日本MRSニュース Vol.15 No.4 November 2003
探 す こ と
東京工業大学 大学院総合理工学研究科(物質科学創造専攻) 教授 山崎 陽太郎
「研究はresearchすなわち、繰り返し探すという意味です。ケンキュウでは何か究めなくてはならないみたいですね」と昔留学から帰ったばかりの先生から伺ったことがある。それならば、優れた研究者は探すのが上手な人のことであり、研究成果が上がったときには価値のあるものが見つかっていなければならない。研究では探して見つけるところが基本である。上手に探すためには、一度探した場所を再び探したりしないように、探した場所に印をつけておく。また、大勢で探す場合は、君はここを探す、あなたはここを探す、と手分けして探した方が能率は上がる。
決められた場所を探したけれど狙ったものが無かったときに、この研究は成功したのか、ということになる。調べてみなければ、無いことは分からなかったのだから、この研究は、価値が無いとはいえない。ただし調べ方は適切でなければならない。そうすると研究は、成功した研究(狙ったものが見つかった研究)と、正しく調べたけれども見つからなかった研究と、調べ方が悪かったので疲れただけの研究の3種類に分類される。
「探す前に良く考えれば、解が無いことに気が付いたはずの研究」もたくさんある。永久機関を探すような場合である。これも3番目の分類に入る。早い者勝ちで探しているときに、遅れて解を見つけたときは、成功といえるかどうかも微妙である。先に特許を取られてしまったから成功ではない。しかし狙ったものは見つかったから成功なのかも知れない。
あまり探すことばかり考えると、見つければよいのであり、作る必要はないとなってしまう。こうなると今はやりのベンチャー創成はどうなるのだろうか。そこまで行かなくても、もの作りや開発は探すだけでは成立しない。だからresearch and developmentと追加している。構想力を発揮したい人は従来のリサーチだけでは物足りないに違いない。
研究者の気持ちになってみると、「私は探しものをしている」とは通常考えていない。「こうすれば今度こそ、うまくいくはずだ!」と思っている。この気持ちが無ければ、第一、探すための注意力・集中力が湧かない。この研究者にとって、分類2番目の見つからなかった結果は大いなる「失望」であり、その研究を3番目の分類へ入れるかも知れない。Researchという言葉は研究行為を見た人が作り、「研究」は研究者が作った言葉なのかも知れない。
研究マネージャーから見たらどうだろうか。探すならば、何を探す? どこを、どのように、いつまでに探す? など、企画や共同研究を進めるときには、この言い方は便利である。「見つかりそうに無いものを探させたのか」などマネージャーの指導責任もすぐ問われる。「研究」なら、当事者は「でも一生懸命研究したのだから…」のように言い訳がしやすい。「探す」場合には、「結局見つからなかったのですね」と評価されると応戦しにくい。「私は研究をやっています」と言われると、「そうですか」と答えたままでもよいが、「私は探しています」の場合は、「何をですか」と聞かなければならないから、目標が最初から繋がっている。探すときには、見つかれば「終わり」であるが、究めるのであればいつまでも続けられる。
研究費を出す側から見たらどうだろうか。「ご研究に役立ててください」と言って研究費を下さる方は最近めっきり減ったが、これが一番ありがたい。実は出す方もこれが一番楽なのではないかと思う。目標を理路整然と言われて頂くと、「よしやるぞ」と決意を新たにするが、少し自由も欲しくなる。
研究とリサーチの違いについて思い付くことを書き連ねてみた。Researchの語源からはあれこれ発想が広がったけれど、「研究」からは次々とイメージが外へ広がっていくことは無いようである。翻訳文化の弱点が表れていると見るのか、いやこれこそ東洋の知恵であり元気のもとと考えるのか。議論は尽きない。
電解法による金属アルコキシドの合成
株式会社高純度化学研究所技術開発部 馬場 和樹
1. はじめに
一般に金属アルコキシドは、金属酸化物薄膜やバルクの製造方法であるゾルゲル法やMOCVD法の原料として用いられている。近年、半導体メモリーの高性能化、大容量化に伴い、高誘電率の膜が求められ、またLaをはじめとするランタノイドアルコキシドは不斉合成触媒の原料としても注目されている。
原料となる金属アルコキシドは低価格供給が求められると同時にそれを製造する際の環境面での配慮も望まれているが、従来の金属アルコキシドの製造は金属塩化物を合成し、それを出発原料としてアルコールと反応させる湿式合成が一般的で、大量の塩素ガスの使用による作業環境の悪化、未反応ガスの処理、装置の腐食、加水分解しやすい金属塩化物の取り扱い等、様々な問題を抱えている。
