日本MRSニュース Vol.15 No.1 February 2003
材料技術が日本を救う
キヤノン材料技術研究所所長 村 井 啓 一
はじめに
1990年にバブルがはじけて未だに日本経済の行く先は見えない。製品の製造が中国をはじめとするアジアに移動して、国内の製造の空洞化が始まって、ものづくりをお家芸としていた日本の産業も元気がない。
このような状況下にあって幸いに当社は何とか業績を維持している。競争力のある、独自性のある複写機、レーザービームプリンター、インクジェットプリンターなどの商品を世の中に供給し顧客に使って頂くことが出来ている。競争力のあるこれらの差別化された商品を創り出すには例えば複写機、プリンターといったハードと材料が一体となった技術開発が必須であり、特にトナー、インクに代表される消耗品としての材料技術が大きく寄与している。当社では新事業への参入あるいは、新製品を導入する時の技術の評価項目として、独自性、材料での差別化のレベル、コスト、特許の優位性等を評価することを原則としている。
中でも、重要項目として、材料での差別化が競争力の確保のためには必須であると考えている。多くの企業の競争力を向上させ、不況の日本を救うために差別化された材料技術を研究開発することの重要性について述べてみたい。
材料技術による差別化
第一に、デフレ下において競争力を向上させるためには製造コストの低減が必要である。対策として日本の企業はこぞって中国、アジアの各国へ工場を作り生産をシフトさせている。そのため日本国内での生産比率が極端に低下し工場も閉鎖され失業者も増加しており、デフレへの悪循環の一因になっている。商品としての競争力の向上がコストのみに求められる商品にはその傾向が強くなり、独自の技術が盛り込まれている商品にはその傾向が弱くなる。日本の優位な技術と思われていた“ものづくり”の技術が今では大きな差別化に成り難くなっている。
ナノスケールの超精密な加工を要する付加価値の高い技術を盛り込んだ製品であれば、中国での生産がすぐに始めれられることはないが、機能部品の組み合わせで高度な機能を発揮する製品では簡単に同様の機能を作りだすことが可能である。特に最近の家電製品、IT関連製品では、機能としては高度でも部品の組み合わせで割と簡単に製造することが出来る。
第二に、特許で守られた技術による優位性の確保が重要である。特にブラックボックスとして優れた材料技術が附加されて機能を発揮している製品は、簡単に解析し真似をすることができない。従来はハードとソフトとその機能に重点が置かれて差別化を計ってきたが、今までに増して材料技術での差別化が日本の優位を導くために必要である。したがって、コスト高でも、付加価値の高さで優位性を確保でき国内での生産の価値をもつ製品の供給のために、他には真似できない差別化された材料技術を研究開発することが重要である。
特に、電子デバイス材料、表示素子材料、高機能新規材料、環境対応材料、診断医療材料、バイオ関連材料、ナノ構造材料など、3年〜5年先を見据えた研究開発が極めて重要である。
材料技術立国
大きな指導力の下に、国としてのあるべき将来への夢と方向性を描き、ビジョンとして謳いあげる必要がある。
例えば、米国での過去の例としてはアポロ計画、情報ハイウェーなどがある。大学研究の使命としてはシーズ志向の研究のみならず、国の将来の技術として、何が社会に、人々にとって必要かを十分に議論し、認識し、およその方向性を創りだす責任がある。これからの時代の方向性としては、少子・高齢化対策、地球環境の保護、快適な夢とゆとりある生活などがある。これらを実現する技術課題としては、省資源、次世代エネルギー、健康医療、誰でも使えるITなどの基礎技術研究がある。そして、基礎研究としての大学、独立行政法人の研究所と応用研究としての企業研究所の連携強化が必要である。
日本のみならず世界の企業の中央研究所から新規な大型の技術が生み出されなくなって久しい。サイエンスの延長としての技術創出の場と、市場のニーズへ直結した商品開発の場が、重なっていないことがこの理由として考えられる。企業においても、効率的な事業推進を行うためには分業化の推進が必要であるが、その結果、研究部門の目標と、事業部門の目標とが重なりあわなくなって来ている。したがって、企業においては基礎研究から開発まで全体最適にマネージメントするシステムが再考されるべきである。そのためには企業研究開発での一貫した変革が必要である。そのためには以下に述べる創造的な人材の育成が重要課題となろう。
創造性ある材料技術研究を行う人材の育成
経済の成長、企業の成長、発展にとってイノベーションを伴った活動が必要である。イノベーションを中心的に牽引する創造性豊かな人材が必要である。創造性豊かな人材を組織の中で上手に育成し活かしていかなければならない。事業を順調に発展させていくためには確実で効率的な運営と推進が必要となる。
しかしながらイノベーションを興す初期の段階においては、不確実で先の見えない、仮説に基づいた、運営と推進が必要になる。創造的な活動はこのような、環境で初めて開始できる。しかし、ここで大きな矛盾が存在する。順調な事業の運営とイノベーションの創造とは相容れない部分が多いという事である。すなわちイノベーションとは矛盾に満ちた活動である。このような矛盾に満ちた二つの活動を同時に組織的に行わなければ企業におけるイノベーションは生まれにくいのである。
重要なことは、この創造の場を育むことができるビジョンとそれを理解しているマネージャーが存在する組織、更に柔軟な懐の広いマネージメントが必要だということである。
日本の材料メーカー、化学工業に期待する
材料メーカーから材料を供給していただき、新商品を創造していく我々企業にとって、日本の材料・化学メーカーに対する期待は大きい。過去においても優れた日本の製品が上市され日本の経済の発展に大きな寄与をしてきたことは紛れも無い事実である。
