモルファス合金を結晶化して得たナノ粒径のFe3B+Nd2Fe14Bの混相材が交換磁気結合によ
り優れた磁石特性を発現することを示した。これらの招待講演のほかに、一般口頭発表やポスター発表にも優れた研究成果が報告され、これらの発表者の中から35歳以下の研究者に与えられるYoung Researcher Awardが金材技研の大沼博士、大阪大学のBian氏、アルプス電気の小柴氏、YKKのBuchler博士、科学技術振興事業団の若山博士に授与され、盛況裡に本シンポジウムを終了した。
 

シンポジウムQ 薄膜
 名古屋大学大学院工学研究科教授 高井 治

 現在、いろいろな種類の薄膜が各種製品に使われており、薄膜は産業界において重要な材料となっている。薄膜はその薄さから省資源の材料であり、薄膜関連技術は、これからの省資源、省エネルギーなど環境問題にも関連し、今後その重要性を増すと考えられる。これらのことを反映し、本シンポジウムではいろいろな薄膜についての発表があった。
 本シンポジウムは丸2日間行われ、Q1からQ8の八つのセッションを設けた。このうち二つのセッション(Q3とQ5)がポスターセッションであった。口頭発表のセッションは、主として取り扱う薄膜の材料によって分類した。各分野での発表件数を以下に示す。
  分野               口頭発表    ポスター発表
半導体薄膜               11           4
酸化物薄膜               13           5
硬質薄膜                 10           3
有機薄膜                  5           1
金属薄膜                  3           1
コンピュータ            3           2
 シミュレーション                   
 合計                    45          16
 総計61件の発表であった。当初の発表申し込み件数82件から、21件減少した。発表取り下げが間際にあったりして、いろいろ考慮して作成したプログラムにも穴が開き、参加者には不便をおかけした。
 参加者は約120名であり、口頭発表には多くの参加者から、熱心な討議が行われた。発表者の国は、日本、中国(含む香港)、韓国、台湾、インド、ブラジル、ベトナム、タイなどであった。
 Young Researcher Awardは、ポスター発表の、Hei Wong氏(Q5.14)、Kazuo Ikuta氏(Q3.4)、Katsuhide Kawamata氏(Q3.9)の3名に贈られた。
 なお、本シンポジウムのプロシーディングスは、Thin Solid Filmsの特別号として、来年4月頃に刊行する予定である。
 参加者ならびにご協力いただいきました皆様に深く感謝申し上げます。
 

シンポジウムR ペロブスカイト関連酸化物??作製、物性と展望
 東京工業大学応用セラミックス研究所教授 伊藤 満

 各プロシーディングスは各シンポジウムで発行するという厳しい注文のもと、シンポジウムの赤字をいくらに設定するかに頭を悩ませながら準備を進めた。予備調査の結果、プロシーディングスを発行するなら発表したいという希望が多かったため、Solid State Ionicsの特別号として発行の仮契約をすませた後、参加申し込み受付を開始した。講演募集はシンポジウムの性格上、固体物理、化学、材料の3分野が関連分野なので、これら分野の研究者にお願いすることも考えたが、チェアのオーバーロードも考えた結果、固体化学、材料関係に絞って案内状を送付した。申し込みは合計94件であった。登録費は外国人招待講演者をも含む全員に支払っていただくという厳しい条件下でプログラム編成を行った。申し込み後のキャンセルが見込まれる、外国人を中心とするいくつかの講演はあらかじめポスターセッションに組み込んだ結果、口頭発表における当日のキャンセルはゼロ件に抑えることができた。
 東京工業大学の鯉沼秀臣教授の招待講演から始まり、昼食の1時間を除いて延々と夕方6時まで27講演が続いた。シンポジウムに割り当てられた78名収容の部屋は2日間を通して終始50名程度の聴衆が入り、各講演が終わるごとに数名程度が入れ替わり、聞きたい講演を一覧表にして各シンポジウムを移動するという光景が続いた。
 プロシーディングスの原稿も60件以上集まり、最初予定していたページ数をほぼ埋めることができた。
 参加者の感想はシンポジウム後、電子メール等で寄せられたが、いずれも好評で、これまでの学会にないInterdisciplinaryなシンポジウムであったとの講評が大半であった。第1日目夕方行われたポスターセッションは、10件程度のキャンセルがあったが、比較
的ゆったりとしたもので、夕食を携えての議論も8時半過ぎまで続いた。
 惜しむらくは外国からの参加者、特にインド、中国、ロシア、バルト三国からの参加者の大半に旅費あるいは参加費補助ができず、欠席となってしまった。もしこれらの補助をしていれば、プロシーディングスの出版もままならなかったという現実との二律背反に悩む次第である。
 