ここで紹介する電解法による金属アルコキシドの合成は出発物質が金属そのものであり湿式合成と比べ必要とする塩化水素ガスは少量であるため排ガスが少なく、装置の腐食も少ないことから量産化が可能であり、低価格の供給を可能とする。
2. 従来の金属アルコキシドの製造方法
従来、金属アルコキシドの製造は金属塩化物を製造し、それを出発原料として用いる事が多い。得ようとする金属アルコキシドを構成する成分であるアルコールと同一のアルコール中にその塩化物を溶解反応させ、その後アンモニアで中和し、副生する塩化アンモニウムを沈殿、分離して取り除いた後の液を蒸留、精製して金属アルコキシドを得ていた(図
-1)。
出発原料である金属塩化物の製造は、金属や金属酸化物と塩素を直接反応させるのが一般的であり、塩素ガスを500℃以上の高温で使用することによる製造装置の腐食や製造する際の作業環境面での制約を受けるとともに反応効率が悪く、また未反応塩素ガスをスクラバー等で処理する必要があり、大がかりな生産設備を必要とした。また金属塩化物から金属アルコキシドに変換する際には副生する塩化アンモニウムを除去する必要があり、引火性液体との混合処理という安全性を考慮した大型設備を必要とし、また副生する大量の塩化アンモニウムは製品の金属アルコキシドに含まれる不純物の原因ともなっていた。
金属アルコキシドを電解反応で製造する方法は、いくつか発表されているが、ドイツ特許2,121,732号、フランス特許2,091,229号に記載されるNH4Clのようなアンモニウム塩を電解質に使用して陽極金属を電気分解で溶解させる方法では、アンモニウム塩のアルコールに対する溶解度が低く、電解質としての使用量に制限があるために多くの電流が流せず電解に長時間を要した。また、アンモニウム塩は電解中に電気伝導が変化し、安定な電解合成が行えなかった。
カナダ特許1,024,466号やPolyhedron, Vol.15, 3869 -3880(1996)に記載されているLiClO,
LiClのようなリチウム塩を電解質として使用する場合、比較的良好に電気分解が行われるが、リチウムが得ようとする金属アルコキシドと反応してダブルアルコキシドを形成して不純物となる。電解液中に溶存する塩化リチウムは微粒子でトルエン、ベンゼン等の有機溶媒を用いても濾過できず、分離が困難をきたしていた。
Inorg. Chim. Acta, Vol.53, L73 -76 (1981)に記載されている(C4H9)4NBrのような四級アミン塩を電解質として使用する方法では、電気伝導性も十分でなく、また金属アルコキシド中に不純物として臭素を多量に含み、これを除去するのは困難であった。
近年、電子材料分野において強誘電体薄膜が開発され、その材料としてタンタル、ニオブ等の金属アルコキシドが使用されている。これらの強誘電体薄膜材料は不純物の混入によってその性能が著しく阻害される。特にリチウム、ナトリウムといったアルカリ金属の混入は顕著な性能低下を招くことが知られており、上記の方法では製造に時間がかかることや、不純物が混入するおそれがあることから実用化が難しいのが現状であった。
3. 新電解合成法と原理
上記の欠点を克服するため、さまざまな物質を電解質として検証した結果、塩化水素を電解質として金属アルコキシドの製造をおこなったところ大量生産に不向きな金属塩化物をまったく使用せず製造ができ、しかも電子材料分野で嫌うアルカリ金属を含まない高純度の金属アルコキシドの製造に成功した1)。
電解合成で塩化水素を電解質に用いた本製法の要点は以下の通りである。
金属アルコキシドを構成する成分であるアルコールと同一のアルコール中に塩化水素ガスを1〜15wt%導入する。攪拌器を備えた電解槽にアルコールを充填し塩化水素ガスを必要量吹き込み溶解させる。不活性ガスを導入し、その溶液中に金属アルコキシドを構成する金属と同一の金属を陽極に使用し、陰極にはそれと同様の金属、またはカーボンを使用して直流を通じて電気分解を行い、金属アルコキシドのアルコール溶液を得る。得られたアルコール溶液から塩素を除去するためアンモニアガスを導入して中和し、塩化アンモニウムの沈殿物として濾過することによりアルコールから分離して除去する。過剰のアルコール中に溶解している金属アルコキシドを分離するため減圧蒸留をおこないアルコールを留去する。
さらに純度を上げるためには、ヘキサン、オクタン、トルエン等の溶媒で抽出し蒸留精製することによって高純度の金属アルコキシドを得ることができる(表
-1:例=ペンタエトキシタンタル)。
電解法の反応機構は以下のように考えられている。
・陽極
