日本MRSニュース Vol.14 No.3 May 2002
材料と放射線計測
東京大学大学院工学系研究科・工学部システム量子工学専攻教授 中
沢 正 治
放射線計測屋からみると、材料研究を継続的にやることが可能な立場というのはうらやましいという気持ちである。計測という目的のためには、材料をガス、液体、絶縁体、半導体、超伝導体と取っかえひっかえしながら、薄く広い材料に関する知識をヒントに、探査していくたびにそのように思う。実際、ある機能を実現するための材料を、自然に与えられた材料特性として利用して実現するのみだけではなく、より積極的に人為的に付与し生成した性質として実現する方法はないものかと考える次第である。
このように、材料に密着してその特性をうまく使いこなすようなセンサーを開発構成する「材料学的センサー研究」に対し、計測器自身を組み合わせて用い、いろいろな測定上の目的を実現しようという「方法論型計測研究」の立場もあるわけである。
「材料学的な放射線計測研究」は、最近も相変わらず隆盛である。1940年代にはシンチレーション物質という新しい蛍光物質が開発されているし、1960年代には半導体による新しい検出器が出現して放射センサーの分野に革命をもたらした。現在は超伝導物質を用いた放射線計測器が、それに匹敵する性能を示すものと期待されている。つまり、超伝導型の放射線検出器は、入射放射線のエネルギーを区別する分解能に関して、従来最高といわれている半導体検出器よりも30倍も分解能がよくなるのである。X線が入ったときのピーク分布の幅が30倍も狭くなるというのは、やはり驚異的である。放射性原子核からの放射線のエネルギーに関するデータ集である「アイソトープ便覧」という本が厚さ5cmにもなったのはこの半導体検出器の出現によるものであった。これが、将来超伝導検出器になったらどこまで厚くなるのかと思われる程である。また、これは特にX線測定器として蛍光X線計測法あるいはPIXE(粒子誘導エックス線法)用の測定器として大きな威力を発揮すると期待されているところである。現在、ほとんど理想的な性能を示し始めているが、安定的な製造法に関して、まだ開発中であるので、もう少し待つとよい市販品が世に出るのではないかと考えているところである。
ガス比例検出器と同じ放射線測定器でありながら、その変形として、マイクロストリップ型(MSGC)といって1枚のガラス基盤の上に幅10ミクロンぐらいの電極ストリップを作り、その両横に100ミクロン程離れたところに、アース電位のストリップがあるという形状をくり返す電極配置の測定器も開発されつつある。これは、まさしく材料分野でよく使われているナノテクノロジーの応用であって、東京大学では、VDEC(大規模集積回路研究センター)というところに出掛けて行って作っているものである。このMSGCは、放射線イメージングセンサーとして、X線写真用のフィルムのかわりに用いることができるし、医療用以外に大型放射光装置Spring8やKEK-原研で開発されている大強度陽子加速器を用いた中性子散乱装置などでも広く利用されることが期待されている。
放射線計測屋が材料屋さんに御礼を言うべき物はさらにあって、例えば光ファイバーを用いた放射線計測分野とか、常温用半導体検出器としてのCdTeとかCdZnTeなどがある。計測屋が材料を開発したというか、材料屋が開発して計測屋になったものにイメージングプレートというBaTiO3Euのフィルム物質がある。これはレーザー光を照射すると、放射線が当った場所が発光するという勝れ物でX線フィルムのかわりに使用されたり、ラジオグラフィー用の測定器として使用されている。国産の発明品で、日本で一番よく利用されており、現在都内の病院のX線写真の半分はこれであると言われているが、この開発者に聞いてみると、開発に10年近く掛かっている。これを見ていると、計測屋にもやはり気が短い人と、材料研究屋みたいに気長に開発にがんばれる人がいるなァと思う。気の長い人がやはり材料から開発をスタートできる人であり、短気な人は計測方法論とか計測システム開発等に向いているようであり、私も自分自身では後者の人間だと思っている。
放射線計測屋の主要マーケットは、一つには原子力エネルギー利用分野、もう一つは医療診断分野であるが、その需要割合はかなり変化している。従来、原子力エネルギー利用分野は勢いがあって、新しいセンサーの開発にもかなりの投資をしていたが、最近は放射線防護用センサーが中心として開発されており、新しいセンサーには投資しなくなりつつある。一方、医療診断用の放射線計測は、CT、PETというトモグラフィー(断層撮影術)が伸び始めており、そのための放射線センサーシステムの開発が必要とされている。多数のセンサー信号を組み合わせて透過像を復原する問題は逆問題と言われており、計測上の基本問題でもあり、このテーマのみで2〜3日の国際会議が開催されている程である。この問題はむしろ数学の問題であり、材料とは全く関係しない分野かと思うが如何でありましょうか?