シンポジウムU 半導体の進展
 京都大学工学研究科教授 藤田茂夫

 今回の会議のシンポジウムUについての概要その他を気がつくままに述べたい。このシンポジウムUの主題は、「Advances in Semiconductors」であって、Si関連材料、化合物半導体関連材料の結晶成長、プロセス、物性、デバイスにおける最近の進展に鑑み、国内外の研究者を一同に交え研究発表、討論、意見交換を行う目的で設定されたものである。ところが、この会議の日程と内容が浜松で開催の応用物理学会主催の国際会議固体素子材料会議(SSDM)と重なったために、日本側のチェアを依頼されたときから論文が集まるかどうか非常に不安であった。そこで、私にできることとして、単にFirst Circularを送付するだけではなく、身の回り、関連する研究を行っているところに電話をかけまくり投稿依頼をしたのである。ようやく30編以上の論文を集めることができ、規模は小さいながらも招待論文5編、口頭発表論文12編、ポスター論文13編を含めて一日間のシンポジウムを開くことができた。その国別内訳は、日本11編、韓国12編、台湾5編、インド1編、ウズベキスタン1編であった。Siおよびその関連材料に関してはこのシンポジウムのチェアの一人である韓国Seoul National UniversityのKim教授、台湾のNational Tsing Hua UniversityのChen教授の大変な努力によっている。韓国や台湾の貢献が大きかったのはこれらの教授の熱意によるものである。化合物半導体関係は日本の寄与が80%にもおよんでいる。私自身が投稿依頼をしたことにもよっているが、内容的に見れば、アジアにおけるこの分野での日本の先導的な役割を反映しているものと受け止められよう。とくに、名大・竹田美和教授のX線CTR散乱と干渉によるヘテロ界面の微視的評価、理化学研究所・田中悟氏のGaN系量子ドット形成機構に関する二つの極めて流暢な英語での示唆を含む興味深い招待講演によって、会議が相当引き締まったことを述べておきたい。学生も多く参加していたが、背景や位置づけ、研究結果の分かりやすい説明など大きな勉強になったのではないかと思っている。
 最後に、海外からの参加者に対する入国査証の件、費用援助の件の他、この種の会議につきものの事務的な仕事は、予想外に大きく私自身の肩にのしかかったが、このシンポをとにかく成功裏に開催できたのも、本会議委員長の東京工業大学吉村昌弘教授と吉岡洋子さんを始めとするスタッフの方々のお陰であり、記して深甚なる謝意を表したい。


■ IUMRS-ICA総会報告

IUMRS-ICAミーティング
 IUMRS-ICA-97の2日目、9月17日18時からOVTA会議室においてIUMRS-ICA構成各国MRSの代表が集まり山本良一日本MRS会長の司会で総会が開催され、ICAの今後の活動方針、Meeting日程につき意見交換・調整が図られた。

IUMRS-ICA日程:
1998年10月13−16日、インド・バンガロール
2000年、中国・香港

IUMRS-ICAM日程:1999年5月30日〜6月4日、中国・北京

IUMRS-ICEM日程:1999年8月24〜29日、韓国・済州島

参加者:(Chinese MRS)Y.F. Han, C.G. Li,H.D. Li,(MRS Taiwan)G.C. Chi, T.B. Wu,L.J. Chen,(MRS Korea)M.C. Chow, S.J. Park,(MRS India)S. Ranganathan, K.V.Reddy, C.M. Srivastava,(日本MRS)山本良一、吉村昌弘、梶山千里、堂山昌男、縣 義孝、(IUMRS)R.P.H. Chang