M++Cl-+OR- ●●●●→M(OR)nClm
・陰極
M(OR)nClm+e-→M(OR)nClm-
−Cl- ●●●→M(OR)nClm-1
+ROH,−1/2H2 ●●●●●●→M(OR)n+1Clm-1
+e- ●●→…+ROH,−1/2H2,−Cl- ●●●●●●●●●→M(OR)n+m
本製法で高純度の金属アルコキシドが得られる理由は、電解反応の段階で金属中の不純物が黒色の沈殿物として発生し、アンモニアガス中和後にアルコール中に生成する塩化アンモニウムと一緒に濾過分離できるからである。この時に物性の似ている同族元素を除去でき、さらに反応液に精製蒸留を実施することで沸点の異なる不純物を除去することができる。
たとえば出発原料であるTa金属には不純物として同族元素であるNbを18ppm含んでおり、その他にAl、Ca、Fe、Thをトータルで数ppm含んでいる。これに電解合成をおこない、精製蒸留を実施することで金属アルコキシド中の不純物をNbについては<100ppb以下、その他の金属は数ppb〜数十ppb以下まで減らすことができる。
4. まとめ
従来の金属アルコキシドの製造方法と塩化水素を電解質とした新製造方法、原理について述べた。
電解合成で塩化水素を電解質に用いた場合、Ta金属の電解は成功しており同族の元素についても電解によって金属アルコキシドを合成することができる。
現在はGa、Y、Ti、Zr、キャパシター材料として注目されつつあるHf等の電解合成をおこなっており、電解質、反応条件、精製方法など総合的観点から検証し開発を進めている。
文 献
1) 轄oンx化学研究所 特許第3455942号
図1 塩化水素を用いた電解法と従来の金属アルコキシド合成法
連絡先:株式会社高純度化学研究所技術開発部 馬場和樹 〒350 -0284 埼玉県坂戸市千代田5 -1 -28 Tel: 049 -284 -1511、Fax: 049 -284 -1351 E-mail: kjcgikai@kojundo.co.jp |
株式会社東レリサーチセンター
―T&T: Trust and Technology―
株式会社東レリサーチセンター技術企画室室長 中山 陽一
1. はじめに
株式会社東レリサーチセンター(以下、TRCと称す)は、東レ株式会社の研究開発部門の分析・物性評価グループを母体とし、高度な技術で社会に貢献することを目指して、1978年6月に設立されました。本年6月で25周年を迎えたTRCの活動の概要についてご紹介します。
2. TRCの活動と体制
TRCの主な業務分野は、
@ 分析・物性評価
A 先端技術・市場調査
B 技術調査研究レポート販売
から構成されます。
設立時の主体であった@分析・物性評価が現在も大きな柱です。@、A、Bとも、お客様へお渡しする「製品」は、原則として、「報告書」です。TRCでの物作りは、少数ながらペプチド合成とイオン注入が挙げられ、@での活動の一環に含まれます。
@で対象とする産業分野は、「エレクトロニクス」、「工業材料」、「環境・エネルギー」、「医薬・バイオ」、「その他」と幅広い分野にわたっています。
@における分野別比率を図 -1に示します。もともとエレクトロニクスや工業材料の比率が高い中で、近年、医薬・バイオの比率が高まっています。
会社全体の売上額は、設立時(1978年度)の約5億円に対し、2002年度は約65億円です。
こういった活動の主体となる組織としては、研究部門、調査研究部門、営業部門の3部門があり、相互に連携した活動を行っています。また、全社的な組織として、管理部、総務部に加え、品質保証部があります。
ここでは、研究部門の活動を中心に紹介し、品質保証についても簡単に触れることにします。
(1) 研究部門の活動
第一の活動は、営業部門を通して受注した分析・物性評価業務の遂行です。基礎研究における精密なデータの取得、開発段階における種々の現象のメカニズムの検証、製造段階あるいは製品におけるトラブル解決などが挙げられます。
その際、機密保持のもと信頼性の高い技術でお客様(=主に研究、生産の専門家)の満足を満たすことが肝要です。そのためには、分析・物性評価技術として一流のものをきわめるとともに、各素材、製品、プロセスに関する技術上の知識を身につけることが必要です。
TRCでは、原則として、分析担当者各人が試料のサンプリングから測定、分析・物性評価、解析、報告書作成およびお客様への説明に至る一貫した業務を遂行できる自己完結型の教育を実施しています。また、社内外のセミナー等に積極的に参加させることで、主要な素材、製品に関する最新の情報を得る機会を設けています。受託分析の性質によっては、複数の手法を適用する必要が生じます。そういった場合、そのテーマのリーダーのもとに、関係する分析担当者が分担かつ協調することにより、総合的な解釈に結びつけられる体制になっています。