ところが、最近の化学業界の元気無さが気になっている。経済の状況が一因であることは間違いないが、材料メーカーからの将来への提案が少なくなっていると感じられる。5年〜10年先に世界、社会、生活を変化させるであろう技術とその商品に用いる材料が少ない。3年連続のノーベル賞と特に田中さんの受賞は、我々企業の技術屋にとっては励みになるが、世界のレベルからみれば更なる飛躍が必要である。ナノテクノロジー分野のカーボン関係は日本が主導したこともあってこの分野は活発であるが、その他の分野は異なる。顧客サイドに近い我々ハード関係企業の研究開発は将来の方向性を商品として描いているが、日本の多くの材料メーカーには理解をしていただけていないと感じられる。
先に述べたように、将来が見えにくい技術の創造にたいしての、組織的な対応ができていないことが遠因でないかと考えられる。日本経済の根本的な改善のための技術分野からの挑戦が大学での研究、独立行政法人での研究、材料メーカーでの研究に託されていると言っても過言ではない。おおいにこれからの材料関係者の御活躍とその成果を期待している。
連絡先:〒146 -8501 東京都大田区下丸子3 -30 -2 キヤノン材料技術研究所 所長直通:03 -3757 -6120 http://canon.jp/ |
第14回日本MRS学術シンポジウム報告
学術シンポジウム企画幹事 伊 熊 泰 郎
日本MRS恒例の学術シンポジウムは主に川崎市溝の口KSP(かながわサイエンスパーク)で開催されてきた。この会場は部屋数に限りがあるためセッション数を増やせないという問題があった。2003年にはIUMRS-ICAMを日本MRS主催で開催する予定である。このため、2002年学術シンポジウムは以前より規模を大きくすることが望まれ、そこで会場を都内の大学に移すことにした。これによりセッション数および口頭発表数の増加に対応できると予測し、平成14年12月20日(金)、21日(土)の2日間、東京工業大学大岡山キャンパスで開催された。セッション数15、発表件数582件、参加者数は約800名であった。過去数年間の日本MRS学術シンポジウムと比べても件数は増え、各会場では活発な討論が行われた。セッションによっては来場者数を例年並と予測していたため、立ち見の人が出たと聞いている。会場が都内へ移動したこと、そしてセッション数の増加などが全体を活発にした要因と考えられる。現在企画が進んでいる2003年10月IUMRS-ICAMにおいても、さらに多くの発表者や参加者が集まることを期待している。
奨励賞は今まで若手研究者のポスター発表を対象としていたが、今回は口頭発表も対象に審査を行った。なお、受賞者の割合は審査対象者の10%程度と下げた。これは奨励賞の評価を上げる考えからである。受賞者の一覧を下に示す。これらの受賞者にはお祝いを申し上げたい。
最後に、発表者の方々、審査員の方々、チェアの方々、その他多くの方々に感謝を申し上げると共に、全研究者の今後の活躍・発展を期待したい。
■奨励賞受賞者一覧
Session A:籔内一博(東大)、古賀智之(産総研)、井上俊一(科学技術振興事業団)、渡辺一史(都立大)、上川裕子(東大)
Session B:長 弘基(筑波大)、金 煕榮(筑波大)、ダチアン・トーマス(豊橋技科大)、稲邑朋也(東工大)
Session E:飯村兼一(宇都宮大)、田中健一(東京理大)
Session F:山川泰明(東工大)、冨田恒之(東工大)、飯塚幸彦(神戸大)
Session G:山川朋子(山口大)、本間貴昭(工学院大)、相澤 守(上智大)
Session H:長田 実(科学技術振興事業団)、小林泰三(立命館大)、岡崎健一(阪大)
Session I:立花繁明(カール ツァイス)、今村充利(横浜国大)
Session J:熊谷麻美子(上智大)、古川敦史(九大)
Session K:武田博明(奈良先端大)、廣橋淳二(三井化学)
Session L:田中良巳(富山県大)、元川竜平(千葉大)、橋本匡史(東海大)
Session M:宮武正平(青学大)、若色将克(ソニーケミカル)、依田秀彦(宇都宮大)、加藤和広(青学大)
Session N:青木学聡(京大)、横山敬郎(東京理大)
Session O:Chuhyun Cho(長岡技科大)、添野拓司(慶應大)、南 広祐(東大)、小岩井理美香(千葉工大)
Session A:自己組織化材料とその機能V
参加者数:40名
招待講演件数(3件)、口頭発表件数(12件)、ポスター発表(41件)
本セッションは今回で5回目を迎えたが、年々「現象の発見」から「材料への展開」を意図した研究が増えている。とりわけ今回は、有機系から無機系、生体系、更にはナノ粒子系に至る、様々な「自己組織化」に関する口頭発表ならびにポスター発表が行われた。ナノテクノロジーが世の中の注目を集め、その中心的役割を果たすものとして「自己組織化(ボトムアップ手法)」に期待が集まっていることがその背景にあるものと考える。3件の招待講演は、慶大・山元氏の超分子、東大・小暮氏のバイオミネラリゼーション、キヤノン・宮田氏の無機ナノ空間材料と、いずれも最先端のホットなトピックスに関するものであった。
運営に関しては、液晶プロジェクターの講演をセッションとして受けいれた。時代の流れを考えると、講演の主流はOHPから液晶プロジェクターに移行しつつあるものと考える。残念ながら、コンピューターとの接続のトラブルが複数起きてしまった。接続法を含めて、今後の対策が必要であると考える。また現状のチェアにabstractが送付される仕組みは、改善する余地があるのではないだろうか? 発表申し込みと同様に、ホームページに直接書き込む形態への変更を希望したい。
本セッションは、次年度のIUMRS-ICAM2003においても、名大・関氏を代表チェアとして開催する予定である。広範な応募を期待したい。
最後に、事務局をはじめ、本セッションにご協力いただいたすべての皆さんにこの場を借りて謝意を表します。
(大久保達也(東京大学大学院))