そのような訳で放射線計測学研究のスポンサーも原子力エネルギー分野から医療分野に移行しているが、これは最近の医工連携の動き、生体工学の新展開などによって加速されつつある。実際に、このような体内3次元計測への応用は、医療用のInterventional
Radiology(IVR)の方向性と一致しており、今後益々進んでいくものと考えられる。
この放射線計測の研究上のスポンサーから原子力が後退し始めたことから分かるように、原子力分野のエネルギー問題に対し、社会的風潮は誠に厳しいものがある。これはすべての科学技術分野に共通する問題かもしれないが、その中でも特に原子力に対する問題は厳しい社会的問題となっている。このような問題に対し、技術屋としてどのように対処すべきかは余り慣れていないところであるが、透明性よく正真ベースでやる以外に方法はないであろうと思われる。この面では材料研究も似たようなところがあるのかもしれないが、まずはその分野の研究が元気よく行われていることが大切であろうと思っている。
だが、原子力分野については、大学から学科が消え始めており、メーカーの方にしても原子力発電所を作るという仕事の契機が減っており、それに対応して原子力技術者が拡散し始めているという状況がある。原子力分野の人材が育成されないということは大学内、メーカーにおいても大局的にはその方向を向いており、現実の原子力発電所の維持にも若干の心配を起こさせるものである。もっとも、アメリカでもここ25年程、原子炉の新規発注がなくてその維持のみの仕事であったが、安全にやっているので心配しすぎることはないのかもしれない。
学問自身が21世紀になって新しいスタイルに変わりつつあるようである。大学にいると、当面の大学法人化の及ぼす影響がまず第一に考えられるが、21世紀のCOEになるべしとか競争的研究費の確保が問題とか新しい方式でやっていく必要を生じている。昔の古典的方法論では通じないところがあるという印象である。これは研究内容にも影響を与えるであろうが、いずれにしろ望ましい方向であることを期待したいと考えている次第である。
1.はじめに
強相関電子技術研究センター(Correlated Electron Research Center: CERC)は、2001年4月に独立行政法人産業技術総合研究所の研究センターの一つとして発足した。CERCは、近年急速に進展しつつある強相関電子物理の概念に基づいて、既存のエレクトロニクスの延長では到達できないような、革新的な量子効果デバイス・量子材料の創製を目的としている。強相関電子とは、多数の電子がお互いに強い影響を及ぼしながら、存在する状況をさしている。このとき、電子の集団は、ちょうど分子集団が固体や液体や液晶の形態をとるように、量子固体-液体-液晶の間を、磁気的、電気的、光学的な性質を大きく変えながら、相変態を行う。また、これら電子集団の相は、ピコ秒(10の12乗分の1秒)以内の超高速の切り替えが可能となる。外部から小さな刺激を入力として、劇的な電子相変化を巨大出力とする現象を電子技術として発展させようとするのが、強相関電子技術の基本的な理念である。
CERCでは、十倉好紀センター長のもと、下記の6研究チームにより緊密な研究協力かつコヒーレントな体制で研究を進めている。以下に、研究課題とトピックスの概要を紹介する。
2.研究課題とトピックス
・強相関相制御チーム(チーム長:橘 浩昭)
強相関電子のスピン-電荷-軌道の各自由度を活用して、機能的に興味ある電子相の間の臨界状態を生成し、その制御手法を開発する(図1)。特に強磁性-反強磁性、金属(超伝導)-絶縁体、中性-イオン性など、伝導・磁気・光物性の劇的転換を伴う相転移物質・材料(遷移金属酸化物・カルコゲン化物、有機π電子系物質)の開発を行う。これらを用いて、電場・磁場・光などによる高速かつ入力敏感な相制御技術を開拓する。
トピックスを以下に挙げる。
@ 多重臨界点としての超巨大磁気抵抗効果(CMR)
A 二重整列ペロブスカイト酸化物における新規ハーフメタル材料
B 中性-イオン性転移系の電流誘起絶縁体-金属転移
C 軌道放射光を用いた精密構造解析装置の構築
D 中性-イオン性相転移を利用した量子強誘電体の開発
・強相関物性チーム(チーム長:高木英典)