例年7月には、ポスターセッションを開催し、各分析担当者が最新の技術を紹介することでお客様との直接対話の機会を設けています。2003年度は、横浜、大阪、福岡で開催し、合計約1,000名のお客様に出席いただきました。
世界水準での最新の分析・評価技術を整備するうえでは、日常の分析活動における創意、工夫とともに、新規分析技術及び装置の導入を進めています。
例えば、ナノテクノロジーにおける評価手法として近年発展の著しい走査型プローブ顕微鏡(SPM)は、IBMのBinnigとRohrerによる走査型トンネル顕微鏡(STM)の発明(1982年)に端を発します。TRCでは、早くからSTMの将来性に着目し、1987年に通商産業省工業技術院電子技術総合研究所(当時)のグループに加わって基礎的な検討を始め、1989年には市販装置を導入して受託分析を開始しました。
1991年には原子間力顕微鏡(AFM)を導入しましたが、AFMは現在に至るまでSPMの主要な手法として活躍しています。
1997年には、スイス・バーゼル大学のH.-J. Gu¨ntherodt教授のもとへSPMの研究者が留学し、SPM技術を応用した超高感度熱分析の研究を行っています。
さらに、1997年から、半導体デバイスのドーパント分布を評価する走査型キャパシタンス顕微鏡(SCM)の受託を開始し、2001年には同じ用途の走査型拡がり抵抗顕微鏡(SSRM)を導入しました。この2手法は、半導体デバイスの有力な評価手法として注目されています。
なお、こうした海外留学制度によるTRC社員の派遣先としては、1991年から現在にかけて、スウェーデン・ウプサラ大学(X線光電子分光法:ESCA)、米国・オハイオ州立大学(ラマン分光法)、ドイツ・ミュンスター大学(飛行時間型2次イオン質量分析計:TOF-SIMS)のような表面、微小部の化学構造解析手法分野から英国・オックスフォード大学(核磁気共鳴分光法:NMR)、米国・ハーバード大学(ゲノム解析技術)などの生物科学分野に至る第一線の研究機関、計15件があります。
受託分析においても、米国・Charles Evans&Associates(CE&A)社(SIMS)をはじめとする海外の定評ある専門分析機関計13社との提携を実施しており、お客様からの種々の要請にお応えできる環境を作っています。
最近の新規導入装置の例としては、官能基の微小領域分析用として顕微赤外イメージングシステム(空間分解能:約6μm):Spotlight300(Perkin-Elmer製)、元素・官能基の表面微小部分析が可能なX線光電子分光(ESCA,
XPS)装置:QuanteraSXM(PHI製)(空間分解能:約10μm)、従来困難であった修飾蛋白質や糖鎖などの構造解析に威力を発揮すると期待される、マトリックス支援イオン化
-飛行時間型質量分析計(MALDI-TOF/MS):AXIMA-QIT(島津製作所製)、薬物動態分析用としての液体クロマトグラフ/タンデム型質量分析計(LC/MS/MS):API4000(AB/MDS
Sciex製)及びTSQ Quantum(Thermo Quest製)、環境分析用途での高分解能ガスクロマトグラフ質量分析計(GC/MS):AutoSpec-Ultima
NT(Micromass製)など、種々の分野における最新の機器が挙げられます。
一方、国家プロジェクトへも創立後の早い段階から参画し、科学技術庁プロジェクト「表面界面の制御技術」(1981〜1986年)を初めとして計17件を受託しています。
このうち、新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)「次世代半導体デバイス用高密度化実装部材のための基盤技術開発」、NEDO/社団法人バイオ産業情報化コンソーシアム(JBIC)「生体高分子立体構造情報解析プロジェクト」、科学技術振興事業団(JST)「CREST新世代カーボンナノチューブの創製、評価と応用(2002〜2006)」など、計5件が現在進行中です。
こうして技術開発した研究成果のうち公開できる内容については、積極的に社外発表を行っています。社外発表は、対外的な波及効果だけではなく、人材育成にも有効であり、会社としても推奨しています。過去19年間の発表件数を表
-1に示します。
こういった環境の中で、TRC設立以来、12名の研究者が学位(博士号)を取得しています。
また、知的財産の有効活用の観点から、特許出願等の活動も着実に実施しています。