Session B:スマートマテリアル・ストラクチャー
参加者数:120名
招待講演件数(5件)、口頭発表件数(46件)、ポスター発表(15件)
本セッションでは、スマートマテリアル・システムの研究・開発・応用に携わる研究者が一堂に会し、材料の製造プロセス、内部組織制御、特性評価、外場(応力、磁場、電場、イオンビーム、温度等)の効果、複合化、システム化等に関する研究発表を行った。発表されたスマートマテリアルには、ピエゾ素子、形状記憶合金、機能性金属材料、機能性ポリマー等があった。
講演の中で、センサーとアクチュエータの機能を有するスマートマテリアルを組み込むことにより有用なスマートシステムが構築できるが、21世紀に求められる概念として省資源、省エネルギー、技術の簡明性をキーワードにした開発の方向性が重要であると指摘された。各機能要素は単純であるが、システムを構築するための基本機能に加えて安全性の確保のための機能も付加するというように、多くの機能を複雑に絡めていくとシステムは複雑になりがちである。省資源、省エネルギー、技術の簡明性からは離れる方向であり、社会に有用な技術にはならない。有用なスマートシステムの構築のために発想の転換が不可欠であるという興味深い示唆である。スマートマテリアル・システムの研究には、素材自身の開発の他に複合化とシステム化を行って実用化を進めることが含まれるため、基礎研究から実用研究までの広い範囲で、多くの研究者を巻き込んだ今後の長い期間の研究・開発が要求される。将来の産業基盤の構築に不可欠のものとして、スマートマテリアル・システムの開発を捉らえていく必要がある。
本セッションは、今回のMRS-J学術シンポジウムの中で最も講演数の多いセッションであった。基調講演、招待講演をされた中核的研究者に加えて、口頭およびポスター発表者は若手、中堅の研究者が多く、この分野が将来に向けて発展して行くことを予感させる雰囲気があった。
(宮崎修一(筑波大学))
Session C:磁場による構造、組織、機能制御
参加者数:50名
招待講演件数(5件)、口頭発表件数(22件)、ポスター発表(0件)
磁場を利用した様々な構造、組織、機能制御について発表が行われた。対象とする材料は金属、セラミックス、高分子、生体細胞まで極めて広範にわたる。磁場を利用している研究者は多いが、これほど多岐にわたる材料に関して一堂に会して発表を行うことはほとんどなかったため、異分野の研究者同士の交流が可能となる貴重な機会であった。MRS-Jの特長がうまく生かせたと思われる。また、対象とする材料が異なっても発現される磁場効果及びそのメカニズムに関しては参考になることが多く、新たな観点からの磁場応用のヒントが得られた。5件の招待講演は主として磁場中相変態を利用した研究発表であった。相変態挙動、組織、方位、形態等に及ぼす磁場効果を明らかにするとともに、それを利用した機能材料への応用まで興味深い講演がなされた。一般講演でも相変態関係の発表が多かったが、その他にも磁場を利用した材料プロセッシングや磁気特性に関する研究についても講演がなされた。
(大塚秀幸(物質・材料研究機構))
Session D:ナノメータースケールコヒーレント励起系
参加者数:40名
招待講演件数(3件)、口頭発表件数(9件)、ポスター発表(0件)
本セッションでは将来のデバイス応用も視野に入れてナノメータースケールの構造の励起とそこにおける電磁場の散逸の制御を可能にする技術についての方向を見出すことを目指した。当日はこの方向に沿って活発な発表と討論が行われた。
特に、大津元一東京工業大学教授による、この分野における将来のデバイスのニーズを含めたこの分野の研究の位置づけに関する講演がこのセッションの必要性・位置づけを明確にした。また、小林孝嘉東京大学教授の講演では、Time-resolved
spectroscopyの手法により実時間で有機分子の動態を明らかにし、材料を制御するという観点から有意義な討論が行われた。また、堀裕和山梨大学助教授の講演では、電磁場の散逸を制御することの原理的な問題点が指摘され、逆にこれを実現することにより、既存の物理では捉らえきれない新たな分野が開けることが示唆された。
更に北原和夫国際基督教大学教授、大西直毅山梨大学教授を中心としたセッション最後の討論は大変活発に長時間行われ、これにより現時点では本セッションの目的を達成することはできないが、その実現のための方途が見えてきた。また、理論とそれを実現するための材料に関する両面からの討論がかみ合い、日本MRSならではのシンポジウムとすることができた。
(根城 均(物質・材料研究機構))
Session E:有機超薄膜の作製と評価―分子配列・配向制御の観点から―
参加者数:36名
招待講演件数(0件)、口頭発表件数(24件)、ポスター発表(12件)
セッションEは、山本 寛(日大理工)、松本睦良(産総研・ナノテク)、池上敬一(産総研・ナノテク)、三浦康弘(桐蔭横浜大工)、宮坂 力(桐蔭横浜大工)の諸氏および杉 道夫(桐蔭横浜大工)をチェアパーソンとして新たに企画されたものである。
21世紀を迎えてナノテクノロジー技術はブームの観を呈しているが、その中にあって、分子配列・配向の制御手段としてLB膜など各種の有機超薄膜プロセス技術が新たな脚光を浴びている。当セッション設立の目的は、このような状況を踏まえて有機超薄膜の作製と構造・機能評価を分子配列・配向制御の観点から討論することにある。
第1日目および第2日目を通して口頭発表24件、ポスター発表12件、合計36件の研究発表につき活発な討論が行われた。テーマは、界面化学の基礎から新規機能薄膜の創製と評価、デバイス・プロトタイプの試作まで各種の分野のものが出揃い、所期の目的は達成されたと考えている。参加者の顔ぶれも1980年代に見られた有機超薄膜ブーム以来のヴェテランからその孫弟子世代にあたる大学院・学部生までの年齢層にわたった。これらのことは、当分野の今後の一層の隆盛を予想させるものであり、次回以降もこの趣旨のセッションを続けていくことが望まれる。