エキゾチック超伝導・磁気伝導など強電子相関の生み出す新奇な物性・電子機能を開拓することを主な目的として活動を行っている。その柱となるアプローチは、量子臨界相の創成、電界効果トランジスタ(FET)ケミストリーである。具体的な課題を下記に挙げる。(1)「量子臨界相」の創成と確認には高圧下での物性探索が重要となる。このための極限物性評価測定系を整備し、世界でも有数の超高圧・極低温実験環境を生成する。センターの誇る結晶ラボで作製する結晶群を極限環境下に置き、量子臨界相で発現する新しい物性を探索する。(2)強相関電子系のバルク単結晶と薄膜、その表面加工によって、電界効果トランジスタ(FET)を構築し、電界誘起モット転移(絶縁体-金属転移)、超伝導、強磁性などの物性を探索する。モットFETをベースにした、強相関半導体のデバイス物理を構築する。
トピックスを以下に挙げる。
@ 超高圧の創成と量子臨界相制御
A 電界効果トランジスタ(FET)ケミストリー
B 量子磁性体の不純物効果
・強相関フォトニクスチーム(チーム長:岡本 博)
本チームの目標は、低次元強相関電子系において、新規フォトニクス機能の探索を行うことである。具体的には、(1)強相関系における精密スペクトロスコピー:組成を精密制御した単結晶(遷移金属酸化物、カルコゲン化物、有機電荷移動錯体)および酸化物エピタキシャル薄膜において、その電子構造および相転移に伴う電子状態変化を、様々な分光的手法(顕微反射・吸収分光、顕微ラマン分光、磁気光学分光、遠赤外分光、高圧下分光、等)を用いて解明する。(2)光による超高速物性変換:上記強相関系物質において、超短パルスレーザー光を照射することにより電荷、スピン、軌道秩序を制御し、超高速(テラヘルツ以上)の物性変換を実現する。(3)光による超高速光スイッチング:各種モット絶縁体における巨大非線形光学応答と光励起状態の超高速緩和の電子論的機構を明らかにし、それらを用いて光による超高速光スイッチングを実現する(図2)。
トピックスを以下に挙げる。
@ ペロブスカイト型マンガン酸化物における電荷・軌道整列の光制御
A 一次元モット絶縁体における超高速光誘起絶縁体-金属転移
B 電荷移動錯体における中性-イオン性転移の遠赤外分光
C 電荷移動錯体における光誘起イオン性-中性転移の超高速ダイナミクス
・強相関超構造チーム(チーム長:川崎雅司)
ペロブスカイトをはじめとする種々の遷移金属酸化物の完全エピタキシー成長を実現し、人工格子・超格子・接合構造による新物質・新機能の創製を行う(図3)。具体的には、(1)スピン自由度や電子軌道自由度が超構造を組む、スピン超格子や軌道超格子の機能素子への応用、およびこれを用いたデバイス物理の追究。(2)エピタキシーによる不安定物質の薄膜単結晶化とエピタキシャル歪による電子軌道状態制御と目的電子磁気物性の発現。(3)強相関接合デバイスの構築と接合界面における交換相互作用や界面電子移動などの基本物性・特性の解明、などが挙げられる。これらの研究を統合し強相関界面学理の構築を行うとともに、強相関電子系の超構造における界面・接合面での新磁気電子機能の探索に展開する。
トピックスを以下に挙げる。
@ La2-xSrxNiO4の金属-絶縁体転移
A 電子ドープ超伝導体La2-xCexCuO4の電子相図
B SrFeO3の単結晶薄膜
C La0.7Sr0.3MnO3/SrTiO3/La0.7Sr0.3MnO3接合における室温トンネル磁気抵抗
D CaMnO3/CaRuO3超格子における界面強磁性の発現
E リラクサー強磁性体における光誘起磁化
・強相関デバイスチーム(チーム長:赤穗博司)
ペロブスカイト酸化物や有機物などの強相関電子材料を用いたデバイスの作製プロセスを新規に構築開発するとともに、強相関電子デバイス学理に基づくデバイス雛型の構築、また、試作モデルに基づくデバイス機能の検証を行うことを目的にしている。具体的には、汎用性の高い標準プロセス技術(強相関ヘテロ薄膜作製技術、3ミクロン素子寸法レベルのフォトリソグラフィ技術、エッチング損傷の少ない微細加工技術、層間絶縁膜作製技術、配線層作製技術の開発)の確立を進めるとともに、最先端技術を駆使したアドバンストプロセス技術としてサブミクロン素子寸法の電子ビーム描画技術の開発を進めている。さらに、これらのデバイスプロセス要素技術を用い、強相関トンネルデバイス、強相関FETデバイス、強相関メゾスコピックデバイスなどをターゲットとして、そのプロセス技術の検討と素子の試作を進めている。
トピックスを以下に挙げる。
@ La1-xSrxMnO3(LSMO)スピントンネル接合の作製
A YBa2Cu3O7-x積層型ジョセフソン接合の界面改質バリア形成
B YBa2Cu3O7-xビア構造の高度化
C 電子ビームリソグラフィによるサブミクロン構造の作製