なお、島津製作所の田中耕一博士のノーベル賞受賞が契機となり、最近、分析技術の重要性が各方面で見直され、国レベルで最先端の分析機器の開発に関する重要性が指摘されています。文部科学省でも検討会が設置され、TRCもそのメンバーとして参加しています。今後、このような先端分析機器の開発等においても、少しでも貢献できることを願っています。
(2) 品質保証体制
お客様からのご依頼に対し、「信頼性の高い報告書によってお応えする」観点から、国際標準であるISO9001を基本とした品質保証体制を構築しています。国内の受託分析会社として初めて、1999年に、営業部門も含めた全社一体としての認証を取得しました。
経営理念である「高度な技術をもって社会に貢献する」のもとに「顧客満足」、「機密厳守」、「高信頼性技術」、「品質安定、向上」の品質方針を掲げています。
また、トキシコキネティクス測定に関する医薬品GLPの適合確認での評価「A」認定、環境分析研究部(滋賀事業所)での特定計量証明事業者認定制度(MLAP)の認定およびISO14001環境マネジメントシステム登録などが挙げられます。
3. まとめ
TRCは、設立当初の理念である「高度な技術で社会に貢献する」を旨とし、ナノテクノロジー、バイオテクノロジーなどの最先端技術の進展に対応できる分析、物性評価あるいは技術調査における技術力を一層向上させ、産業界・学会への更なる貢献をさせていただけるよう努めています。
TRCは、お客様・共同研究者及び提携機関などの周囲の方々とともに成長を続ける会社です。今後とも、皆様のご指導ご鞭撻をお願い申し上げます。
4. 参考資料
TRCのホームページ1)及びTRCニュース85号2)もあわせてご覧いただければ幸いです。ホームページで会員登録をしていただくことで、TRCニュース(PDFファイル)へのアクセスが可能です。
文 献
1) URL http://www.toray-research.co.jp/
2) TRCニュース85号−創立25周年記念号−,
株式会社東レリサーチセンター, 2003年10月
表1 TRC社員の社外発表件数#1(1984〜2002)
原著論文 | 319件(英文:270、邦文:49) |
総説・解説・単行本(分担執筆を含む) | 221件 |
学会発表(口頭・ポスター)
|
1203件(国際会議#2:304、国内学会:899) |
学会関係のセミナー・講演会での講演 | 350件 |
#1…大学等の他の研究機関との共同発表を含む。
#2…日本国内で開催された国際会議を含む。
図1 分析・物性評価における分野別比率(2002年度)
連絡先:株式会社東レリサーチセンター技術企画室 中山陽一 〒520 -8567 大津市園山3 -3 -7 Tel: 077 -533 -8544、Fax: 077 -537 -6434 E-mail: youichi-nakayama@trc.toray.co.jp Home page: http://www.toray-research.co.jp/ |
■日本MRS第14回年次総会報告
2002年4月1日〜2003年3月31日
日本MRSの第14回年次総会は、2003年5月29日(木)、18:15より東京都港区虎ノ門1
-2 -10虎ノ門桜田通りビル7階社団法人未踏科学技術協会会議室で開催された。議題は、第14事業年度事業報告、第14事業年度収支報告、第15事業年度事業計画、第15事業年度収支計画、第15事業年度役員選任の5件。各議題が審議のうえ承認・可決されました。それぞれの概要は以下の通りです。
◇第14事業年度(2002年4月1日〜2003年3月31日)におきましては新たな会計年度のもと、事業計画に沿い、2002年12月20日(金)〜21日(土)、東京・東京工業大学大岡山キャンパスにて第14回年次総会、学術シンポジウムを開催しました。シンポジウムは、1.
自己組織化材料とその機能(口頭15/ポスター41)、2.
スマートマテリアルストラクチャー(46/15)、3.
磁場による構造、組織、機能性御(17/0)、4.
ナノメータースケールコヒーレント励起系(12/0)、5.
有機超薄膜の作製と評価―分子配列、配向制御の観点から―(24/12)、6.
ソフト溶液プロセスを利用した材料創製(17/13)、7.
暮らしを豊かにする材料―環境、医療、福祉―(30/0)、8.
低次元ナノ構造体のデザインと特性(31/22)、9.
植物系材料の最近の進歩(13/18)、10. 燃料電池材料(11/14)、11.
ドメイン構造に由来する物性発現と新機能材料(17/22)、12.
境界領域としてのゲルの科学と工学―日常の科学から先端・環境科学まで―(15/28)、13.
スパッタ法による薄膜作製技術(21/19)、14.
イオン工学を利用した革新的材料(23/18)、15.