(杉 道夫(桐蔭横浜大学))
Session F:ソフト溶液プロセスを利用した材料創製
参加者数:50名
招待講演件数(1件)、口頭発表件数(17件)、ポスター発表(13件)
本セッションの発表内容は、溶液反応を利用した微粒子合成と膜形成に関するものが主体であった。午前中のセッションでは、おもに微粒子合成と得られた微粒子に対するキャラクタリゼーションや特性評価に関する研究発表があった。チタニア、ジルコニア、アパタイトといった酸化物系のものから、酸化物−非酸化物や無機−有機の複合体に関する研究まで様々な材料の話が聞け、興味深かった。一方、午後のセッションでは、まず東工大の阿部教授によるフェライトに関する特別講演があった。フェライトは東工大発の材料であり、その歴史的な話から最近阿部教授のグループで行っているフェライト膜の低温合成とその電気・電子分野や医療用分野への応用に関する話があった。一般発表では、溶液法による膜形成に関する研究発表が主体であった。こちらでは、チタン酸塩やニオブ酸塩などの複雑な化合物の薄膜を溶液反応を利用して作製した研究が多く発表され、化学的な方法の薄膜合成への有用性が示唆された。また、パターンニングや結晶性膜の直接合成などの興味深い研究発表もあった。ポスターセッションは大学院生による発表が多かったが、それぞれ熱心に自分の研究成果を説明してくれたので、全部を見て回るのには少し時間が足りない感じであった。
全体的な印象として、口頭発表とポスター発表の両方を1日で行ったため、特にポスターの時間が短すぎて充分に議論が尽くせなかったように思われた。
(岡田 清(東京工業大学大学院))
Session G:暮らしを豊かにする材料―環境・医療・福祉―
参加者数:60名
招待講演件数(0件)、口頭発表件数(30件)、ポスター発表(0件)
暮らしを豊かにする材料をキーワードとして、センサー、電池、環境浄化材料、人工臓器、人工骨、組織工学のスキャホールド、気体分離膜、薬剤等を目的とした機能性セラミックス、ポリマー、金属複合材料、薄膜、そして理論科学とシステムについての報告が集まった。人類の幸福を目標とした“医工学”および“環境理工学”というジャンルが、材料科学の分野においても確立されたことを感じさせられた。
専門分野の異なる研究者が一時に会し、相互交流できたことに、大きな意味があったと思う。テクニカルタームの違いという壁を乗り越えて、熱いディスカッションを繰り広げている若手研究者の姿も目に付いた。本セッションのような会合は、他の学会ではなかなか実現できないことから、日本MRSという学際的な学会の意味を強く感じた。
(井奥洪二(山口大学大学院))
Session H:低次元ナノ構造体のデザインと特性
参加者数:70名
招待講演件数(4件)、口頭発表件数(27件)、ポスター発表(22件)
クラスター、ナノ粒子、ナノワイヤーナノチューブ、ナノコーン、ナノホーン、ナノシートなどをキーワードとしたナノスケールで低次元の構造を有する材料をとりあげた。こうした材料を種々の極限環境を利用して高い自由度と制御性で創製する方法やそこに発現する電気的、磁気的、光学的、化学的、機械的な機能・特性に関する研究発表が行われた。ナノ構造を制御して創製するための様々な物理・化学的な手法と構造形成のメカニズムについての基礎的な研究から特性を活用するために低次元ナノ材料を配列させる点に着目し応用への展開を見据えた研究まで広範な分野の発表が集まり、ナノ機能が技術としての実用化に向けて着々と進化していることをうかがわせる。また、異分野の研究者がお互いのノウハウを交換したり、今後の研究の展開方向に対して積極的に要望するなど活発な議論が行われた。
(高柳邦夫(東京工業大学))
Session I:植物系材料の最近の進歩
参加者数:45名
招待講演件数(2件)、口頭発表件数(11件)、ポスター発表(18件)
木材は人類史の中で最も代表的な材料であり、長期にわたり使用された材料の一つでもある。紙もまた、文明の発達と共に急速に需要が多くなり、情報伝達用、保存用、そして包装用として大量に消費されてきた。しかし、木材や紙の植物系材料の大量消費は森林資源を枯渇させることになる。さらには、これらの材料を焼却する場合も多量の炭酸ガスを大気中に放出させることから地球温暖化の一因となっている。このような状況に鑑みて、本セッションでは、森林資源の有効利用、新たな植物系資源の開発、および植物系資源のリサイクルをも含めた高機能的利用法等について討議するものである。今発表会も招待講演、口頭発表、ポスター発表の3部門で構成し、環境を意識した植物系材料の開発・物性、ウッドセラミックスの特性・用途、炭化物材料の開発等を中心に発表が行われた。特に、ポスターセッションでは、学生による積極的な参加のもと、興味深い内容の発表が行われ、意義深いものであった。
(秦 啓祐(滋賀職業能力開発大学校))
Session J:燃料電池材料
参加者数:55名
招待講演件数(3件)、口頭発表件数(8件)、ポスター発表(14件)
大変盛況であり立ち見の人がかなり出た。もっと大きい教室をお願いしておけば良かったと反省している。招待講演者の発表内容も時機を得た、興味深く先端的な内容であり評判も良かった。今回は若手3名の主催によるシンポジウムであったが講演者、参加者共に満足できる内容の講演が集まり、また会場の雰囲気も熱気を帯びており、成功であったと結論できる。KSPで開いた(2年前)よりも参加者は約2.5倍もいて、東京で開催する場所の利があったと思われる。今後もMRS-Jの参加者を集めるためにはKSPよりも都内の有名大学で開催する方が良いのではないかと思う。
(本間 格(産業技術総合研究所))
Session K:ドメイン構造に由来する物性発現と新機能材料
参加者数:60名
招待講演件数(8件)、口頭発表件数(9件)、ポスター発表(22件)