■ 研究所紹介

The Max-Planck-Institut fu★r Metallforschung in Stuttgart, Germany
???? a brief presentation ????
Director of Special Research, National Research Institute for Metals, Prof. Si egfried Hofmann

1. Outline and History
  The Max-Planck-Society for the promotion of sciences (Max-Planck-Gesellsch aft (MPG) zur Fo★rderung der Wissenschaften) was created in 1947 in Go★tting en as the legal successor of the Kaiser-Wilhelm-Gesellschaft which was founded in 1911 and dissolved in 1946 after the end of the second world war.The basic princip les of the non-profit research organization have been retained,including the c reation of a research institute around an eminent scientist and to give him/he r as much freedom as possible for research.Basic funding is by about 90% given by the federal and state governments without having direct influence on resea rch topics.Today,the Max-Planck Society,with a total staff of about 11,000 emp loyees (3,000 of them are scientists),operates 75 institutes which cover almos t any branch of sciences−including humanities−with emphasis on fundamental r esearch.Usually,the institutes are run by a board of directors (with a managin g director position rotating with a 2-3 years period).The directors are appoin ted to so-called scientific members of the MPG by the self-administration body .In addition to the staff employees there are about 5,500 temporary guest rese archers,almost half of the number are from foreign countries.
  The ?Max-Planck-Institut fu★r Metallforschung? (MPI for Metals Research ) is one of the oldest institutes of the MPG,first founded in 1921 in Berlin w ith the name of ?Kaiser-Wilhelm-Institut (KWI) fu★r Metallforschung.? Close d in 1933 as a result of the economic depression it was reopened in 1934 near the city center of Stuttgart.After having been destroyed by air raids during t he second world war,it was quickly rebuilt thereafter and had its first main e xtension in 1959 when the building of the ?Institut fu★r Sondermetalle? (In stitute for Special Metals") was opened with Prof.Erich Gebhardt as its direct or.Under his leadership,this part of the MPI fu★r Metallforschung,which focus ed its research activities on nuclear reactor and refractory metals and their reactions with gases (?gases in metals?),created several highly specialized laboratories,e.g.the ?Laboratory for High Purity Metals? in 1967,and the ?Powdermetallurgy Labor atory? in 1968,which was the nucleus of the ?Laboratory for Ceramics Researc h?,the largest of its kind in Germany.
  Depending on the appointment of new directors,the Max-Planck-Institut fu★ r Metallforschung had some change and renaming of subdivisions (?institutes? ).From 1973 to 1996 the two autonomous parts were the ?Institut fu★r Wekstof fwissenschaft? and the ?Institut fu★r Physik? which were unified in 1997,a nd these names were abolished.
  On the occasion of the 75th anniversary of the Max-Planck-Institut fu★r M etallforschung in 1996,an excellent historical review by Prof.Manfred Ru★hle, the present Executive Managing Director,appeared in the ?Zeitschrift fu★r Me tallkunde?(vol.87,816-826,1996).
  Figure 1 shows the building complex of major parts of the MPI fu★r Metall forschung (MPIM) (Inst.f.Physik and Pulvermetallurgisches Labor of the Inst.f. Werkstoff- wissenschaft) together with its sister institute,the Max-Planck-Ins titut fu★r Festko★rperforschung (solid state research,founded in 1969).
  Today,the MPIM has 230 permanent employees,of which 70 are scientists.In a ddition,there are about 30 contract researchers,70 guest researchers (postdocs ,fellowships,most from other countries),and about 100 doctorate students.The p resent six directors are at the same time professors at the University of Stut tgart.