・強相関理論チーム(チーム長:永長直人)
強相関電子系の基礎理論を明らかにすることで、新しい原理に基づく伝導性、光学的、磁気的機能を実現するための学理を確立し、同時に適切な物質系の提案を行う。具体的には、(1)量子位相が現れるホール効果、ファラデー効果、磁気カイラル光学効果などを取り上げ、格子構造や長周期磁気構造を理論的に設計できるようにする(図4)。(2)構造相転移、超伝導、磁気秩序などの多重臨界点近傍の巨大応答の定量的理論を構築し、外場にたいする応答を設計できるようにする。(3)非線形光学の主役を担うと期待される強相関電子系電荷移動励起子のスペクトルの理論を構築する。量子モンテカルロ法を開発し、自己束縛状態やアーバック則、移動度などを計算する。
トピックスを以下に挙げる。
@ 強相関電子系における量子位相とホール効果
A ポーラロンの量子モンテカルロシミュレーション
B 有機導体における電荷秩序
C マグネタイトにおける金属絶縁体転移
D 希薄ドープ域における高温超伝導体の輸送現象
問合先: 独立行政法人産業技術総合研究所強相関電子技術研究センター 赤穂博司 〒305-8562 つくば市東1-1-1 つくば中央第4 Tel: 0298-61-2500, URL: http://unit.aist.go.jp/cerc/ E-mail: h-akoh@aist.go.jp |
MgB2薄膜とジョセフソン接合
通信総合研究所 関西先端研究センター 王 鎮
1. はじめに
去年1月に青山学院大学秋光教授のグループにより発見された新しい超伝導物質二硼化マグネシウム(MgB2)は、金属、化合物系超伝導体として最も高い超伝導転移温度を示していること、また常伝導抵抗率(数μΩ)や磁場侵入長(100nm程度)が小さく、コヒーレンス長(数nm)が比較的長いことから、超伝導物質の研究分野のみならず線材やエレクトロニクスの応用分野においても大きな関心と期待が寄せられている。ここでは、MgB2の超伝導エレクトロニクス応用の成否を握るキーテクノロジーの一つである薄膜・接合技術の研究開発の現状と我々の最近の研究結果を紹介する。
2. 研究現状
MgB2の発見以来、多くの研究グループは薄膜・接合作製の研究に取り組んできたが、MgとBの融点(Mg:
650℃、B: 2550℃)が大きく異なることと、Mgが非常に酸化しやすいことから、金属、化合物系超伝導のような薄膜の低温合成は困難である。また、Mgと反応するガスがまだ見つかっていないため、従来の金属、化合物超伝導デバイス作製プロセスに良く用いられた反応性イオンエッチング(RIE)はMgB2接合の作製プロセスに導入することもできない。したがって、MgB2は従来の金属、化合物系超伝導材料でありながら、異なる薄膜、デバイス作製技術が必要とされている。
現在までにMgB2薄膜作製の方法の主流は、高温アニールを用いたいわゆるtwo-step法である。この方法では、まず室温でMg-B、あるいはB薄膜をレーザー蒸着や電子ビーム蒸着などの方法で成膜して、Mg雰囲気中で高温(数百℃〜1000℃)アニールを行っている。このような方法により39KのTcを有する結晶性の良いMgB2薄膜が得られているが、数百℃を超える高温アニールプロセスは接合やデバイス開発に必要な積層薄膜の作製に大きな困難をもたらしている。また、前述したRIEの問題を含めて、MgB2薄膜を用いたジョセフソン接合の研究においては、点接触型やブレークジャンクションなどの積層薄膜を必要としないものしか報告されていない。したがって、酸化物高温超伝導と同様にMgB2積層薄膜とトンネル接合の実現は、MgB2の超伝導エレクトロニクス応用の運命を左右していると言っても過言ではない。
我々は、最近、従来のスパッタリング方法を用いて低い基板温度(<300℃)におけるMgB2薄膜のas-grown成長に成功した1)。また、現在の超伝導エレクトロニクスの主役であるNbトンネル接合と同じ3層膜成膜・加工プロセスを用いてMgB2トンネル接合の作製を試み、MgB2を用いたトンネル接合において初めて良好なジョセフソントンネリングと準粒子トンネリング特性を観測した2)。
3. MgB2薄膜
MgB2薄膜の作製はカルーセル型多元同時スパッタ装置によって行われた。基板はサファイア(R面、A面、C面)で、基板温度はトンネル接合の作製を念頭に置いて200℃〜300℃範囲内に設定され、成膜圧力やレートなどの成膜条件に併せて最適化を行った。薄膜の組成比は、Mg(DCスパッタ)とB(RFスパッタ)の放電電力を独立にコントロールすることによって制御されている。