マテリアルズ・フロンティア・ポスター(0/58)、合計582(302/280)と盛況であった。
共催学術シンポジウムとして、第3回日本MRS山口大学支部研究発表会を2002年10月5日(土)開催。特別講演2件、一般講演14件であった。
◇内外の関連諸機関との連絡については、IUMRSの定例会議に出席したほか21件の国内シンポジウムに協賛した。
◇学術論文誌、Transactions of the MRS-J, vol.27, Nos.2, 3, 4, vol.28, No.1を刊行した。日本MRSニュース、vol.14,
5月、8月、11月、vol.15, 2月の年4回出版し全会員に配布した。
◇会務関係は、第14回年次総会を2003年5月29日(木)18:15から未踏科学技術協会会議室で開催。第1回臨時総会を2002年4月9日(火)11:30からNIMS材料試験事務所51号庁舎で開催。第33回常任理事会を2002年4月9日(火)10:00からNIMS材料試験事務所で開催。第34回常任理事会を2002年12月20日(木)14:30から東京工業大学百年記念館にて開催。第35回常任理事会を2003年5月29日(木)16:00から未踏科学技術協会にて開催。
2003年3月31日現在の会員数は、個人会員579名(対前年比13名増)、学生会員53名(同7名増)、法人会員12社(同6社減)、名誉会員5名(同1名減)、準会員4名です。
第14事業年度の収支は、収入合計17,361,276円、支出合計18,820,229円で、▲1,458,953円の赤字となりました。
◇第15事業年度(2003年4月1日〜2004年3月31日)の事業計画におきましては、学術シンポジウムとして第8回先進材料国際会議(IUMRS-ICAM2003)を2003年10月8日(水)〜13日(月)、パシフィコ横浜会議センターにて、(A)Nanotechnology
and Nanoscale Materials Processing: 9シンポジウム;(B)Electronic and Photonic
Materials and Devices(9シンポジウム);(C)Advanced Materials for Environment and
Society(9シンポジウム);(D)Modeling, Fabrication and Processing of Advanced
Materials with Novel Performance(11シンポジウム); Forum on Materials Education
and Research Strategy; Workshop on Nanotechnology Networking and International Cooperationの開催が予定されている。内外の関連諸機関との連絡協力を続けると共にTransactions
of the Materials Research Society of Japan, 日本MRSニュースの定期的発行、日本MRSホームページの運営・維持を行います。
◇第15事業年度の収支は、収入13,795,000円、支出10,991,000円、収支差額2,804,000円の見込みであります。支出削減及び会員増加、会費収入増加に努める所存であります。会員各位の積極的御支援、御協力をお願い致します。
◇第15事業年度の役員は岸輝雄物質・材料研究機構理事長が再任されたほか、会務執行体制は次の通りとなりました。
▽会長:岸輝雄(物質・材料研究機構、再任)
▽副会長:高井治(名大、再任)、山本寛(日大、再任)
▽常任理事:吉村昌弘(東工大、再任)、山本良一(東大、再任)、梶山千里(九大、再任)、山田公(京大名誉、再任)、仲川勤(明治大、再任)、井上明久(東北大、再任)、和田仁(物材機構、再任)、村上雅人(芝浦工大、再任)、下田達也(セイコーエプソン、再任)、村田敬重(日本油脂、再任)、荒木孝二(東大、再任)、伊熊泰郎(神奈川工大、再任)、長田義仁(北大、再任)、松田武久(九大、再任)、杉道夫(桐蔭横浜大、再任)、岸本直樹(物材機構、再任)、須田敏和(職能開大、新任)、岡本健一(山口大、新任)、鈴木淳史(横国大、再任)、鶴見敬章(東工大、再任)、小田克郎(東大、再任)
▽理事:土肥義治(東工大、再任)、正畑伸明(帝京大、再任)、澤井伸一(本田技研、再任)、石ア幸三(長岡技科大、再任)、岡部敏弘(青森工試、再任)、阿部正紀(東工大、再任)、北條純一(九大、再任)、明石満(大阪大、再任)、筒井哲夫(九州大、再任)、野間竜男(東京農工大、再任)、井奥洪二(山口大、再任)、中村吉男(東工大、新任)、高梨弘毅(東北大、新任)、Manuel
E. Brito(産総研)
▽常任顧問:堂山昌男(帝京科学大、再任)、宗宮重行(東工大名誉、再任)、長谷川正木(東大名誉、再任)、増本健(東北大名誉、再任)、高木俊宜(広島工大、再任)
▽顧問:長倉三郎(日本学士院、再任)、山野好章(ケイエスピー、再任)
▽監事:山田恵彦(帝京科学大名誉、再任)
▽事務局:
参考:法人会員(石川島播磨重工業株式会社、シチズン時計株式会社、新日本製鐵株式会社、大日本インキ化学工業株式会社、太陽誘電株式会社、東京電力株式会社、東芝セラミックス株式会社、東陶機器株式会社、日本SGI株式会社、弘果弘前中央青果株式会社、株式会社本田技術研究所、株式会社リコー
■International
Conference on Advanced Materials: ICAM 2003
主催:日本MRS, International Union of Materials Research Societies
日時:2003年10月8日(水)〜13日(月)
場所:パシフィコ横浜(横浜みなとみらい)
内容:39シンポジウム、プレナリーセッション、材料教育フォーラム、展示会等多数の講演と企画が予定されています。
詳細:IUMRS-ICAM2003事務局、http://www.mrs-j.org/ICAM2003
Nanotechnology and Nanoscale Materials Processing (10シンポジウム), Electronic
and Photonic Materials and Devices (同9), Advanced Materials for Environment and Society
(同9), Modeling, Fabrication and Processing of Advanced Materials (同11)、の4分野、39シンポジウムに総計2114名の発表者登録件数、参加者は二千三百余名以上に達した。オランダと中国のCollaborationチーム、Dr.