2. Research Fields
  The main fields of research include the following topics:
1.Structure and bonding in the solid state
2.Constitution and thermodynamics of alloys
3.Metallography
4.High-Purity Materials; preparation,characterization and properties
5.Interaction of metals with gas atmosphere
6.Surfaces and interfaces
7.Radiation damage and lattice defects
8.Solidification,phase transformation and precipitation processes
9.Amorphous and molten metals and alloys
10.Mechanical properties
11.Microstructure mechanics
12.Metallic high-performance materials
13.Powder metallurgy and ceramics
14.Ceramic high-performance materials
15.Composite materials
16.Transmission electron microscopy studies of materials
17.Micromaterials and electronic materials

  Figure 2 shows a survey of the main research fields of the MPIM from a vie wgraph of a lecture given in 1995 by Prof.G.Petzow,director of the Laboratory for Ceramics at MPIM.Somehow typical for fundamental research,materials theory is at the center focus,surrounded by the three main fields of materials synth esis (constitution and thermodynamics),characterization (chemistry and structu re on the atomic scale) and properties (in relation to microstructure and chem ical composition).The outer circle of more special research topics represents those of current (and future) directors at the MPIM.
  Within the major fields,the most important themes include the following:
  In the field ?Materials Synthesis,Constitution and Thermodynamics? a lar ge amount of work is done on thermodynamic determination of phase equilibria,i n multinary systems,thermodynamics of ordered and metastable phases,computer c alculation of phase diagrams,preparation of high purity and doped metals and a lloys,preparation of single crystals,foils,powders and thin films by means of zone melting,electrolysis,evaporation and sputtering in UHV.
  Rapid solidification and amorphous materials,mechanical alloying,superallo ys,oxide-dispersion -strengthened (ODS) alloys and intermetallics are studied. Powder metallurgy,sintering mechanisms,structure of tungsten-based heavy metal s and of beryllium and its alloys,SmCo and NdFe-based hard magnetic materials, ceramic materials such as aluminium and silicon nitride,and ceramic high-Tc su perconductors are among the materials most extensively subjected to the evalua tion of structure-property- relationships.
  In the field ?Characterization?,chemistry and microstructure,their inter dependence and effect on certain properties are studied on the atomic scale.Re action kinetics of metals with gases and with carbon(H,N,O,C),thermodynamics a nd constitution of the binary and ternary systems as well as sulfidation and o xidation were extensively studied since the mid sixties.
  Surfaces and interfaces,particularly segregation and distribution of forei gn atoms and their quantitative analysis by electron spectroscopy (AES,XPS) an d depth profiling by ion sputtering are major topics.For example,these methods are used to disclose the monolayer chemistry of passivated alloys in corrosio n studies and of oxidation layers formed at high and low temperatures.Structur e of grain and phase boundaries in metals,ceramics and metal-ceramic composite s are studied with high resolution transmission electron microscopy.Determinat ion of local chemical composition is done by analytical electron microscopy.
  Radiation damage and lattice defects causing anelastic or magnetic relaxat ion,internal friction as well as stress induced phase transformation,continuou s and discontinuous precipitation,and diffusion-induced grain boundary migrati on are other important topics.
  The field ?Properties with Relation to Microstructure and Chemistry? inc ludes fundamental studies on plastic deformation of bcc and hcp metals.Strengt h,deformation and fracture are studied by tensile strength,fatigue and creep e xperiments,completed by lifetime prediction and computational analysis of mech anical properties,e.g.,by finite element methods.Correlation between microstru cture and composition of layered and particulate composites and of hard coatin gs,analysis of internal stresses and microcracking in ceramics are further top ics studied.