図1はサファイアC面(0001)基板に作製したas-grown MgB2薄膜の超伝導転移特性を示している。基板温度は255℃である。超伝導転移温度Tcは29Kでまだ若干低いが、ΔTcが僅か0.3K程度で非常にシャープな超伝導転移特性が得られている。基板依存性について調べた結果、サファイアC面とA面の基板を用いた場合、MgB2のc軸が垂直に配向して成長していることが確認された。組成比は波長分散型X線分光計(WDS)の結果により、高いTc(高い基板温度で作製した薄膜)を示した薄膜はすべてMg不足であった。これは高い基板温度でのMgの再蒸発によるものと思われる。成膜圧力や基板温度などの成膜条件を最適化することによって、如何に基板からMgの再蒸発を防ぐことは薄膜の高品質化のポイントであることが考えられる。
現在、成膜方法の改良及び成膜条件の最適化などを行い、薄膜の高品質化を図っているが、スパッタ法でMgB2薄膜のas-grown成長に成功したのは本研究が初めてである。Tcはまだバルクやアニール薄膜より低いが、300℃以下の低い基板温度で成膜したことと、薄膜の表面が非常に平坦であること(SEMの観測結果により)は、積層薄膜やトンネル接合などの実現に大きく期待される。
4. MgB2トンネル接合
MgB2トンネル接合の実現は、エレクトロニクス応用上極めて重要であることは言うまでもなく、超伝導エネルギーギャップなどの基礎物性の評価にも役立つものである。我々は上記のas-grown
MgB2薄膜を用いてトンネル接合の作製を試みた。トンネルバリアは窒化アルミニウム(AlN)、上部電極はRIEの制限でまず窒化ニオブ(NbN)を用いた。作製プロセスは、金属Nbと全く同じ3層膜(MgB2/AlN/NbN)を同一真空中成膜し、フォトリソグラフィとRIE、ECRエッチング、リフトオフなどを用いた3)。
図2は作製したMgB2/AlN/NbNトンネル接合のI-V特性とdI/dV-V特性の一例である。基板はサファイア(0001)で、接合サイズは20μm×20μmである。電圧がゼロと4mVのところで明瞭な超伝導電流と準粒子トンネリング電流が観測されている。
臨界電流の外部磁場依存性とギャップ電圧の温度依存性を調べた結果、理想的なフランホーファーパターンとBCS的ギャップ電圧温度依存性を示しており2)、良好なジョセフソンと準粒子トンネリング特性が得られている。ギャップ電圧について、単一ギャップか二つギャップかなどの議論は続いているが、我々のトンネル接合では、下部MgB2薄膜がc軸配向していることと、現時点で一つのギャップしか観測されてないことは興味深い結果であろう。
5. 今後の展開
MgB2は、現在の超伝導エレクトロニクス材料の主役Nbと将来が期待されている酸化物高温超伝導材料の中間に位置しており、Nbのギャップ周波数の限界と高温超伝導が直面している積層化、集積化の壁を乗り越えられるポテンシャルを有していることは間違いない。しかしながら、エレクトロニクス応用に向けた薄膜やデバイス開発において、前述した融点の違いやRIEなどのプロセス上の課題と、ギャップ構造や異方性などの材料の本質的な問題を解決しなければならない。今後、MgB2薄膜、デバイス・回路作製技術の研究開発の進展は、エレクトロニクス応用の鍵を握ることだけではなく、材料の物性解明にも寄与しうるものと期待されている。
参考文献
[1] A. Saito, A. Kawakami, H. Shimakage and Z. Wang, “As-Grown Deposition of
Superconducting MgB2 Thin Films by Multiple-Target Sputtering System,” Jpn. J. Appl.
Phys., vol.41, Part 2, no.2A, pp.L127-L129, Feb.2002.
[2] A. Saito, A. Kawakami, H. Shimakage, H. Terai and Z. Wang, “Josephson tunneling
properties in MgB2/AlN/NbN tunnel junctions,” submitted to Appl. Phys. Lett., 2002.
[3] 齊藤 敦, 川上 彰, 島影 尚, 王 鎮, “MgB2薄膜のas-grown成長とJosephson接合の作製”
電子情報通信学会信学技報, Vol.102, No.10, pp.7-12, 2002.