Klaas de Groot of IsoTis NV, Professor FuZhai Cui of Tsinghua UniversityにSo~miya Awardが贈られた。
■日本MRS協賛の研究会等
◇大学と科学公開シンポジウム:21世紀を開く水素の世界―新材料とクリーンエネルギーシステム―、2003年11月15〜16日、神戸国際会議場、問い合わせ先:アドスリーTel:
03 -5925 -2840, info@adthree.com
◇使える計算材料学−先端と展望−、2003年12月5日、JFEスチール東京本社会議室、日本金属学会関東支部、Tel:
03 -5734 -3142, hatumi@mtl.titech.ac.jp
■IUMRSメンバーの会合
◇2nd International Conference on Materials for Advanced Technologies (ICMAT
2003)&IUMRS-International Conference in Asia (ICA) 2003, 7 -12 December, 2003,
Singapore, http://www.mrs-j.org/ICAM2003
◇First International Conference of the African Materials Research Society (MRS-Africa)
December 8 -11, 2003 -Johannesburg―South Africa
◇9th International Conference on Electronic Materials (IUMRS-ICEM 2004) April 12 -16,
2004, San Francisco, California, USA
◇9th International Conference on Advanced Materials (IUMRS-ICAM 2005) July 3 -8, 2005,
Singapore
■出版案内
Transactions of the Materials Research Society of Japan, vol.28, No.2, June, 209 -510,
2003が刊行されました。本号は、投稿論文2報の他に、2002年12月20〜21日に開催された第14回日本MRS学術シンポジウムのうちから、「Control
of Structures, Morphologies, and Properties of Materials by Magnetic Fields」23報、「Soft
Solution Process」26報、「Innovative Materials Using Ion Technology」25報が搭載されています。
問い合わせ先:日本MRS事務局、shimizu@sntt.or.jp
■トピックス
◇日本学術会議は7月22日新会長に東海大学総合医学研究所長の黒川清氏を選んだ。副会長には、日本MRS会長で独立法人物質・材料研究機構理事長の岸輝雄氏、早稲田大学法学部教授の戒能通厚氏が決まった。日本学術会議は設置形態や会員選出方法などの改革を政府から求められている。
◇財団法人稲盛財団(600 -8009京都市下京区四条通室町東入ル函谷鉾町88番地K.I.四条ビル、電話075
-255 -2688)は2003年第19回京都賞の受賞者を決定した。このたびの受賞者は「先端技術部門」で材料科学の分野から、有機分子の自己組織化法を開拓し、ナノ機能材料の構築に大きな変革をもたらしたアメリカ・ハーバード大学教授、George
McClelland Whitesides氏の「有機分子の自己組織化法の開拓とナノ材料科学への展開」に対して贈られる。授賞式は11月10日国立京都国際会館で行われる。
ホワイトサイズ教授は、基礎科学から応用、そして技術まで見通した幅広い視野に多って、有機分子の特異的自己組織性を多様な科学的組み合わせと、徹底的な物理化学的キャラクタリゼーションを行うことによって、ナノ機能材料の構築に大きな革新を齎し、材料科学の新しい分野の進展に多大な貢献をした。
ホワイトサイズ教授はアルカンチオールが金や銀の基板によく吸着することに着目して、自己組織化する単分子膜(SAM)を形成する技術を開発、展開した。この極薄膜の有機分子の膜は、現在、有機ナノテクノロジーの分野では不可欠の材料となっている。さらにSAM技術を発展させ、有機体を使ったミクロンサイズの複雑なパターニングを可能にした「ミクロ接触印刷法」を提案した。この方法はソフトリソグラフィーとも呼ばれ、従来のIC製造に用いられた光リソグラフィーのような高価な設備や高度な技術を必要とせず、また多様性の大きい有機分子や生体分子などのパターニングにも利用できることから分子印刷とも言えるもので、その応用は計り知れない。
To the Overseas Members of MRS-J
■Research and Ken-Kyu…p.1
Prof. Dr. Yotaro YAMAZAKI, Department of Materials
Engineering, Graduate School of Engineering, Tokyo Institute of Engineering
The English word of research which comes from “search” was translated into Japanese
long ago as “ken-kyu”. The ken means “polish” and the kyu means “study
thoroughly” or “attain the summit of a mountain”. We can find a large difference in
the meanings between the “research” and “ken-kyu”. It is interesting to
investigate the origin of the discrepancy. It may be because the word was made in Europe
by the people who were not researcher, and was made in Japan by researchers who have pride
to a certain degree. We can discern the expectation of Japanese people to the academic
activity by thinking over those meanings of the words.