3. Examples of Research Work
  Although it is impossible here to present specific research activities of the MPIM in detail (abstracts of papers and research reports in English are co mpiled in the yellow A5-size volumes ?Mitteilungen aus dem Max-Planck- Instit ut fu ★r Metallforschung?),a few brief examples of the field of surface and interf ace research,which is one of the key issues in advanced materials science and technology,will illustrate the activities:
  Starting in 1972 with the first Auger electron spectrometer in a materials science institute in Germany,the group on Applied Surface and Interface Analy sis in the Laboratory of High Purity Metals of the MPIM has since then,in clos e cooperation with researchers from many countries,considerably contributed to understanding the microchemical behaviour of surfaces and interfaces on the n anometer scale,mainly by applying Auger- and photoelectron spectroscopies (AES and XPS).Already in 1974,a characteristic,Mg or Al containing oxide phase of about 3 nm thickness at the grain boundaries of hot pressed Si3N4 was determin ed by in-situ grain boundary fracture studies with AES.Ten years later,the res ults were confirmed in much more detailed studies with high resolution and ana lytical transmission electron microscopy (TEM). Studies of thermodynamics and kinetics of surface segregation(O on Nb,Sn on Cu ,S on Cu,In(S) on Ni,B on Ni3Al) and grain boundary segregation (Ni(Fe,O,C) in W,S in Ni,In in Ni,Si,P,C,in Fe,B in Ni3Al,Sb,S in Ni,Ni in NiAl,Bi in Cu),ha ve led to the pacemaking method of using surface segregation for quantitative determination of diffusion constants down to 10-22 ?/s,and to a patent on cle aning of metal foils below the recrystallization temperature by combining segr egation with sputter removal.   Among the main topics covered by applied surface analysis are studies of a queous corrosion of stainless steel and oxidation of Fe-Ni-Cr alloys,of Ni3Al and of nitride coatings,interfacial reactions in layered thin film structures and basic work on high resolution sputter depth profiling.
  As an example of research results on grain boundary segregation,Fig.3 show s the first experimental grain boundary diagram,obtained in 1992 for Fe- 3.5 a t% Si bicrystals with low content of phosphorus and carbon. To determine the g rain boundary composition,the bicrystals were fractured in an AES instrument a nd the generated fracture surfaces were analyzed.From a study of some hundred samples with different grain boundary orientation (symmetric tilt boundaries a round the [100] axis) and annealed at different temperatures,a detailed pictur e of the segregation enthalpies of Si,P and C in alpha-iron as a function of t he orientation of tilt boundaries was obtained as shown in Fig.3. Together wit h the maximum solubility parameter,−[TlnX*]max, this diagram can be explaine d assuming the segregation enthalpy to be a linear combination of a structural term (see the ?cusps? at certain ?special? orientations in Fig.3) and a c hemical term (described by the maximum solubility).Further generalizations all ow a prediction of the segregation enthalpy for other alpha-iron based systems as well as extrapolations to the mechanical properties of specific boundaries .

4. Outlook to Future Developments
  Advanced materials science and technology increasingly focuses on new,comp lex materials with well-controlled,tailored properties. This fact imposes a ch allenge to materials research in basic aspects of structure and chemistry on t he atomic level,involving synthesis,characterization and theoretical modeling. To meet these demands,the MPIM has concluded to open new divisions,each heade d by a director,the topics of which correspond to the outer circumference of F ig.2.Whereas solid state kinetics thermodynamics and materials synthesis are s till the backbone of research on more complex materials,covalent and ionic-bon ded materials (i.e.,ceramics) are of increasing interest. Micromaterials in me soscopic dimensions close the gap between macroscopic and nanostructured mater ials.
  More and more basic research will aim at understanding systems far off the rmodynamic equilibrium,metastable systems and their behaviour.
  Major effort for basic research will certainly go for a better theoretical understanding of the behaviour of atoms in solids,based on applied quantum me chanics and improved mathematical methods.Collective phenomena such as magneti sm and superconductivity will be more extensively studied.The structure and co mposition of surfaces and interfaces,and any other theoretical and experimenta l aspect of micro- and nanostructures will be prevalent in future research act ivities.
  Owing to the ongoing founding of new Max-Planck- Institutes in the ?Neue La★nder?,i.e.,former East Germany,budget cuts are often severe and require a n increase in research efficiency for compensation.In particular,the managemen t system of the Max-Planck-Institutes is challenged to adapt to a more advance d and efficient style and structure.In contrast to the founding times of the K aiser-Wilhelm-Society 86 years ago,today nobody is capable of really thoroughl y knowing a major part of science,and the political conditions have changed to more democratic self-understanding attitudes in society.Therefore,it is felt that the autocratic leadership of an institute director should be replaced by more transparent management mechanisms and by transfer of responsibilities to the senior researcher level,i.e.,a middle level of independent researchers sho uld be created.This would also reduce the well-known problems with ?leftover people? after a director resigns or dies,and a related stagnant period of som etimes more than three years before a new one is appointed.
  Although international cooperation already is at a fairly high level,it sh ould be further increased by intensified cooperation with research institution s in other countries,notably by creating satellite laboratories and internatio nal research groups.Making use of worldwide growing research experiences of hi ghly qualified researchers will greatly enhance the high level of creativity n eeded to achieve an optimum research output.