本セッションも2年目となり、ドメインに関するサイエンス、測定方法、応用等、広い観点から多くの参加者を集めることができた。特に本年は来年の国際MRSを考慮し、海外からの研究者として韓国の趙先生に加え、国内におけるドメイン関連の第一級の研究者を集めることができ、非常にレベルの高い講演内容となった。このため100人規模の会場を準備したにも関わらず、時間帯によっては席が埋まり立ち見の人が出る状態となった。
まず、石橋先生による90度ドメイン壁の構造で始まった本セッションでは、上江洲先生によるナノドメイン歪みを考慮するモデルで多くの特異物性の説明、趙先生によるSBNセラミックスにおける微構造と誘電特性との関係、伊藤先生による酸素18置換のチタン酸ストロンチウムの強誘電相転移挙動の説明、尾崎先生による反電場による秩序構造を持つドメイン構造の生成機構、長先生によるナノドメインを用いた高密度記録媒体への応用、チタン酸ビスマス単結晶におけるドメイン構造、ラマン観察などが次々と紹介され、多くの参加者の興味を引きつけ、このため予定時刻を15分過ぎての昼食となった。午後も、Cross先生のPZT薄膜中の水素イオンによるドメイン壁移動抑制モデルの提案、桑原先生によるチタン酸バリウム単結晶中におけるドメイン壁の誘電特性への寄与に加え、PZT薄膜における新規圧電測定の提案、PZN
-PT単結晶における巨大圧電特性、配向制御によるビスマス層状強誘電体セラミックスの圧電特性、アエロゾルデポジッション法による誘電体膜の超音波による新規弾性測定などが紹介され、活発な討論が行われた。特に、栗村先生、寺部先生、北村先生によるニオブ酸リチウム単結晶におけるドメイン制御によるフォトニクス結晶への提案は、ドメインエンジニアリングにおける核となりうる新規技術であり、今後の展開に大きな期待がもてる講演であった。
これとは別にポスターセッションが午後4時から5時半まで開催された。そこでは22件の発表があり、そのうち口頭発表を含め17件が奨励賞の審査対象となった。厳正な審査の結果、三井化学の廣橋氏、奈良先端科学技術大学の武田氏の2名が奨励賞の候補者となった。本セッションでは、昨年度明らかになった問題点を踏まえ、講演者数の増加、規模の大きな会場、参加者数の増加などの改善を試みたが、幾つかの問題点が浮かび上がった。まず、予想以上に多くの参加者があったため、一時的に会場で立ち見者がでるような状態になった。来年度は更に大きな会場を使用する必要がある。また、参加者のほぼ70%近くが大学関係者であり、産学官の垣根をうち払って活発な議論の場にしたいという本セッションの理念を実行するためには、来年度は50%以上が企業からの参加者になるように、魅力的なセッションにしなければならないことを痛感した。また、1日で行ったこともあり、スケジュール的に非常にタイトであることも反省点として挙げられた。
(和田智志(東京工業大学大学院))
Session L:境界領域としてのゲルの科学と工学―日常の科学から先端・環境科学まで―
参加者数:52名
招待講演件数(1件)、口頭発表件数(15件)、ポスター発表(28件)
高分子ゲルが様々の側面から学際的に研究されている事を反映して、主な講演だけでも、「フィブリンのゲル形成過程の光散乱」(群大・窪田)、「細胞運動における細胞骨格ゲルをとおした力学的協調性」(北大・川端ら)、「熱応答性高分子電解質ゲルの膨潤特性:不均一電荷の影響」(筑波大・國府田)、「高分子ゲルでの膨潤と応力のカップリング現象」(京大・瀧川)、「水系の広帯域誘電分光」(東海大・八木原)、「ゲル壁膜を持つマイクロカプセル」(群大・土橋)、「ゲルの膨潤・力学・破壊挙動に及ぼす架橋の効果」(富山県大・田中ら)、「NIPA-PEGジブロック共重合体水溶液の相挙動」(千葉大・元川ら)、「構造色を示す感温性ゲル」(横国大・竹岡ら)、「凍結状態における高分子ゲルの誘電的研究」(東海大・橋本ら)というように、基礎科学から新規機能材料開発、食品科学、環境科学にまで及ぶ多岐の分野にわたる発表がなされ、高分子ゲルに関係する研究が各方面で活発に行われている事が改めて明らかとなった。特に今回は、通常の学会発表等では時間が無く話せない内容まで踏み込んで講演していただくために、『第1日目はこの分野で先導的研究をされている方々の講演(依頼講演45分、招待講演60分)のみとし、第2日目の一般口頭発表も講演時間を20分と余裕を持たせる』というプログラム作成上の工夫を行う事により、ゆったりとした雰囲気の中で講演や質問・討論が活発に行われ、多くの参加者からも余裕のある講演で発表内容が分かりやすかったとの好評をいただいた。
(原 一広(九州大学大学院))
Session M:スパッタ法による薄膜作製技術
参加者数:80名
招待講演件数(2件)、口頭発表件数(18件)、ポスター発表(19件)
スパッタ法という共通の薄膜化技術を駆使した磁性薄膜、光触媒薄膜、超伝導薄膜、誘電体薄膜、透明導電膜など、色々な材料分野の発表が合計39件あった。各分野で、それぞれ異なった視点からスパッタ法に工夫を加えて、所望の構造や特性を持った膜を実現するために取り組んだ研究成果が発表されており、非常に新鮮な感じで発表を聞くことができた。青山学院大から発表されたTiO2薄膜や、VO2薄膜、透明導電膜などの酸化物薄膜の作製についての報告、宇都宮大から発表されたガスフロースパッタ法による各種薄膜の作製に関する報告など、内容の充実した発表が多くあり、活発な討論がなされた。東北大の高橋研先生からは、nmオーダーの薄膜中の微粒子の粒径分布および配向制御や、結晶粒径の制御法、超薄膜酸化層の生成法などに関する技術が紹介され、スパッタ法においてもnmオーダーの微細構造制御が、益々重要となってきていることを痛感させられた。
(星 陽一(東京工芸大学))
Session N:イオン工学を利用した革新的材料
参加者数:50名
招待講演件数(4件)、口頭発表件数(19件)、ポスター発表(18件)