連絡先: 通信総合研究所関西先端研究センター 超伝導エレクトロニクスグループリーダー 王 鎮 〒651-2492 神戸市西区岩岡町岩岡588-2 Tel: 078-969-2190, Fax: 078-969-2199 E-mail: wang@crl.go.jp |
■Transactions
of the Materials Research Society of Japan
◇Trans. of MRS-J, vol.26, No.4, December, 2001(A4判・275ページ)が発刊されました。
本号には、一般論文1報、及び2000年12月開催された日本MRS学術シンポジウムのプロシーディングス、セッションG「クラスターの孤立系と凝縮系」(尾上 順、寺嵜 亨、佐藤俊彦、大野かおる編集)23報、セッションN「マテリアルズフロンティア」(野間竜男、伊熊泰郎、平賀啓二郎、長瀬裕編集)44報、合計68報の論文が掲載されています。
Trans. of MRS-J, vol.26はNo.1〜4で上記シンポジウムのプロシーディングスを主として掲載論文数328件、本文1358ページに達しました。
■Transactions
of the Materials Research Society of Japan
◇Trans. of MRS-J, vol.27, No.1, March, 2002(A4判・294ページ)が発刊されました。
本号には、一般論文3報、及び2001年12月20〜21日に開催された日本MRS学術シンポジウムのプロシーディングス、セッションA「協奏反応場の増幅制御を利用した新材料創製」(北澤宏一、石垣隆正、目 義雄、伊ケ崎文和編集)32報、セッションC「クラスターを基板とする新規物質系の創製と機能解明」(隅山兼治、佃達哉、藤間信久、米澤徹編集)14報、セッションF「ドメイン構造に由来する物性発現と新機能材料」(和田智志、川路均編集)19報、合計68報の論文が掲載されています。
◇Trans. of MRS-J, vol.27, No.2, June, 2002(A4判・184ページ)が発刊されました。
本号には、前号に引き続き2001年12月シンポジウムのプロシーディングス、セッションE「多粒子集合体の組織形成ダイナミクス」(松尾陽太郎、鶴田健二、田中英彦、神谷秀博、若井史博編集)10報、セッションG「クロモジェニック材料」(山名昌男、柏崎尚也、喜多尾道火児、小林範久、永井順一、馬場宣良、吉野隆子編集)12報、セッションI「暮らしを豊にする材料―環境・医療・福祉―」(井奥浩二、喜多英敏、中山則昭、山本節夫、比嘉充、後藤誠史編集)22報、合計44報の論文が掲載されています。
■第14回日本MRS学術シンポジウム ――21世紀を創る先進的かつ総合的材料研究――
開催日:2002年12月20日(金)〜21日(土)
場 所:東京工業大学大岡山キャンパス(東京都目黒区大岡山2-12-1)
連 絡 先:伊熊泰郎(神奈川工科大、Tel:046-291-3102;Fax:046-242-8760;
E-mail:ikuma@chem.kanagawa-it.ac.jp
セッションテーマおよびチェア(◎代表、○連絡先)
Session A: 自己組織化材料とその機能 X
チェア:◎○大久保達也(東大、okubo@chemsys.t.u-tokyo.ac.jp)、加藤隆史(東大)、関 隆広(東工大)、多賀谷英幸(山形大工)、木下隆利(名工大)
Session B: スマートマテリアル・ストラクチャー
チェア:◎宮崎修一(筑波大)、○新谷紀雄(物材機構、SHINYA. Norio@nims.go.jp)、武田展雄(東大)、浅沼 博(千葉大)、秋宗淑雄(産総研)
Session C: 磁場による構造、組織、機能制御
チェア:◎掛下知行(阪大)、○大塚秀幸(物材機構、OHTSUKA.Hideyuki@nims.go.jp)、角舘洋三(産総研)
Session D: ナノメータースケールコヒーレント励起系
チェア:◎○根城 均(物材機構、NEJO.Hitoshi@nims.go.jp)、 北原和夫(ICU)、大津元一(東工大)、堀 裕和(山梨大)、大西直毅(山梨大)
Session E: 有機超薄膜の作製と評価
チェア:山本 寛(日大)、松本睦良(産総研)、池上敬一(産総研)、
三浦康弘(桐蔭横浜大)、宮坂 力(桐蔭横浜大)、◎○杉 道夫(桐蔭横浜大、sugi@cc.toin.ac.jp)
Session F: ソフト溶液プロセスを利用した材料創製
チェア:◎○岡田 清(東工大、kokada@ceram.titech.ac.jp)、垣花真人(東工大)、佐藤次雄(東北大)、八尾 健(京大)
Session G: 暮らしを豊かにする材料―環境・医療・福祉―
チェア:井奥洪二(山口大、ioku@po.cc.yamaguchi-u.ac.jp)、比嘉 充(山口大)、藤森宏高(山口大)、大島直樹(山口大)、田中一宏(山口大)
Session H: 低次元ナノ構造体のデザインと特性
チェア:◎高柳邦夫(東工大)、李相茂(筑波大)、出来成人(神戸大)、森博太郎(阪大)、保田英洋(神戸大、yasuda@mech.kobe-u.ac.jp)
Session I: 植物系材料の最近の進歩
チェア:◎大塚正久(芝浦工大)、○秦 啓祐(千葉能開短大、hata@chiba-pc.ac.jp)、小川和彦(職開総合大)、須田敏和(能開大)、伏谷賢美(笠原技術士事務所)、三木雅道(姫路工大)
Session J: 燃料電池材料
チェア:◎○本間 格(産総研、ihomma@aist.go.jp)、他
Session K: ドメイン構造に由来する物性発現と新機能材料
チェア:◎○和田智志(東工大、swada@ceram.titech.ac.jp)、川路 均(東工大)、舟窪 浩(東工大)、岩田 真(名工大)、石井啓介(防衛大)
Session L:
境界領域としてのゲルの科学と工学―日常の科学から先端・環境科学まで―
チェア:◎○原 一広(九大)、haratap@mbox.nc.kyushu-u.ac.jp)、安中雅彦(千葉大)、鴇田昌之(九大)、中村邦男(酪農学園大)、西成勝好(大阪市大)
Session M: スパッタ法による薄膜作製技術
チェア:◎星 陽一(東京工芸大)、○石井 清(宇都宮大、ishiik@cc.utsunomiya-u.ac.jp)、他
Session N: イオン工学を利用した革新的材料
チェア:池山雅美(産総研)、石川順三(京大)、○岸本直樹(物材機構、KISHIMOTO.Naoki@nims.go.jp)、鈴木嘉昭(リケン)、
◎八井 浄(長岡技科大)
Session O: マテリアルズ・フロンティア(ポスター)