Fig. 1 The buildings of the two Max-Planck-Institutes in Stuttgart-Buesnau (19 75): (a)MPI fu★r Festko★rperforschung (solid state research); (b) and c) bel ong to MPI fu★r Metallforschung,Inst.f.Physik (b) and Pulvermetallurgisches L abor (c),and common facilities are: (d) Lecture Hall; (e) Library and Cafeteri a; (f) Electron microscopes.(From Zeitschrift fu★r Metallkunde,87,822(1996) w ith permission).(The main part of the Inst.fu★r Werkstoffwissenschaft (materi als science) of the MPI fu★r Metallforschung is still on its original site in the city and not shown here).

Fig. 2 Research fields of the MPI fu★r Metallforschung (courtesy of Prof.G.Pe tzow)

Fig. 3 Grain boundary segregation diagram for P, C, Si in alpha-Fe showing the segregation enthalpy as a function of the boundary tilt angle around the [100 ] axis and the solid solubility parameter−[TlnX*]max.

*)About the author: Before being appointed to ?Director of Special Research ? at the National Research Institute for Metals in Tsukuba,Japan,in 1996,the author was leader of the group on ?Applied Surface and Interface Analysis? a t the Max-Planck- Institut fu★r Metallforschung in Stuttgart,Germany.He is ad junct Professor of Physics at the University of Hohenheim near Stuttgart. Correspondence: Prof.Siegfried Hofmann,National Research Institute for Metals ,Tsukuba,305 Japan.Phone: (0298)-59-2802; e-mail sieghonrim.go.jp


お 知 ら せ

■日本MRS第9回年次総会・学術シンポジウム

■日本MRS協賛の研究会等

■IUMRSメンバーMRS等のMeeting ■訂 正(Vol.9, No.3、August,1997)

編集後記

世界各国にまたがるMRSの一大事業である第4回IUMRS-ICAが、盛況のうちに幕を閉じ、関係者一同ほっと胸をなで下ろし、心を新たに次の研究展開に思いを馳せているところです。本号では、そのIUMRS-ICA報告を中心とし、材料研究の重鎮が蘊蓄(うんちく)を傾けた巻頭言とともに、さらに新しい試みとして、研究所紹介では、海外の研究所、マックスプランク研究所を取り上げてみました。後者については、和訳するべきかどうか若干の議論がありましたが、原文のニュアンスを大切にするため、英文のまま掲載することとなりました。マックスプランク機構は、我が国が現在推進している制度の多くを、ずっと以前から先取りしており、興味深い事柄が多々あります。その根底にある精神はやはり基礎研究重視にあり、物質・材料科学は最重点項目となっています。ニュース編集委員会では、並行して日本MRSの啓蒙用パンフレットを作成していますが、本学
会の独自性である、材料科学諸分野にまたがる横断的、学際的な特色を生かしつつ、縦割り的になりがちな基礎研究との整合性、あるいは時には、それを打破していく必要性などについて、口角泡を飛ばして議論をしています。本号は全体として、やや堅すぎる感じもしますが、辛抱してお読み下されば、編集委員会一同これに優る喜びはありません。 (岸本直樹)
 

平成9年度 日本MRSニュース編集委員会

委員長:山本 寛(日大理工)
委 員:大山昌憲(東京高専)、岸本直樹(金材研)、舘泉雄治(東京高専)、
    寺田教男(電総研)、林 孝好(NTT境界領域研)、藤田安彦(都立科技大)
事務局:縣 義孝(千代田エイジェンシー)、清水正秀(東京CTB)

  当誌へのどのような意見も歓迎いたします。連絡先は山本委員長までお願い致します。

 Tel0474(69)5457、Fax0474(67)9683、
E-mail hyama@ecs.cst.nihon-u.ac.jp