イオンを利用した材料科学は、分析から材料創製にわたり著しい発展を遂げ、常に新技術への旗手として常に期待されて来たが、近年は競合する諸技術が現れて来ており、今再びイオン技術を基礎としたブレークスルーが期待されるところである。本セッションでは、イオン工学を用いた新材料、あるいは新技術を対象として、実に多様な研究者が一堂に会し、分野を超えた活発な議論が行われた。発表論文は、イオン種については、大強度パルスイオン、高エネルギー重イオン、プラズマイオン、アークイオン、負イオン、クラスターイオン等多様な技術にわたり、材料系については、Si系(3C-SiC、Si1-xGex膜、Fe/Si多層膜)、C系(Cナノチューブ、DLC膜、炭素膜)、窒化物系(Cr
-N -O膜、窒化炭素膜)、合金系(TiAl合金、TiFe)、ナノ粒子系(純金属、Fe
-Co合金)等、新材料が勢揃いした感があった。招待講演では、パルスイオン・アブレーション(八井浄:長岡技科大)、血小板・細胞接着誘導技術(黒飛紀美:理研)、クラスターイオン技術(松尾二郎:京大)、負イオン注入技術(石川順三:京大院)の現状とその最新成果が披露された。
また、イオンによる金属箔の異常変形や、イオン照射誘起発光など、従来分野には収まりきれないような発表もあり、興味を呼んだ。とりわけ、生体材料へのイオン技術応用の発表では、生体の選択的反応を利用した綿密なアプローチが、多くの固体物理的な研究者にカルチャーショックを与えた。これらイオン技術をキーワードとした多様な研究発表は、総花的になる恐れもあるが、今回、横断的・学際的議論が活発に行われたことは予想以上であり、異分野融合を通じたブレークスルーを期待させる場となった。
(岸本直樹(物質・材料研究機構))
Session O:マテリアルズ・フロンティア・ポスター
参加者数:200名
招待講演件数(0件)、口頭発表件数(0件)、ポスター発表(57件)
本セッションは特定分野の研究に絞らず、様々な分野の研究者がその研究成果の紹介と、お互いの交流を通じ、新しい材料研究の方向の発見や、問題を議論する場を提供することを目的として開かれた。その発表内容は対象とする材料だけをみてもセラミックス、金属、高分子などに始まり、複合材料、バイオ、半導体に至るまで幅広い分野からなっており、まるでMRS-Jの縮図の観を呈していた。
今回はメイン会場からやや離れた場所にポスター会場が設定されたため、来場者数は昨年度シンポジウムよりもやや少ないように思えた。しかし、その分、特定のポスターを目指して来られる方も多く、各ポスターの前では真剣に説明する発表者と熱心に質問する聴講者の姿が数多く見られた。その意味で発表者にとって密度の濃い討論ができたのではないかと思う。
本セッションの特徴として発表者の年齢層が他セッションに比べて低いことがある。全発表57件のうち43件が奨励賞の対象となる若手研究者による発表であった。この中から将来のマテリアル・サイエンスの世界を担う人物が出現するものと期待したい。なお、審査の結果、4名の方に奨励賞が授与された。ただ、甲乙つけがたい発表が多く、審査員もかなり頭を悩まされたことを付記する。
最後にチェアを代表して、奨励賞の審査を担当していただいた先生方ならびに実行委員会のメンバーに感謝したい。
(野間竜男(東京農工大学))
■MRS
Fall Meeting 2002報告
日本MRS副会長・日本大学理工学部教授 山本 寛
ボストンにて12月2日から6日(午前)まで、5日間にわたりMaterials
Research Society秋季大会が開催された。会議は例年のように盛況であった。参加登録者は4600名以上、海外からの参加者は4割に達したとのことであった。
約40のセッションを中心にして活発なプログラムが組まれていた。HynesやSheratonの豊富な部屋を縦横に使ってプログラムが組めるのは何とも羨ましい会議開催環境である。ポスター会場も広大で、1件あたり幅2mのボードを贅沢に使っていた。時間的にもたっぷり余裕をとり、お昼から夕刻5時までに掲示し、5時から8時まではポスター賞審査、夜11時までの長いディスカッション時間が設定されていた。
この会議では、本プログラムのほかにも多くの企画がなされているのが魅力的である。国際共同研究に関する特別セッションでは科学技術振興事業団の北澤宏一氏が日本からの発表者としてアピールしていた。また、8つのセッションでチュートリアルプログラムが設けられていた。中でも、3次元ナノファブリケーションでは姫路工大の松井先生、超伝導ではISTECの村上氏がそれぞれ我が国からのインストラクターとして活躍されていた。さらに、経済をはやや陰りを見せているとはいえ、200社に及ぶ大規模な企業展示も壮観であった。
今年の天候はやや不順であったけれど、小雪が舞い散る、雪化粧のボストンの街並みは趣深かった。ゆっくりとそぞろ歩く時間の余裕が自分になかったのが残念であった。
■宗宮先生ICSTR功績賞を受賞
The
International Conference on Solvo-Thermal Technology(ICSTR)委員会は、日本MRS常任顧問・東京工業大学名誉教授
宗宮重行氏が永年にわたり水熱セラミックス反応(hydrothermal
reactions/solvo-thermal reactions)の研究・教育を国際的な広がりの中でリードしてきた業績を称えて、去る2002年7月22〜26日、米国Rutgers大学で開催された第5回International
Conference on Solvo-Thermal Technologyの会期中の7月24日にICSTR Distinguished
Lifetime Achievement Award(功績賞)を贈呈した。
宗宮名誉教授とその研究グループは1976年に東京工業大学工業材料研究所(現、応用セラミックス研究所)に設立されたLaboratory