チェア:◎○野間竜男(東京農工大、noma@cc.tuat.ac.jp)
■International Conference on Advanced Materials IUMRS-ICAM 2003
開催日:2003年10月8〜13日
会場:パシフィコ横浜(横浜市みなとみらい)
主催:日本MRS、IUMRS(International Union of Materials Research Societies)
シンポジウムテーマ(連絡チェア)
Category A: NanotechnologyandNanoscaleMaterialsProcessing
A-1 ナノ構造の成長(物材機構)小口信行; A-2 ナノ構造制御高分子材料(九大有機基礎研)高原淳;
A-3 コンビナトリアル(東工大)長谷川哲也; A-4 表面ナノアセンブリ(名大)高井治;
A-5 ナノコーティング(JFCC)松原秀彰; A-6 走査プローブナノテクノロジー(筑波大)重川秀実;
A-7 ナノコイル(岐阜大)元島栖二; A-8 ナノ炭素及び関連構造(ナノ炭素研)大澤映二;
A-9 ナノネットワーキングと国際協力(物材機構)岸本直樹
Category B: Electronic and Photonic Materials and Devices
B-1 半導体; B-2 柔構造有機ナノ材料とNICEからくりデバイス(姫路工大)小野田光宣;
B-3 先端液晶性材料(九大)菊池裕嗣; B-4 ナノフォトニクス材料(東工大)彌田智一;
B-5 有機高分子の導電特性(筑波大)赤木和夫; B-6 誘導体・強誘電体の物性と応用(東工大)鶴見敬章;
B-7 超伝導先進材料・プロセス(日大)山本寛; B-8 酸化物薄膜の合成と複合体(三重大)遠藤民生;
B-9 先進磁性材料(東工大)阿部正紀
Category C: Advanced Materials for Environment and Society
C-1 エコマテリアル(物材機構)原田幸明; C-2 ソフト溶液プロセス(神奈川工科大)伊熊泰郎;
C-3 植物性材料の最近の進歩(職能開大)柿下和彦; C-4 暮らしを豊にする材料−環境・医療・福祉(山口大)井奥洪二;
C-5 Bioinspired Materials and Systems(鹿児島大)明石満; C-6 光触媒(東大)橋本和仁;
C-7 次世代環境共生型エネルギーシステムのための先導的熱電変換材料(九大)大滝倫卓;
C-8 環境半導体(埼玉大)三宅潔
Category D Modeling, Fabrication and Processing of Advanced Materials with Novel Performance
D-1 ナノメディカルマテリアル(物材機構)小林尚俊; D-2 自己組織化材料(名大)関隆広;
D-3 分離膜材料(東大)中尾真一; D-4 反応場制御による新しい材料プロセッシング(物材機構)石垣隆正;
D-5 バルク金属ガラス(新日鉄)今福宗行; D-6 高機能構造用金属材料(横国大)小豆島明;
D-7 セラミックス構造材料(東工大)松尾陽太郎; D-8 材料物性と機能のためのプロセッシングに関する第2回国際会議(防衛大)渡●芳久;
D-9 スマートマテリアル(筑波大)宮崎修一; D-10 マルチスケール材料シミュレーション(岡山大)鶴田健二;
D-11 先進材料のモデリング(産総研)池庄司民夫
問い合わせ先: IUMRS-ICAM2003事務局(担当 吉見)Tel/Fax: 045-339-4305,
E-mail: icam2003@ynu.ac.jp
■日本MRS協賛の研究会等
◇講演会:メカノケミカルで何が出来る―今注目される古くて新しい技術、2002年8月8日、早稲田大学理工学部(大久保キャンパス)62W号館、主催:化学工学会関東支部、Tel:
03-3943-3527, Fax: 03-3943-3530, E-mail: scej-kt@red.an.egg.or.jp
◇第50回レオロジー討論会、2002年10月9〜11日、長岡グランドホテル(長岡市)、主催:日本レオロジー学会・日本バイオレオロジー学会、問い合わせ先:日本レオロジー学会討論会係、Tel:
075-315-8687, Fax: 075-315-8688, E-mail: byr06213@nifty.ne.jp
◇「21世紀を拓く水素の世界―新しい材料とクリーンエネルギー」(「大学と科学」公開シンポジウム)、2002年10月23〜24日、日経ホール、問い合わせ先:アドスリー内 福田・田中、Tel:
03-5925-2840, Fax: 03-5925-2913, E-mail: info@adthree.com
◇ナノインテリジェント材料/システム国際シンポジウム、2002年10月30日、タイム24ビル(東京都江東区青海)、主催:未踏科学技術協会インテリジェント材料フォーラム、Tel:
03-3503-4681, Fax: 03-3597-0535, E-mail: imsf@sntt.or.jp
◇第5回エコバランス国際会議―環境調和型社会に向けた実践と評価基盤の再構成―、2002年11月6〜8日、筑波国際会議場「エコパルつくば」、主催:未踏科学技術協会エコマテリアル研究会ほか、Tel:
03-3503-4681, Fax: 03-3597-0535, E-mail: iceb@sntt.or.jp
◇薄膜加工技術の基礎から最先端技術コース―高度情報化社会を担う多彩な薄膜技術と最新材料(KAST教育講座)、2002年11月7日〜12月13日(計9日)、神奈川科学技術アカデミー教育研修課・姫野、Tel:
044-819-2033, Fax: 044-819-2097, E-mail: ed@kast.or.jp
◇マイクロ波効果・応用国際シンポジウム―21世紀の革新的グリーンテクノロジー、2002年11月21〜23日、奈良県新公会堂、主催:産業創造研究所(芹生、水野)、Tel:
03-5689-6361, Fax: 03-5689-6360, E-mail: mw symp@iri.or.jp
◇固体の反応性に関する国際シンポジウム、2003年11月9〜13日、積水化学工業京都技術センター、主催:国際シンポジウム組織委員長、問い合わせ先:慶応義塾大学理工学部応用化学科、仙名保、Tel:
045-566-1569, Fax: 045-564-0950, E-mail: senna@applc.keio.ac.jp
To the Overseas Members of MRS-J
■Materials and Radiation Measurements…p.1