■Synthesis of metal-alkoxides by method of electrolysis……p.2
Kazuki BABA, Research and Development Division, Kojundo
Chemical Laboratory Co., Ltd.
New synthesis method of metal-alkoxides by electrolysis has been investigated to obtain
highly pure metal-alkoxides. The metal-alkoxide is generated by electrolysis in alcohol
(for example, ethylalcohol in case of metal-ethoxide) electrolyte introducing hydrogen
chloride, applying target metal as anode and same metal or carbon as cathod. The
metal-alkoxide generated is extracted with solvent such as hexane, octane, toluen, after
neutralization treatment by NH3 gas. Finally highly pure metal-alkoxide can be obtained by
reduced pressure distillation.
■Toray Research Center, Inc. (TRC)……p.4
Youichi NAKAYAMA, Manager, Research Planning Department,
TRC
Toray Research Center, Inc. (TRC) was founded in June 1978, as a wholly owned
subsidiary company of Toray Industries, Inc., with the guiding principle of “contributing
to the industrial world through advanced technologies”. TRC has been providing customers
with technical support primarily for “problem solving” in research, development and
manufacturing. This article presents various aspects of TRC's activity briefly from a
viewpoint of research department and quality assurance system.
■IUMRS-ICAM 2003……p.7
The 8th International Conference of Advanced Materials (IUMRS-ICAM 2003) including the
2nd Workshop on Nanotechnology Networking and International Cooperation was held from
October 8th to 13th, 2003, at the Pacifico Yokohama, in Yokohama. The conference was
organized by The Materials Research Society of Japan (MRS-J), sponsored by Nanotechnology
Researchers Network Center of Japan and supported by commemorative Organization for the
Japan World Exposition '70. Attendance of more than 2300 materials scientists and
engineers from all over Asia, the USA and Europe, the meeting and exposition is large
materials research event in Japan. It featured 2144 technical papers (oral 1259; poster
855) presented in 39 technical symposia and two FORUM on materials education and research
strategy. The Exposition, held in conjunction with the Conference, host international and
domestic companies in the materials industries. Proceedings will be published as a series
of the the Transactions of the Materials Society of Japan. The Conference was cofunded by
the 73 institutions and companies, and also supported by the following governments (MEXT,
METI and ME) and City of Yokohama.
■2003 SO~MIYA Award on International Collaboration……p.7
The 2003 So~miya Award for International Collaboration in Materials Research was
awarded to a Dutch-Chinese research team led by Professors Klaas de Groot, IsoTis NV and
FuZhai Cui, Tsinghua University for their investigation of Biomimetic Calcium Phosphate
Composites. So●miya Award Ceremony and Lecture was held at the IUMRS-ICAM 2003, October
11, 2003 in Yokohama, Japan.
■Members in the News
Dr. Teruo Kishi, a president of the MRS-J and president of the National
Institute of Materials Science, was appointed as the vice-president of the Science Council
of Japan.
編集後記
21世紀はますます情報化社会になり、いろいろなアイディアや知識が価値を生み出す時代と言われております。また、国立大学等の独立行政法人化は自己責任の基に個人の成果を求める社会となるグローバル化が進んできています。産学官の取り巻く社会変化は将来の研究のあり方に大きな影響を及ぼすと考えられます。これからの科学技術はどのような発展の仕方をするのであろうか。21世紀における急速に発展する分野は光エレクトロニクス技術が考えられ、その技術の基本は電子論と材料技術が重要とされております。
これらの技術が特徴的に発揮するには「ナノ技術」があります。これに関わる世界が新しい産業基盤を作ると思われます。「ナノ技術」領域において材料、製造技術、新材料合成の特徴として物理・化学・生物的現象と性質や応用に関する研究は電子論、量子論が要求されます。MRS-Jは学際性・業際性を重要視して、いろいろな研究分野の横断性の基にダイナミックに活動し、新技術創出を期待しております。(大山昌憲)