for Hydrothermal Synthesisを基盤に日本の水熱反応研究を推進して来た。水熱反応研究の伝統は現在吉村教授によってsolvo-thermal
solutionという地球環境をも包含する新しいdisciplineを切り開いている。
ところで日本における水熱反応の国際会議は1979年にスウェーデンで開催されたNobel
Symposiumの継続として1982年、横浜市の東京工業大学長津田キャンパスで開催された第1回International
Symposium on Hydrothermal Reactions(ISHR)を嚆矢とするものであった。Hydrothermalとは坪井誠太郎東京大学名誉教授が指摘しているように、もともとは地質学の用語であった。宗宮教授はJoseph
A. Paskカリフォルニア大学教授と相諮って、水熱研究と技術に関係のある全てを含めた会議として、扱ったトピックスは、高温の水溶液化学、溶質特性、鉱物の溶解、水熱プロセスのモデル化、有機質溶質の水溶液化学、水熱プロセスの動力学、鉱物表面の相互反応、結晶成長と鉱物合成、超臨界水酸化である。宗宮教授はこの会議でチェアマンを務められた。ISHRはその後、米国(1985)、USSR(1989)、フランス(1993)、米国(1997)、高知(2000)で水熱反応国際会議を開催してきている。
一方、第1回International Conference on Solvo-Thermal Reactions(ICSTR)が1994年に香川県高松市で開催された。この会議は名称から分かるように、高温高圧下の溶媒(solvent)の化学反応をテーマとした会議で、適用範囲を超臨界流体、金属、エネルギー・資源、先進材料、廃棄物処理に広げているのを特徴としている。ICSTRはその後、高松(1996)、Bordeaux(1999)、高知(2000)、米国East
Brunswich(2002)と回を重ねてきており、2004年8月23〜27日にはインドのThe
University of Mysoreで第6回ICSTRが予定されている(連絡先:高知大学理学部附属水熱化学実験所・柳澤和道、yanagi@cc.kochi-u.ac.jp)。
■International Conference on Advanced Materials: IUMRS-ICAM 2003論文募集
主催:日本MRS・IUMRS(International
Union of Materials Research Societies)
日時:2003年10月8日(水)〜13日(月)
会場:パシフィコ横浜(横浜みなとみらい)
38シンポジウム、プレナリー、材料教育フォーラム等多くの講演・企画が予定されています。
詳細は2nd Circularをご覧ください。
問い合わせ先:IUMRS-ICAM2003事務局(鈴木淳史)、Tel/Fax: 045 -339 -4305,
E-mail: icam2003@ynu.ac.jp; http://www.mrs-j.org/ICAM2003
■日本MRS協賛の研究会等
◇第1回「新機能材料展April
2004」、主催:渇チ工技術研究会、2004年4月(未詳)、東京ビッグサイト(予定)、問い合わせ先:渇チ工技術研究会新機能性材料展係、Tel:
03 -3861 -3858、Fax: 03 -3861 -3894
◇第12回インテリジェント材料/システムシンポジウム
主催:●未踏科学技術協会インテリジェント材料・システムフォーラム
日時:平成15年3月17日(月)
場所:化学会館(東京都千代田区神田駿河台1 -5)
申し込み先:〒105 -0001 東京都港区虎ノ門1 -2 -10 虎ノ門桜田通ビル
●未踏科学技術協会インテリジェント材料・システムフォーラム
Tel: 03 -3503 -4681, Fax: 03 -3597 -0535, URL:
http://snet.sntt.or.jp/imf/imf-SY12.html, E-mail: imsf@sntt.or.jp
◇第51回レオロジー討論会
主催:日本レオロジー学会、日本バイオレオロジー学会
共催:日本材料学会、プラスチック成形加工学会
協賛:日本機械学会、日本MRS、他
日時:2003年9月17日(水)〜19日(金)
会場:奈良女子大学(〒630 -8506 奈良市北魚屋西町)
近鉄奈良駅より徒歩5分
申し込み・問い合わせ先:日本レオロジー学会討論会係
〒600 -8815 京都市下京区中堂寺粟田町93 京都リサーチパーク6号館3階
Tel: 075 -315 -8687, Fax: 075 -315 -8688,
E-mail: byr06213@nifty.com
■IUMRSメンバーの会合
◇2nd
International Conference on Materials for Advanced Technologies (ICMAT
2003)&IUMRS-International Conference in Asia (ICA) 2003、2003年6月29日〜7月4日、Singapore、詳細:http://www.iumrs.org/
◇MRS Spring Meeting、2003年4月21日〜25日、SanFrancisco、詳細:http://www.mrs.org/
◇9th International Conference on Electronic Materials (IUMRS-ICEM2004)、2004年4月12日〜16日、SanFrancisco,
California, USA、詳細:http://www.iumrs.org/
To the Overseas Members of MRS-J
■Materials Technologies Can Save Japan……p.1
Dr. Keiichi MURAI, Director, R&D Institute, Canon Co. Ltd.