Professor Masaharu NAKAZAWA, Dept. of Quantum Enginering and Systems Science, School
of Enginering, University of Tokyo
The research study area of author is the radiation measurement, and in the connection
of material research the author have discussed several topics of radiation sensors, such
as superconducting X-ray spectrometer, micro-strip gas counter (MSGC), and room
temperature semiconductors.
The important change of customers of radiation detectors can be said from the nuclear
industry to medical areas, it causes several influences on scientific research study
works, especially its frame works.
■Correlated Electron Research Center, National Institute of Advanced
Industrial Science and Technology…p.3
Dr. Hiroshi AKOH, AIST
Correlated Electron Research Center (CERC) aimes at exploring new quantum-functional
materials and developing new quantum-devices on the basis of emerging physical science on
correlated electron system. The term “correlated electrons” represents the state of
matter where many electrons are strongly interacting with each other, forming the liquid-,
solid-, and liquid-crystal-like state of electrons. Those electronic phases can be
switched by external stimuli, which causes drastic changes in magnetic, electrical and
optical properties. Such a phase switching can be as fast as one picosecond or less. The
correlated electron technology will utilize this gigantic phase-response of electrons as
the out-put functionality.
■MgB2 Thin Films and Josephson Junctions…p.5
Dr. Zhen WANG, Leader, Superconductive Electronics Group, Kansai Advanced Research
Center, Communications Research Laboratory
The recent discovery of superconductivity with critical temperature Tc〜39K in
magnesium diboride (MgB2) not only caused excitement in the solid states physics community
but also generated interest in using MgB2 instead of conventional superconducting
materials for superconducting electronics. We have recently made some advances in the
development of as-grown MgB2 thin films and Josephson tunnel junctions based on the
as-grown MgB2 films. The MgB2 thin films we made were fabricated by using a conventional
multiple-target sputtering system at a low substrate temperature without performing a
post-annealing process, and MgB2/AlN/NbN Josephson tunnel junctions fabricated by using
much the same trilayer technique used to fabricate Nb tunnel junctions showed excellent
Josephson tunneling and quasi-particle tunneling properties.
編集後記
人間の五感で見て認識できる(可視光以外の情報も“見る”に含めることにします)情報は、非常に豊富ではあるが、情報の種類、精度、取得速度等において、我々の要求に対して不十分な場合が多々ある。医療、情報通信、環境、エネルギー分野など現代社会において、我々自身が開発した人工の目が使われている。現代社会は、人工の目なしには成り立たない。
人工の目で重要になるのは、観測対象と材料の相互作用であり、新たな材料の出現が、新たな人工の目には必要である。もちろん、材料だけでは目にならないので、相互作用を電気信号等に変換するデバイスとしての機能を付与する必要がある。電気信号に変換できれば、情報処理を経て、最終的な出力は五感で知覚可能なように加工される。我々は、この情報を元に行動を決定している。言わば、材料、人工の目はすでに我々の一部である。材料が無ければ始まらないが、材料だけでは終わらない。この辺の事情が、本号で浮き彫りになっている。ご執筆頂いた先生方にお礼申し上げます。(大久保雅隆)