It is more than ten years ago that the bubble economy crashed and the financial
system of Japan failed, but at this point in time the future aspect of Japan economy is
still uncertain and instable. Under such circumstances, I believe that only Japanese
material technology, eventually, has held the key to regenerate the Japan economy. To
produce a valuable product that is very competitive and distinguishable, it needs to
create an excellent material that shows very high performance and work well in the product
like a black box. For that purpose, both of the national project for university―industry
cooperation and the national training program for the young people who can create novel
materials should be enhanced strongly based on the national vision by the authority. At
the same time Japanese chemical companies have been expected to make a aggressive effort
to develop novel materials that will be qualified in the five to ten years future.
■Report: The 14th MRS-J Academic Symposium……p.3
Yasuro IKUMA, Kanagawa Inst. of Tech.
The 14th Symposium of MRS-J was held on 20th and 21st of December, 2002 at Tokyo
Institute of Technology, Ookayama Campus. In order to attract many participants, the
conference site was moved to new location. As a consequence, papers of 582 were presented
and approximately 800 attendees registered. These figures are larger than last several
years. Stimulated discussions were found in many sessions.
Session A “Functional Materials Based on Self-Assembly V”; Prof. Tatsuya OKUBO (Univ.
of Tokyo); Invited (3), Oral (1)2, Poster (4)1
Session B“Smart Materials/Structures”;Prof.Shuichi MIYAZAKI (Univ. of Tsukuba);
Invited (5), Oral (4)6, Poster(1)5
Session C “Control of Structures, Morphologies and Properties of Materials by Magnetic
Fields”; Prof. Tomoyuki KAKESHITA (Osaka Univ.); Invited (5), Oral (2)2, Poster ( )0
Session D “Coherent Excitation of Nanometer-scale Structures”; Dr. Hitoshi NEJO
(NIMS); Invited (3), Oral (9), Poster ( )0
Session E “Fabriction and Characterization of Organic Ultrathin Films”; Prof. Michio
SUGI (Toin Univ.); Invited ( )0, Oral (2)4, Poster (1)2
Session F “Preparation of Innovative Materials Using Soft Solution Process”; Prof.
Kiyoshi OKADA (Tokyo Tech.); Invited (1), Oral (1)7, Poster (1)3
Session G “Materials for Living―Environment・Medicine・Welfare―”; Prof. Kenichi
OKAMOTO (Yamaguchi Univ.); Invited ( )0, Oral (3)0, Poster ( )0
Session H “Designing and Properties of Low Dimensional Nanostructured Materials”;
Prof. Kunio TAKAYANAGI (Tokyo Inst. Technol.); Invited (4), Oral (2)7, Poster (2)2
Session I “Progress in New Plant Materials”; Prof. Masahisa OTSUKA (Shibaura Inst. of
Tech.); Invited (2), Oral (1)1, Poster (1)8
Session J “Symposium of Advanced Materials for Fuel Cells”; Dr. Itaru HONMA (AIST);
Invited (3), Oral (8), Poster (1)4
Session K “Domain Structure Related Properties and Materials”; Prof. Satoshi WADA
(Tokyo Inst. of Technol.); Invited (8), Oral (9), Poster (2)2
Session L “Science and Technology of Gels as an interdisciplinary field”; Prof.
Kazuhiro HARA (Kyushu Univ.); Invited (1), Oral (1)5, Poster (2)8
Session M “Sputter Deposition Technology”; Prof. Y. HOSHI (Tokyo Institute of
Polytechnics); Invited (2), Oral (1)8, Poster (1)9
Session N “Innovative Materials Using Ion Technology”; Prof. K. YATSUI (Nagaoka Univ.
of Tech.); Invited (4), Oral (1)9, Poster (1)8
Session O “Materials・Frontier・Poster”; Prof. Tatsuo NOMA (Tokyo Univ.of Agricult.
and Tech.); Invited ( )0, Oral ( )0, Poster (5)7
■Report of MRS Fall Meeting 2002……p.8
MRS-J Vice President Prof. Hiroshi YAMAMOTO (Nihon Univ.)
The meeting was held in Dec. 2 -6, 2002 at Boston. The number of participants was about 4600 and its 40% came from foreign countries. About 40 sessions and other related programs were successfully organized.
■ICSTR Honors to Prof. Somiya……p.8
Prof. Somiya received the 1st ICSTR Distinguished Lifetime Achievement Award (July
2002) for his outstanding accomplishments in teaching, scholarship and research relating
to Solvo-Thermal Reactions.
編集後記
本号は、編集委員としての初めての仕事でありました。右も左もわからない私にとって、MRS-J関係者の方々のアドバイスは非常に心強く感じました。特に伊熊先生には、約600件に上るシンポジウムを取りまとめて、ニュース編集にも大きなご尽力をいただきました。御礼申し上げます。
今回、昨年12月に開催された学術シンポジウム報告を特集として掲載させていただきました。各セッションの代表、連絡担当の方々には、お忙しい中、執筆いただきました。この場をお借りして、御礼申し上げます。
MRS-Jシンポジウムは毎年毎年開催のごとに、最も注目を集めている研究分野のセッションを幅広く設け、積極的に学術研究交流の場を提供していると感じています。そして、私を含めまだまだ若輩者の研究者が入り込める窓口を広く設けていることに感謝いたします。次回もまた、ワクワクできるセッション・シンポジウムが開催されることを期待します。(岩田展幸)